インクレチン関連薬と過度な食事制限の併用は絶対に避ける 日本肥満学会「安全な減量に関するステートメント」
日本肥満学会は10月3日、「安全な減量に関するステートメント―インクレチン関連薬を用いた減量によるケトーシス関連事象の注意喚起―」を発表した。「過度な食事制限や糖質制限を行いながら、これらの薬剤を使用することは絶対に避ける」、「ケトーシス関連事象の兆候がみられた場合には、直ちに薬剤の使用と食事制限を中止し、速やかに医療機関の受診を検討」といった項目が掲げられている。

近年、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬などのインクレチン関連薬が肥満症診療を大きく変化させた一方、「減量は容易に達成できる」という認識をもたらし、減量行動のリスクに対する意識を希薄にしている可能性も否定できない。加えて、これらの薬剤が肥満症や2型糖尿病、その他の肥満に関連する健康障害を有さない例に対して減量目的で使用される事例が増加している。このような適応外使用で生じる健康障害は、薬剤固有の副作用だけでなく、過度の食事制限や急速な減量など、リスクの高い減量行動が関与すると考えられるものも少なくない。
この状況を踏まえ同学会は、健康を損なうことのない安全な減量行動の重要性について周知するとともに、最近報告が増加しているインクレチン関連薬を用いた減量に伴うケトーシスやケトアシドーシスなどのケトーシス関連事象への注意を喚起するため、本ステートメントを作成した。
インクレチン関連薬を用いた減量によるケトーシス関連有害事象
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の副作用データベースには、インクレチン関連薬使用中に発症したケトーシス、ケトアシドーシスなどのケトーシス関連有害事象が多数報告されている。このような事象は、従来、不用意なインスリン減量など、不適切な糖尿病治療に伴って発症することが知られていたが、近年では、2型糖尿病や肥満症を有さない例への減量目的の使用によって、脱水や低血糖などともにケトーシス、ケトアシドーシスが発生した例の報告が増加している。
また、国内外で、このようなインクレチン関連薬の不適切な使用に伴うケトーシス関連事象の症例報告も増加している。これらのケトーシス関連事象は、インクレチン関連薬を用いて過度な食事制限や急激な減量を行うという、リスクの高い減量行動が発症に関わると考えられる。加えて、ケトーシス関連事象の代表的な症状である悪心や嘔吐などの消化器症状が、これらの薬剤の一般的な副作用と誤認されることで、適切な対応が遅れる可能性も懸念されている。
インクレチン関連薬を処方する際には、ケトーシス関連事象に代表される不適切な減量行動による健康障害について十分に認識することが必要であり、急激な減量や過度の食事制限を実現・維持する手段としてこれらの薬剤を用いるべきでない。また、処方時には「GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬を減量目的で使用される方へ」(次項)等を活用し、適切な対応について十分な説明を行うべきである。
「GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬を減量目的で使用される方へ」(抜粋)
「GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬を減量目的で使用される方へ」の主な内容は以下のとおり。全文は同学会のサイトなどで確認のこと。
インクレチン関連薬を用いて減量を考える際には、以下に記載された事項に留意する。また、過度な食事制限や糖質制限を行いながら、これらの薬剤を使用することは絶対に避ける。加えて、「ケトーシス関連事象の兆候」に示す症状がみられた場合には、直ちに薬剤の使用と食事制限を中止し、速やかに医療機関の受診を検討する。
インクレチン関連薬を用いて減量を考える際の留意点
- 減量自体が適切かどうか
- 食事制限の程度や減量の速度が適切かどうか
- 薬剤使用の持つリスクの認識
ケトーシス関連事象の兆候
- 口臭の変化:普段と異なる甘酸っぱい口臭が出現した場合、体内でケトン体産生が増加している可能性。
- むかつき、吐き気や嘔吐、腹痛:これらは薬剤の副作用としても生じるが、ケトーシスの代表的な症状でもある。
- 食事や水分が摂れない:食事をしようと思っても受け付けない、水も飲めないといった状態は、ケトーシスによって生じている可能性。
- 強い全身倦怠感:ケトーシスが進行すると、強い全身倦怠感や体調不良を感じることがある。「食べていないから元気が出ないだけ」と誤って判断しない。
- 意識がぼんやりする、強い眠気がある、呼吸が速く深い、息苦しい:これらの症状は、ケトーシスが進行し、重症のケトアシドーシスに至っている可能性を示す。命に関わることもあるため、救急要請を含めた受診を直ちに検討。







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