日本のスポーツアニメに登場する食品の特徴とは 7作品・282の食品関連シーンの分析結果
日本のスポーツアニメでは13分に1回の頻度で食品に関するシーンが現れ、その大半がどんな飲食物かを判別可能な精細さで描かれており、穀物が最も多く登場するという。大阪樟蔭女子大学健康栄養学部健康栄養学科の中村萌香氏、角谷雄哉氏が、7作品、151話、3,634分の映像を分析した結果であり、主人公が女子のアニメでは菓子類の登場頻度が高いことなども示されている。「Nutrition and Health」に掲載された論文の要旨を紹介する。

日本の高度なアニメ文化はアスリートの生活・食事にも影響を与える可能性がある
繊細な描写やストーリー性の高さを特徴とする日本のアニメは、子どもだけでなく大人をも魅了するエンターテイメントとして世界的に評価されている。日本のアニメの特徴の一つとして古くから、スポーツをテーマとするものが一角を占めていることが挙げられる。中には多言語に翻訳され、各国で視聴されている作品もある。
近年、アニメの視聴が子どもの食行動に影響することが海外から報告されている。しかし、日本でのそのような研究報告はまだない。海外のアニメは子ども対象のものが多いのに比べて、日本のアニメは幅広い年齢層に視聴されている。また、日本のスポーツアニメは実際の競技やトレーニングの現場を詳細に再現したシーンが多い。
以上を背景として角谷氏らは、日本のスポーツアニメに登場する食事シーンの詳細な分析を行った。
7作品3,634分の映像で、食品が登場するシーンは282回、計4,056秒
この研究では、2019~22年に国内で制作された7作品、151話を分析の対象とした。内訳は、サッカーを扱った作品が4作品(さよなら私のクラマー、アオアシ、シュート! Goal to the Future、ブルーロック)、野球を扱った作品が3作品(ダイヤのA actII、八月のシンデレラナイン、球詠)であり、いずれも中学校または高校の部活動を舞台にしたストーリー。
これら合計3,634分の映像を2名の研究者が独立して視聴し、食品が登場するシーンの頻度と時間、場所、食品の種類、キャラクターの食品に対する反応などを分析した。研究者間で評価結果に相違がある場合は、外部の評価者を交えて再確認し合意を得た。
食品群別の再頻出は穀類。女子が主人公の場合は菓子類が有意に多い
3,634分の映像で、食品が登場するシーンは282回、計4,056秒だった。平均すると、12.9分に1回の頻度で食品が登場することになり、1回あたりの時間は14.4秒だった。食品が登場するシーンの82.6%は、食品の種類をすべて判定できるほどリアルに描かれていた。食品の種類を全く判定できないのは5.0%のみだった。
最も頻繁に登場したのは穀類で39.4%に描かれており、次いで嗜好飲料類以外の飲料が32.6%、野菜類31.9%、肉類25.9%、調味料18.4%、嗜好飲料類16.7%などが続いた。
次に、題材としている競技別または主人公の性別に分析すると、競技別の分析では、種類を特定できない食品がサッカーより野球で多かったことを除いて(12.1 vs 28.3%、p=0.01)、種類を特定可能だった食品に関しては頻度に有意差はなかった。一方、性別の分析では、菓子類が描かれる頻度に有意差が認められ、主人公が男子の場合よりも女子の場合に高かった(3.5 vs 39.0%、p<0.001)。
主食・主菜・副菜がそろっている食事シーンは17%
食品が登場したシーンの場所に着目すると、屋外が32.6%と最多で、屋内(食堂・飲食店以外)が30.5%、食堂25.2%、飲食店11.7%だった。
また、全体として37.9%で主食が描かれ、30.9%で主菜、28.4%で副菜が描かれていた。主食・主菜・副菜がそろっている食事シーンは、17.4%であった。これを食事の場所別にみると、屋外や屋内(食堂・飲食店以外)での食事では、主食・主菜・副菜がそろっていることは少なく、食堂や飲食店での食事はそれらがそろっているシーンが多かった。
アニメのキャラクターは肉類を好むが、野菜嫌いというわけではない
このほかに、アニメの中でキャラクターが摂取する食品に対する感情を、ポジティブ(好んでいる)、ネガティブ(避けている)、ニュートラル(どちらでもない)を判定するという分析も行われた。その結果、ニュートラルが74.3%と多くを占め、ポジティブが16.7%、ネガティブが9.0%だった。
これを食品カテゴリー別にみると、肉類の場合25.2%がポジティブであり、最も好まれる食品として表現されていた。2番目に好まれる頻度が高いのは野菜類であり、18.3%がポジティブと判定された。登場頻度が最も高い食品である穀類は、14.6%でポジティブに扱われていた。
ポジティブな反応が描かれることが最も少ない食品カテゴリーは菓子類であり、大半(94.1%)はニュートラルで、3.9%がポジティブと判定された。
研究結果のポイント
これらの結果に基づく考察として、論文ではいくつかのポイントが挙げられている。
アニメでも熱中症予防の飲水の必要性がきちんと扱われている
分析した282シーンの約3分の1(32.6%)に、嗜好飲料類以外の飲料(水または種類が判別できない飲料)を飲むシーンがみられた。その多くは、試合の合間にペットボトルを口にするシーンであった。現在、熱中症予防のため発汗量の増える状況での積極的な飲水の重要性が広く認識されており、それがスポーツアニメにも反映されていると考えられた。
女子は菓子好きというステレオタイプ
主人公の性別ごとの分析で、女子の場合は菓子類の登場頻度が男子の10倍以上に上った。これは、女子は菓子類を好むというステレオタイプの影響と考えられた。ただし、キャラクターが菓子類に対して格段にポジティブな反応を示すという傾向はみられなかった。
野菜が描かれる頻度が先行研究より高く、バランスの良い食事もしばしば登場
食品群別の出現頻度をみると野菜が3位であり、海外のアニメを分析した先行研究よりも頻繁に登場しており、またポジティブに扱われることが多かった。食堂やレストランのシーンでは、日本食の基本スタイルである、主食・主菜・副菜がそろった食事が描かれることが多く、この点は視聴者に好ましい影響を及ぼす可能性があるのではないかと期待された。
ご褒美は肉
食べものに対するキャラクターの反応は、肉に対するものが最もポジティブだった。ある作品では、試合でがんばった時の特別な“ご褒美”として、サーロインステーキが扱われていた。
スポーツ栄養教育にアニメを活用できる可能性も
著者らは、分析の対象をサッカーと野球を題材にしたアニメに絞ったことなどは本研究の限界点であるとしたうえで、「近年の日本のスポーツアニメには、穀物、野菜、肉、水分補給のための飲料が登場するシーンが多く、菓子類のシーンは多くなかった。また、食品の出現場所、関わるキャラクターなどによって、頻出する食品が異なっていた。このような表現は、スポーツの現場の社会的な認識に基づくものと考えられ、現実のスポーツ環境とスポーツアニメとの間に、相互作用的な関係があることが示唆される」と総括。
また、日本のスポーツアニメの視聴者層の豊かさや作品の描写の精緻さといった特徴を考慮した場合に、「アスリート対象の栄養教育における新たな教育媒体として活用できる可能性もある。よって日本のスポーツアニメに描かれる食品の質と、その描写に含まれるメッセージを、今後より詳細に評価していくべきではないか」と述べている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「The protagonist's table: Food in Japanese sports anime」。〔Nutr Health. 2025 Nov 11:2601060251395193〕
原文はこちら(SAGE Publications)







熱中症予防情報
SNDJユニフォーム注文受付中!

