減量に最適な食事法とは? 国際スポーツ栄養学会(ISSN)が最新の科学的知見に基づく公式見解を発表
国際スポーツ栄養学会(International Society of Sports Nutrition;ISSN)はこのほど、減量のための食事療法に関する見解(position stand)をまとめ、同学会発行の「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に発表した。

国際スポーツ栄養学会(ISSN)のポジションスタンドは、ISSNの編集者と評議会が、読者の関心を引くトピックを特定してそのトピックに関するエキスパートに執筆を依頼する招待論文であり、執筆された草稿はレビューと修正が加えられたうえでISSNの公式見解として承認される。
今回発表されたポジションスタンドは、PubMed/MEDLINE、Google Scholarという文献データベースを使用して、包括的な文献レビューを実施したうえで、減量のための食事療法に関する見解が15項目にまとめられている。なお、競技会前の急速な減量やGLP-1受容体作動薬などの薬物または肥満外科手術による減量は、本ポジションスタンドの対象としていない。
論文の本文の一部をピックアップして紹介したうえで、それらのポジションスタンドを示す。
イントロダクション
肥満の有病率は1975年以降、約3倍に上昇し、2035年には世界人口の25%に到達すると予測されている。肥満に伴う健康障害のリスクの多くは、減量により低下することが示されている。
減量は肥満関連健康障害リスクを抑制するが、減量のプロセスに着目した場合、質の高い減量を目指す必要がある。必の高い減量とは、脂肪を減らしつつ除脂肪組織の減少を抑える減量である。このような減量は運動能力という点においても、明らかなメリットがある。そりに対して質の低い減量が行われた場合、副次的に脂肪量の増加がしたり、いわゆるリバウンドが起こり得る。
肥満の判定にはBMIが用いられており、集団ベースの研究では疾患リスクの層別化に有用とされている。一方で個人レベルでのリスク評価にはBMIの有用性が限られており、重要な点としてBMIは体脂肪率との相関が低いことを指摘できる。公衆衛生上のガイドラインを、個々人に厳格に適用すべきでないことは強調しておく必要がある。
減量のための食事療法としてさまざまなアプローチが提唱されており、真偽のほども多様。ただし、減量を達成するには負のエネルギーバランスを維持する必要があることは自明である。
断続的断食
過去10年間で、断続的断食(intermittent fasting;IF)の人気が急上昇した。研究論文も増加し、IFの減量効果と心血管代謝上のメリットとそのメカニズムがさまざま報告されてきている。しかし、減量に関しては、食事摂取時間帯を制限することに特有なことではなく、低エネルギー状態とすることを介した結果である可能性が高い。
最近の系統的レビューとメタ解析からは、継続的なエネルギー制限(continuous energy restriction;CER)を対照条件とした場合に、6カ月時点での体重および体脂肪量の減少に関して、IFに基づく戦略の利点は臨床的に意義があるほどではないと判定されている。また6カ月を超える研究では、IFとCERの間で、体重、体組成、および心血管代謝マーカーにも統計的有意差が示されていない。
ただし、複雑な食事管理の遵守が困難な人にとっては、IFが実行可能な代替手段となるだろう。
高タンパク質食
現在のタンパク質の推奨摂取量(0.8g/kg/日)は、健康で座位行動の多い一般成人の必要量を満たすには十分だが、エネルギー制限時や運動トレーニング時には最適とは言えず、除脂肪体重の維持・増大、体組成の最適化には不十分である可能性がある。とくにアスリートでは、従来推奨されてきた範囲の上限を大きく超えるタンパク質摂取を支持するエビデンスが増えている。ただし、それらの報告は主としてレジスタンストレーニングを行い痩せている集団での知見であり、トレーニングを行っていない、または体脂肪率が低くない集団には当てはまらない可能性があることを強調しておく必要がある。
他方、高タンパク質摂取に関する従来の懸念、例えば腎臓や肝臓、骨の健康への悪影響などは、健康な集団ではエビデンスの裏付けがない点は指摘しておくべきだろう。
低脂肪・低炭水化物ダイエット
過去10年間で系統的レビューとメタ解析が何度か実施され、低炭水化物ダイエット(low-carbohydrate diet;LCD)は低脂肪ダイエット(low-fat diets;LFD)よりも、優れた減量効果を一貫して示してきた。ただし、LCDによる初期の体重減の大部分は、グリコーゲン貯蔵量の減少に伴う水分喪失によるものである可能性が報告されている。さらにLCDの減量効果は、長期的には低下するようである。
ケトジェニックダイエット
ケトジェニックダイエット(ketogenic diet;KD)では通常、炭水化物を1日最大50g(または総エネルギーの10%以下)に制限し、脂質は総エネルギーの約60%~80%、タンパク質は体重1kgあたり約1.2~1.5gとして、ケトーシス状態を誘発する。これによる代謝基質利用の変化が生じる。なお、インスリン欠乏状態でケトン体が病的に過剰産生され生命を脅かす可能性のあるケトアシドーシスとは異なり、比較的良性の状態である。
ケトーシスは、脂質を主要なエネルギー源として優先的に利用することになるため、好ましい代謝状態とみなされてきた。減量という点での有用性も報告されている。KDでは、食事のタンパク質含有量が高いことによる満腹効果が大きいことも示されている。
しかし、KDは対照食と比較して、除脂肪体重の減少も大きくなる傾向がある。また、潜在的な負の影響も考慮に値する。具体的には、LDL-Cの上昇が挙げられ、対策として、脂質の多い赤身肉、加工肉、バターの摂取を抑え、オリーブオイル、ナッツ、種子、脂身の多い魚などの不飽和脂肪源に置き換えることが考えられる。また、標準的な食事からKDへの移行中に、口臭、便秘、肝機能異常、エネルギー不足感、ふらつき・めまい、発疹、筋肉のけいれん、頭痛、嘔気、下痢、ブレインフォグなどが生じ得る。
国際スポーツ栄養学会(ISSN)の15項目の見解
1)減量のための食事療法は、エネルギー不足の程度、手法、および主要栄養素の構成によって大別できる。これらの要素は、個人の好み、耐性、および目標に合わせて調整する必要がある。
2)超低エネルギー食(1日800kcal未満)および低エネルギー食(1日800~1,200kcal)は、短期的には大きな体重減少をもたらすが、カロリー制限食などのより緩やかなエネルギー制限に比べて長期的なメリットはない。これらの厳しい食事制限は除脂肪体重の減少を招く可能性がある。十分なタンパク質摂取と筋力トレーニングによってこのリスクを軽減できるかもしれない。ビタミン、ミネラル、食物繊維、その他の栄養素の不足に注意が必要。
3)これまでの研究結果からは、断続的断食のさまざまな形態(隔日断食、時間制限食、週2回断食)は、継続的なエネルギー制限と、身体計測結果に及ぼす影響に差がないことが示されている。主要栄養素の質は、体組成と代謝の健康を最適化する上で独立した役割を果たす。
4)1日の総摂取量とは対照的に、1日の食事回数は体重や体脂肪の減少に、決定的な影響を与える傾向はみられない。食事回数は個々の状況に合わせて柔軟に調整可能。最適な結果を得ることを目的として、一律に下限値や上限値を定めることはできない。しかし、身体活動量の多い人やアスリートの場合、1日に少なくとも3回のタンパク質を豊富に含む食事や補食に分散しタンパク質を摂取することで、持続的なエネルギー不足時の除脂肪体重の維持とパフォーマンスを最適化できる可能性がある。
5)持続的なカロリー不足状態における除脂肪体重の減少を抑制するには、食事の種類やバリエーションにかかわらず、レジスタンストレーニングと十分なタンパク質摂取が不可欠。1日の総タンパク質摂取量が最も重要であり、各成分の摂取量の配分については二次的な考慮事項としてみなされる。
6)一般の人々にとって、1日あたり1.2~1.6g/kg体重のタンパク質摂取量は、総体重と体脂肪の減少、身体活動をサポートし、筋骨格系および心血管代謝の健康に有益な効果をもたらすうえで適切である。
7)1日あたり1.6~2.2g/kg体重のタンパク質摂取量をレジスタンストレーニングと組み合わせることで、筋肉の同化作用を最適化できる可能性がある。一方、低カロリー状態を維持している痩せ型のレジスタンストレーニング実践者においては、1.9~3.2g/kg体重というより高い摂取量により、除脂肪体重の維持を最適化できる可能性がある。
8)ケトジェニックダイエットから低脂肪ダイエットまで、減量という目標に対しては、食事中の炭水化物と脂質の比率を個人の好みに合わせて調整することが可能。その理由は、これらのダイエット法はどれも同様の効果を発揮するからである。
9)ケトジェニックダイエットは体重と体脂肪の減少に効果的であるが、とくにグリコーゲンと体水分量の変動が推定値に影響を与える可能性のある短期間の試験では、高炭水化物食と比較して、除脂肪体重をより大きく減少させる傾向がある。
10)体重減少に対する適応は、カロリー不足によって引き起こされる恒常性の乱れを中和しようとする身体の欲求を満たすために、エネルギー消費量の低下へと収束する。
11)適応性熱産生(adaptive thermogenesis)とは、体組成の変化から予測される以上の安静時エネルギー消費量の減少のことである。これは低カロリー状態や体重減少に応じて起こりうるが、必ずしも生じる反応ではなく、体重が安定すると大幅に減少する可能性がある。
12)適応性熱産生を含むエネルギー消費を減少させ、腸内細菌叢の多様性を損なう代謝適応は、栄養素の吸収と分配、および代謝の柔軟性を促進する戦略的な食事と運動プログラムによって軽減できる場合が多い。
13)停滞期を管理し克服するために、さまざまな戦術が講じられる。しかし、停滞期は、それまでの変化を維持するための訓練の機会・きっかけでもある(究極の目標は、停滞期を維持すること)。
14)効果的な体重管理のためには、学際的な医療専門家チームによる指導を受けながら、社会的支援を維持することが推奨される。
15)家庭料理の作り方を学び、1日を通して事前に食事の計画を立てることで、自分の栄養状態をコントロールできるようになり、体重や体組成の管理においてより成功しやすくなる。
文献情報
原典論文のタイトルは、「International Society of Sports Nutrition position stand: diets for body weight reduction」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2026 Dec 30;23(1):2740266〕
原文はこちら(Informa UK)







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