発酵乳製品を多く食べる人は変形性膝関節症のリスクが28%低い 11年間の追跡研究 新潟大学
チーズやヨーグルトという発酵乳製品の摂取量が多いほど、変形性膝関節症のリスクが低いことを示すデータが報告された。新潟大学の研究グループの成果であり、論文が「Clinical Nutrition」に掲載されるとともに、プレスリリースが発行された。この関連は比較的強固で性別にかかわらず認められ、チーズとヨーグルトの摂取量は、それぞれ独立して膝関節症リスクと関連しているという。

研究の概要:乳製品のなかでもとくに発酵乳製品の摂取がリスク低下に関連
新潟大学の研究グループは、新潟県村上地区在住の40~74歳の地域住民1万411人を約11年間追跡し、乳製品の摂取と変形性膝関節症(膝関節症)の発症との関係を調べた。
その結果、乳製品全体の摂取量が多い人ほど、膝関節症を発症するリスクが低い傾向がみられた。とくに、チーズやヨーグルトなどの発酵乳製品を多く摂る人ではリスクが低く、この関連は男女ともに認められた。一方、牛乳では明らかな関連はみられなかった。
本研究から、乳製品のなかでもとくに、発酵乳製品の摂取が、膝関節症の発症リスク低下と関連する可能性が示された。
研究の背景:乳製品摂取量と変形性膝関節症発症との関連を縦断的に検討
乳製品には、ペプチド、脂肪酸、その他の多量栄養素および微量栄養素など、さまざまな生理活性成分が含まれており、さらに、発酵乳製品の場合にはプロバイオティクス微生物も含まれている。これらの成分は複数の生物学的経路を介して関節の健康や変形性膝関節症(膝関節症)のリスクに関連している可能性がある。しかしながら、先行する欧米での疫学研究(主に横断研究)の結果は一致せず、さらにアジア人における研究はない。
そこで、本研究グループは、中高年者における乳製品の総摂取量および乳製品の種類別摂取量とその後の膝関節症の発症を縦断的に調べた。
研究の内容・成果:地域住民1万人以上を11年間追跡
村上コホート研究※1参加者(1万4,364人、40~74歳)のうち、初回調査ですでに膝関節症や膝の痛みを持っていた人などを除いた1万411人を解析対象とした。
食物およびエネルギーの摂取量は、妥当性の確認された自記式質問票の食事項目から算出した。11年間の追跡における膝関節症の新規発症情報は、関連病院から網羅的に収集した。
※1 コホート研究:ある集団(コホート)を一定期間追跡し、生活習慣などの要因とその後の病気の発症との関係を調べるタイプの疫学研究。
残差法※2によりエネルギー調整した乳製品摂取量に基づき、参加者を4グループに分け、摂取量最小のグループを基準として、他の群の膝関節症新規発症リスクを相対値(ハザード比※3〈HR〉)として算出した。HRは、性、年齢、婚姻状況、教育歴、職業、身体活動量、喫煙・飲酒、病歴で統計学的に調整した。
※2 残差法:エネルギー調整を行う標準的な方法。
※3 ハザード比:Cox比例ハザードモデルで算出される相対リスクの推定値。
乳製品の総摂取量および牛乳摂取量との関連
乳製品の総摂取量が多いほど膝関節症のリスクは低く(傾向性P値=0.0174)、最低摂取量群(最小四分位群)と比べて、最高摂取群(最大四分位群)のリスクは21%低下していた。
牛乳摂取量と膝関節症リスクに明確な関連はみられなかった(図1)。
図1 牛乳摂取と膝関節症リスク

発酵乳製品摂取量との関連
一方、発酵乳製品摂取量が多いほど膝関節症リスクは低く、摂取なし群と比べて、摂取者の最大三分位群のリスクは28%低下していた(図2)。発酵乳製品摂取量と膝関節症の関連は、男女別に解析しても同様の関連がみられた。
図2 発酵乳製品摂取と膝関節症リスク

チーズとヨーグルトはいずれも独立して有意に関連
チーズ、ヨーグルトのどちらが膝関節症のリスク低下に寄与しているかを調べるため、それぞれの摂取頻度と膝関節症のリスクについて解析した。その結果、チーズ(図3)およびヨーグルト(図4)の摂取頻度は、それぞれ独立に膝関節症のリスク低下と関連していた。
図3 チーズ摂取頻度と膝関節症リスク

図4 ヨーグルト摂取頻度と膝関節症リスク

関連の機序の考察
本研究の結果は、いくつかの生物学的メカニズムによって説明できるかもしれない。
チーズやヨーグルトなどの発酵乳製品は、微生物による発酵過程によって栄養組成が変化し、生理活性ペプチドや短鎖脂肪酸など、特定の栄養成分の利用が高まる可能性がある。チーズには、多機能性糖タンパク質であるラクトフェリンなどの良質なタンパク質が含まれており、ラクトフェリンには抗炎症作用を含むさまざまな生理機能がある。また、ヨーグルトや非加工のナチュラルチーズには生きた微生物が含まれており、これらは関節の健康に関連する代謝経路や炎症経路によい影響を及ぼす可能性がある。
近年、軽度の慢性炎症が膝関節症の発症および進行に重要な役割を果たすことがわかってきていることから、炎症反応を調節する食事因子は膝関節症の発症リスクに関連する可能性がある。
今後の展開:他の発酵食品についても健康への好ましい影響を期待
乳製品の摂取量が比較的少ないと考えられる日本人中高年者において、発酵乳製品の摂取量が多いほど膝関節症のリスクが低いことが示された。今後、その背景にある生物学的メカニズムを明らかにする研究が必要と思われる。
著者らは、「本研究は発酵食品による疾病予防の可能性を示す貴重なエビデンスを提供するものであり、他の発酵食品についても健康への好ましい影響が期待される」としている。
関連情報
発酵乳製品の摂取が多いほど変形性膝関節症のリスクは低い-発酵食品による疾病予防の可能性を示す新たな知見-(新潟大学)
文献情報
原典論文のタイトルは、「Fermented dairy intake and symptomatic radiographic knee osteoarthritis risk in middle-aged and older adults: an 11-year cohort study」。〔Clin Nutr. 2026 Oct:65:106756〕
原文はこちら(Elsevier)







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