若年アスリートのSNS利用は「支え」にも「妨げ」にも 長時間利用ほどトレーニングに悪影響の可能性
若年のアスリートのソーシャルメディア(SNS)使用とメンタルヘルスとの関連を横断的に調査した結果が報告された。6割弱はSNS利用がスポーツ関連のサポートになる面があると回答した一方で、トレーニングや回復の妨げになるとの回答も6割強に及び、相反する影響が認められるという。

アスリートのSNS利用に伴うプラス面とマイナス面
ソーシャルメディア(SNS)の利用は全世代に広がっているが、とくに若年者では100%近くが利用していると報告されている。SNS利用にはメリットとデメリットが伴うことがしばしば指摘される。メリットとしては情報交換、社会とのつながりの強化などがあり、デメリットとしては睡眠不足、全般的なストレスや不安のほかに、ボディーイメージの懸念の高まり、嫌がらせを受けるリスクなどもよく指摘される。
アスリートは日常から高いプレッシャーにさらされ、周囲から注目されることが多く、SNS利用を介した影響をより受けやすい可能性がある。しかし、実態は明らかにされていない。今回紹介する研究は、この実態を探ることを目的に、オンラインによるアンケート調査としてルクセンブルク、フランス、ベルギーなどで実施された。
欧州を中心とする900人以上のアスリートを対象とする横断調査
調査への参加は12~24歳のアスリートとされた。アンケートの内容は、スポーツ医学、心理学、精神医学の各領域の研究者と臨床家からなる学際的チームによって開発され、13人の若年アスリートを対象とするパイロット調査の結果をフィードバックし開発された。最終的に、SNSの使用状況やスポーツへの影響など、6領域、計35問のアンケートとなり、英語、フランス語、ドイツ語という3言語で作成。オンラインで回答を募った。
解析対象者の特徴
968人が回答し、継続的なトレーニングの実施または競技会への参加という条件を満たしていた912人を解析対象とした。
解析対象者は、年齢16.5±3.1歳、男性57.2%で、競技レベルは世界クラス1.3%、エリートレベル13.2%、ハイレベル33.2%、競技会レベル26.2%、アマチュアアスリート26%と分類された。61.3%が団体競技、38.7%が個人競技を行っており、ラグビーが32.7%と最多で、次いで陸上が11.5%、サッカー10.5%、バスケットボール9.2%などだった。
全体の半数近く(46.6%)はルクセンブルクのアスリートで、フランスが37.1%、ベルギー9.0%と続き、そのほかにスイス、カナダ、イタリア、アイルランドなどのアスリートが回答した。
9割以上がSNSを利用し、3分の2は1日に2時間以上利用
全体の93.4%が1種類以上のSNSプラットフォームを利用していた。最も用いられていたのはSnapchat(画像や動画の共有ソフト。一定期間で情報が消えることが特徴)が79.1%、Instagramが78.3%、TikTokが63.0%だった。一方、Facebookは10.0%、Twitter(X)は5.3%と少なかった。
約3分の2(67.7%)が、1日に2時間以上、SNSを利用していた。利用の目的については、友人や家族とのコミュニケーションとの回答が79.3%、娯楽や気晴らしが70.8%であり、また過半数(55.2%)がスポーツ関連のニュースをフォローしており、43.6%が自分の行っている競技のコンテンツを利用していた。このほか、6割(59.6%)のアスリートが、SNSを用いて自分と他者を比較した経験があると回答したことを、著者らは「特筆すべきこと」としている。
その他、論文ではさまざまな角度からの解析結果が示されている。それらの一部を紹介する。
アスリートの性別や年齢・競技・競技レベルでの使用状況の比較
SNSを1日2時間以上使用する割合は、男性は64.9%に対して女性は71.4%であり、有意に高かった(p=0.039)。また、年齢が高いほど1日2時間以上使用する割合が有意に増加していた(OR1.2〈95%CI;1.1~1.3〉)。
個人競技アスリートの使用率は90.1%であるのに対して団体競技アスリートは95.5%であり、有意に高かった(p=0.0012)。1日2時間以上使用する割合も同順に、61.2%、71.7%で有意差があった(p=0.0009)。
競技レベルでの比較では、使用率については有意差がなかった。ただし、1日2時間以上使用する割合は、アマチュアが74.7%で最も高く、次いで世界クラス/エリートレベルが71.4%で、競技会レベルでは69.0%と少なく、さらにハイレベルは59.4%と最低であり、全体として群間に有意差が認められた(p=0.0062)。
SNS利用のメンタル面への影響
全体の64.1%が、SNS使用が健康に対して肯定的、否定的、両面の影響があると回答した。
57.1%はスポーツのキャリアに役立つ励ましやサポートを受けたと報告している一方で、ほぼ半数(47.7%)が睡眠の質に悪影響を与えていると感じており、ほぼ3分の2(63.6%)がトレーニングや休息の妨げとなっていると回答した。また、約3割(29.2%)がSNS上での自分のイメージを維持することにプレッシャーを感じており、4分の1(25.4%)がストレスや不安を感じていた。
スポーツへの影響については、41.2%がトレーニング意欲にプラスの影響を与えていると考えている一方、5.5%はマイナスの影響を与えていると回答。パフォーマンスへのプラスの影響を指摘したのは22.0%、マイナスの影響を指摘したのはわずか5.3%だった。
このほか、アスリートの21.8%が、スポンサーやプロモーション目的のために特定の肖像権を放棄したことがあると回答した。
競技レベルや性別・年齢・SNSの種類による影響の違い
SNS利用による影響は、競技レベルによって大きく異なっていた。具体的には、ストレスや不安といった悪影響は、アマチュア(31.7%)や競技会レベル(28.0%)で高く、ハイレベル(19.8%)や世界クラス/エリートレベル(22.6%)では低く、有意差がみられた(p=0.010)。
多変量解析からは、女性アスリートは男性アスリートよりも、SNS上のイメージを維持するためのプレシャーを強く感じていて(調整オッズ比〈aOR〉1.7〈1.2~2.2〉)、ストレスや不安、自己肯定感への悪影響も女性は有意に受けやすく、さらに食行動への影響も受けやすい(aOR1.6〈1.2~2.1〉)ことが示された。
年齢も有意な関連因子であり、若年アスリートはプレッシャーをより強く感じ、睡眠の質の低下も有意に強く生じていた。SNSの利用時間が長いほど、プレッシャーなどの負の影響が強く生じることも示された。
SNSの種類によって、影響が異なることも明らかになった。
Instagramの使用は、自己肯定感、トレーニングへの意欲、モチベーション、自己認識上の影響と相関している一方、TikTokは睡眠時間の短縮、Twitterは睡眠の質と自己肯定感の低下に関連していた。
トレーニングへの影響
前述のように全体の63.6%が、SNSの利用時間がトレーニングや回復の妨げになっていると回答した。しかし、具体的な対策を実行に移したのは42.1%にとどまった。
SNS利用がトレーニングの妨げになっていると感じているアスリートの割合は、利用時間が増えるにつれて増加し、1日2時間未満では55.2%だが、4時間を超えると76.7%に達した。興味深いことに、自己規制を実行する可能性は、利用時間が多いアスリートほど低かった。
個人競技の選手は団体競技の選手よりも積極的な対策をとる傾向が強く(47.9 vs 38.5%、p=0.005)、一方、競技レベル別ではハイレベルの選手がその可能性が最も低いという有意差があった(p=0.049)。
SNS上の嫌がらせの経験とメンタルへの影響
アスリートの10.4%が、SNSで嫌がらせを受けた経験を報告した。その被害者のうち、45.3%が自信に影響したと回答し、44.3%が睡眠の質、37.9%が気分に影響したと回答。さらに、3分の1が自己イメージとトレーニング意欲に重大な影響があったと報告している。
影響を受けた選手のうち、35.8%が周囲に相談していた。その対象は友人や家族(64.7%)が多く、医療専門家(20.6%)やコーチ(5.9%)に報告した選手は少数だった。
著者らは、「SNSは若いアスリートの生活において、つながりやサポートの機会を提供する一方で、心理的な脆弱性やデジタル上のプレッシャーにさらされるという、二重の影響を及ぼしている。今回の調査結果は、利用量が影響を左右する重要な要因であることを示しており、的を絞った教育、安全対策、デジタル習慣のモニタリングの重要性を浮き彫りにしている」と総括している。
文献情報
原典論文のタイトルは、「The influence of social media on young athletes’ mental health: a cross-sectional study」。〔Front Psychol. 2026 Jun 19:17:1811861〕
原文はこちら(Frontiers Media)







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