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沖縄のアスリートの疲労骨折の疫学研究 発生率、解剖学的分布、復帰に要した期間などを調査

沖縄県におけるアスリートの疲労骨折の発生状況や回復に要する期間などが明らかになった。琉球大学病院整形外科の上原史成氏らが、同県内48施設の電子カルテ情報を遡及的に解析した結果であり、米国スポーツ整形外科学会発行ジャーナル「Orthopaedic Journal of Sports Medicine」に論文が掲載された。

沖縄のアスリートの疲労骨折の疫学研究 発生率、解剖学的分布、復帰に要した期間などを調査

亜熱帯地域でのアスリートの疲労骨折の実態調査

疲労骨折は、比較的低強度の負荷が同一部位に繰り返しかかることによって生じる骨の微細な傷害であり、スポーツ障害全体の最大20%を占めると報告されている。通常は適切な治療により合併症なく治癒するが、長期間、トレーニングからの離脱を余儀なくされ、競技アスリートの場合はキャリアの阻害要因となる。

疲労骨折の疫学については既に多くの研究がある。しかしそれらの多くは欧米からのものであり、アジア発の研究は少なく、とくに亜熱帯地域での調査報告はごく限られている。気候によってスポーツ環境が異なること、食習慣や文化も低~中緯度地域とは異なること、紫外線レベルが高く骨代謝に関連するビタミンDのレベルにも差があると考えられることなどから、亜熱帯地域における疲労骨折の実態の把握も必要とされる。

以上を背景として上原氏らは、沖縄県内での疫学研究を実施した。

約300件の疲労骨折の発生状況、治療期間、高リスク骨折の関連因子などが明らかに

この研究は、電子カルテ情報を用いた後方視的レビューとして実施された。2018~19年に、沖縄県内の整形外科クリニックまたはスポーツ医学センター34施設、および病院14施設で治療された450件の情報を収集。整形外科医2人が独立して、スポーツに伴う疲労骨折か否かを判定し、6~50歳のアスリート303人、309件の疲労骨折を特定した。

サッカー、バスケ、陸上での疲労骨折発生件数が多い

303人の年齢は平均15.6±5.9歳で、女性が47%を占めていた。行っている競技は、サッカーとバスケットボールがそれぞれ21%と多くを占め、次いで陸上競技が14%だった。サッカーでの疲労骨折は男性、バスケでは女性選手に多かった。サッカーやバスケ以外では、野球、ハンドボール、バレーボール、バドミントン、ジョギング、テニス、空手、女子ソフトボールなどで疲労骨折が発生していた。

多くの競技で性別による発生件数の差が認められた。とくに野球(男性での発生件数を基準として女性は0.05)、サッカー(同0.25)、ジョギング(0.25)は男性の骨折が多く、一方でバドミントン(5.5)やバレーボール(3.5)、バスケットボール(1.78)では女性の骨折が多かった。

疲労骨折の発生部位は脛骨が約3割で、中足骨、足根骨などにも多く発生

部位別にみると、脛骨の疲労骨折が約3割(31.3%)を占めていた。続いて、中足骨(28%)、足根骨(17.4%)、骨盤(6.6%)、大腿骨(5%)、膝蓋骨(5%)などであった。

下肢に複数の疲労骨折を来したアスリートが6人記録されていた。その内訳は、足根骨と中足骨が4人、中足骨と種子骨が1人、脛骨と足根骨が1人であった。

トレーニング再開に要した期間の中央値は7週

トレーニング再開までの期間(return-to-training;RTT)は、中央値7週(四分位範囲4~8)であり、性別にみても、いずれも全体解析と同様であり有意差はみられなかった(p=0.77)。

競技別の解析では、疲労骨折発生件数の多いサッカーは中央値7週(4~8)、バスケットボールでは7.5週(4~10)、ランナーは8週(4~8)であった。一方、空手(14週〈8~16〉)、ジョギング(8週〈8~10〉)、女子ソフトボール(8週〈7.5~10〉)などは、トレーニング再開に比較的長い期間を要していた。反対に、ハンドボールやテニスは短期間で復帰しており、ともに4週(3~8)だった。

骨折の発生部位別の解析では、膝蓋骨(8週〈8~12〉)、複数部位(8週〈8~8〉)、腓骨(8週〈4~12〉)などで、RTTが長期化する傾向があった。

高リスク疲労骨折は若年アスリートに好発

McInnisとRameyの分類に基づき、70件の疲労骨折が高リスクと判定された。なお、低リスクの疲労骨折は合併症なく治癒することが多いのに対して、高リスクの場合、損傷部位への負荷が大きく血流制限も加わり、より慎重な治療戦略が必要とされる。

高リスク疲労骨折の患者は、低リスク疲労骨折の患者よりも若年で(13.9±3 vs 16.1±6.5歳、p=0.0009)、RTTが長かった(中央値8〈4~12〉 vs 7週間〈4~8〉、p=0.0073)。高リスク疲労骨折は、膝蓋骨、第5中足骨、舟状骨に多くみられ、第5中足骨の疲労骨折のRTTが最も長く、中央値9.5週(6~12)に及んでいた。

より若い男性アスリートの膝蓋骨の疲労骨折リスクモニタリングがとくに重要

著者らによると本研究は、「亜熱帯アジア地域におけるアスリートの疲労骨折に関する、集団ベースの疫学研究としては初めてのもの」だという。論文の結論は、「沖縄県のアスリートの疲労骨折は、男性サッカー選手に最も多く発生し、次いで女性バスケットボール選手、男性野球選手の順であった。特筆すべきこととして、症例の23%(303人中70人)が高リスク疲労骨折に分類され、膝蓋骨骨折が最多であり、より若年の男性に多くみられたことである。これらの知見は、とくに若い男性アスリートの膝蓋骨のダメージを早期発見することの重要性を強調するものだ」と総括されている。

なお、沖縄という地理的な特徴の一つである紫外線曝露量が多いことに関して、「血清ビタミンD濃度は評価されていないため詳細は不明だが、先行研究によれば日本国内ではビタミンD不足が蔓延している可能性があり、さらに疲労骨折は多因子性であるために、沖縄の亜熱帯気候の潜在的な保護効果も、高いトレーニング負荷や反復的な機械的ストレスによって相殺されている可能性がある」との考察が加えられている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Incidence, Anatomic Distribution, and Return to Training After Stress Fractures in Okinawan Athletes」。〔Orthop J Sports Med. 2026 Jun 10;14(6):23259671261447186〕
原文はこちら(American Orthopaedic Society for Sports Medicine)

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