日本版「スポーツ栄養の食品交換表」開発の試み 500製品を栄養素量に基づき24種に分類
日本人アスリートが利用しているスポーツ栄養食品を、エネルギー量および主要な栄養素の種類と量によって分類したリストが作成された。約500種類の製品が24のサブカテゴリーに分けられており、同じカテゴリーに属する食品同士であれば交換して摂取しても、栄養価はだいたい一致するという使い方が想定されている。大阪樟蔭女子大学大学院人間科学研究科人間栄養学専攻の角谷雄哉氏らが開発したもので、開発の背景と手法、交換可能性の検討結果、実際の使用感などの報告が、「Nutrients」に掲載された。

スポーツ栄養における「食品交換表」の必要性
エリートレベルからレクリエーションレベルまで、幅広いアスリートがスポーツ栄養食品を利用している。しかし、個々のアスリートの摂取目的と実際に摂取している食品が、栄養学的に噛み合っていないことも少なくない。これにはいくつかの理由が考えられ、まず、スポーツ栄養食品の定義や基準が明確でないために、ふだんから摂取すべき食品なのか特定の目的をもって摂取すべき食品なのかがわかりづらいことが挙げられる。また、パッケージなどで訴求されている栄養情報の記載方法が製品ごとに異なるために比較が困難であり、アスリートの栄養知識が不足している場合はさらに選択の適切性が低下すると考えられる。
一方、一般的な食品については、エネルギー量や栄養素量に基づいていくつかの群に分類し、同じグループ内で同じ単位数であれば交換可能な食品リストを示すという手法が、特定の食事スタイルや食事療法の継続をサポートするためのツールとして使われている。例えば国内でも糖尿病や腎臓病の食事療法のための「食品交換表」が古くから存在し、世界ではビーガン食のための交換表も開発されている。
スペインでは、この「食品交換表」のコンセプトをスポーツ栄養食品に援用した交換リストが2020年に開発された。しかし当然ながら、収載されている食品はスペイン国内で流通しているものが中心であり、日本人アスリートの使用には適していない。これらを背景として角谷氏らは、国内のスポーツ環境での使用を想定した交換表の開発を試みた。
日本版「スポーツ栄養の食品交換表」開発のプロセス
この交換表の開発プロセスは、(1)スポーツ栄養食品の選択と各製品の栄養に関するデータ収集、(2)それらのデータに基づくカテゴリー分類――という二つのステップに大別される。
スポーツ栄養食品の選択とデータ収集
交換表の開発に際してはまず、収載すべきスポーツ栄養食品の範囲を、国際オリンピック委員会やオーストラリアスポーツ研究所、日本スポーツ協会などの合意声明などを参照して定義したうえで、7種類のカテゴリー(スポーツドリンク、エネルギーゼリー、エネルギーバー、エネルギージェル〈主として炭水化物〉、プロテインドリンク、プロテインバー、プロテインパウダー)に分類した。スポーツ以外の一般的なシーンでも摂取されることのある菓子類や、医療・介護現場でも使われている液体食は含めなかった。
次に、これらに該当する製品を国内で供給している企業を、日本アンチ・ドーピング機構が公開している製品情報サイトなどを用いて検索し、42社を特定。各社が販売している製品のリストを作成し、アスリートの栄養サポート経験のある15名の管理栄養士を対象にアンケート調査を行い、スポーツの現場で使用頻度の高い、36社、523製品を選定した。
カテゴリー分類
続いてこの523製品の製品情報を各社のwebサイトや製品ラベルから収集。製品の1単位相当量に含まれている主要なエネルギー産生栄養素の量が類似しているものを、同一サブカテゴリー化する作業を行った。
この作業により、24のサブカテゴリーが作られた。1単位あたりのエネルギー量や栄養素量が各サブカテゴリーの平均より2標準偏差以上乖離(Zスコアが±2の範囲を逸脱)している製品は交換に適さないため除外し、交換表に収載する製品は最終的に498製品となった。
開発された交換表の評価検討
このようにして、国内のスポーツシーンで広く使われているスポーツ栄養食品498製品を、製品形態に基づく7種類のカテゴリー、栄養価の類似した24のサブカテゴリーに分類した交換表が完成した。内訳の詳細は、スポーツドリンクは製品数17/サブカテゴリー数2、エネルギーゼリーは同順に37/3、エネルギーバー34/3、エネルギージェル44/3、プロテインドリンク24/3、プロテインバー39/4、プロテインパウダー303/6。
この分類により、国内のスポーツ栄養食品市場の多くをプロテインパウダーが占めていることが示された。プロテインパウダーの素材は、植物性たんぱく質が多く用いられていた。
カテゴリーごとの含有栄養素量の比較
全体として、炭水化物補給を目的とする製品(132製品)の含有炭水化物量は中央値23.2g/単位であり、そのうち69%が15~30g/単位の範囲にあった。たんぱく質補給を目的とする製品(366製品)の含有たんぱく質量は中央値20.2g/単位であり、そのうち93%が10~25g/単位の範囲にあった。
また、炭水化物補給を目的とする製品において、含有たんぱく質量は0~8.7g/単位の範囲に収まっていた。しかし、たんぱく質補給を目的とする製品において、含有炭水化物量は1~63g/単位と大きなばらつきが認められた。このため、たんぱく質補給を目的とするサブカテゴリー内での安易な交換は制限されると考えられた。
管理栄養士による使用感の評価
完成した交換表を管理栄養士に使用してもらい、ユーザビリティ評価のための10項目で構成される尺度(System Usability Scale;SUS)による評価を依頼した。6名が回答し、平均スコアは100点満点中53点であった。自由記述欄には、「栄養士や栄養に関する知識をもつ人にとって、特定の目的に応じてスポーツ食品の選択を容易にするものだ」という、本交換表が実用的なツールとなり得ることを示唆するコメントがあった。
一方で、「アスリート自身が使用する場合は、炭水化物やたんぱく質といった基本的な栄養知識をある程度理解している必要がある」という意見もみられた。なお、本研究では、開発された交換表の使い方を解説した手引きも作成され、競技レベルや活動量、摂取タイミング等に応じて、アスリート自身による適切なスポーツ栄養食品の選択をサポートするよう工夫されている。
著者らは、「本研究は、スポーツ栄養食品交換表の開発自体を主目的としたものであって、スポーツ環境下での実用性や有効性の検証は行っていない」としたうえで、「今後は本交換表を実際のスポーツの現場に適用し、有効性を評価する作業が求められる。また、スポーツ栄養食品の市場の変化を反映させるため、定期的な改訂も必要」と述べている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Development of a Japanese Sports Food Exchange List Reflecting Products Used in Japanese Athletic Settings」。〔Nutrients. 2026 May 27;18(11):1711〕
原文はこちら(MDPI)







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