過度な飲酒で心臓性突然死リスクが約1.4倍に 「J字型」の関連は確認できず 東海大学
コペンハーゲン心臓研究に参加した1万100人を対象とする約30年間の追跡調査データを解析した結果、週21単位を超える過剰な飲酒は、中等量(週8~14単位)の飲酒と比較して、心臓性突然死※1のリスクを約1.4倍に高めることが明らかになった。東海大学の研究グループの成果であり、論文が「European Journal of Preventive Cardiology」に掲載された。

著者らは、「本研究は法医学の知見に基づく厳格な死因判定と大規模コホートデータを融合させ、一般人口における飲酒量と心臓性突然死の関連を高精度に示したものであり、これまで一部で示唆されてきた『少量の飲酒による心血管保護効果』については、本研究の対象である心臓性突然死という点において明確な予防効果が確認されなかった」としている。
※1 心臓性突然死:「心臓に原因がある、ないし原因があると推定される突然死」のこと。本研究では、死体検案書・診療録・警察報告書・法医または病院での剖検報告書を用い、既存の判定プロトコルに基づいて、2名の医師が厳密に判定した。
研究のポイント
- 約30年の長期追跡:デンマーク・コペンハーゲンの市民1万100人を1991年から2021年まで追跡し、心臓性突然死897件の発生を法医学的視点から厳密に検証。
- 過剰飲酒でリスク約1.4倍:週21単位を超える非常に多い飲酒群は、中等量飲酒群(週8~14単位)と比較して心臓性突然死のリスクが1.40(95%信頼区間1.08~1.81)に上昇。
- 少量・中等量飲酒に予防効果は認められず:これまで一部で示唆されてきた「少量飲酒による心血管保護効果(J字型関連)」は、心臓性突然死においては確認されなかった。
- 法医学と循環器疫学の融合:個人識別番号(CPRナンバー)を用いた質問票と死体検案書・診療録・警察報告書・剖検報告書の正確な紐づけ・医師による厳格な死因判定・大規模コホートデータの解析を組み合わせた高精度な検証となった。
本研究の背景:予防が難しい「心臓性突然死」と飲酒の関係
心臓性突然死は心血管死亡の約50%を占める重大な健康課題。その多くは前兆なく突然発症するため、リスクの低減につながる修正可能な生活習慣を明らかにすることが公衆衛生上の重要な課題となっている。
飲酒は、高血圧、心筋症、不整脈などとの関連が知られており、法医学領域では、長年の大量飲酒歴を有する人に生じる突然死が「大酒家突然死症候群」として議論されてきた。しかし、一般人口において、飲酒量が心臓性突然死リスクとどの程度関連するかについては、これまでの研究では追跡期間の短さや死因判定の方法上の限界から、一貫した知見が得られていなかった。
研究成果:非常に多い飲酒でリスクが有意に上昇
本研究では、コペンハーゲン心臓研究の第3回調査(1991~1994年)に参加した1万100人を、2021年12月31日まで追跡調査した。追跡期間の中央値は28.6年で、期間中に897件の心臓性突然死が発生した。死因については、死体検案書、診療録、警察報告書、法医または病院での剖検報告書と質問票、個人識別番号(CPRナンバー)を用いて個人単位で正確に紐づけ、既存の判定プロトコルに基づき、2名の医師が心臓性突然死を厳密に判定した。
飲酒量とリスクの関係
参加者を週あたりの飲酒単位※2で5群(非飲酒/少量〈1~7単位〉、中等量〈8~14単位〉、多量〈15~21単位〉、非常に多い飲酒〈21単位超〉)に分類し、中等量飲酒群を基準として比較した。
その結果、「非常に多い飲酒群」では心臓性突然死のリスクが1.40(95%信頼区間1.08~1.81)と有意に上昇した。一方、「非飲酒」「少量」「多量」の各群では、統計学的に有意なリスク差は認められなかった(図1)。
図1 飲酒量と心臓性突然死の関連

心臓性突然死の人口標準化累積罹患率では、追跡20年時点で「非常に多い飲酒群」における心臓性突然死は約3.5%、「中等量飲酒群」では約2.8%だった。
※2 飲酒単位:純アルコール量に換算した飲酒量の指標。本研究では1単位=純アルコール換算で12g(缶ビール〈350mL、アルコール度数5%〉約1缶に相当)として評価した。週21単位は、缶ビール21缶(純アルコール約252g)に相当する。
J字型関連は認められず
従来の一部研究では、少量飲酒に予防的な効果を示唆する「J字型」の関連が報告されてきたが、本研究では「非飲酒群」と「中等量飲酒群」との間に心臓性突然死リスクの有意な差は認められなかった。
この結果は、少量から中等量の飲酒に明確な予防効果は認められず、「非常に多い飲酒」を減らすことが、集団レベルでの心臓性突然死リスクの低減につながる可能性を示唆している。
本研究の社会的意義:「適量飲酒による恩恵」より「過剰飲酒の回避」を
本研究は、法医学における厳格な死因判定と大規模疫学データを組み合わせることで、飲酒と心臓性突然死の関連を高い精度で示した。
「少量から中等量の飲酒に予防効果は認められない」「非常に多い飲酒がリスク上昇と関連する」という結果は、心血管疾患予防における飲酒に関するメッセージングに重要な示唆を与えるもの。また、集団全体で過剰な飲酒を減らすハームリダクション※3の取り組みが、心臓性突然死の予防戦略として有用となり得ることを示している。
※3 ハームリダクション:健康被害をもたらす行動を完全にやめることが難しい場合でも、その行動に起因する害をできるだけ少なくしようとする公衆衛生上の取り組みのこと。本研究においては、完全な禁酒が困難であっても、非常に多い飲酒レベルをより低いレベルへと減らすことが、集団全体における心臓性突然死リスクを下げるための現実的な予防戦略になり得ることを示している。
関連情報
過度な飲酒で心臓性突然死のリスクが約1.4倍に 「少量の酒は健康に良い」定説に一石、約1万人の30年追跡で判明 ~予防には「適量」より「減酒」、法医学と循環器疫学の融合による成果~(東海大学)
文献情報
原典論文のタイトルは、「Alcohol consumption and sudden cardiac death in the Copenhagen City Heart Study」。〔Eur J Prev Cardiol. 2026 Aug 20:zwag436〕
原文はこちら(Oxford University Press)







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