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ビフィズス菌BB536が、高タンパク食を摂取する男性アスリートの下痢や体臭を改善する可能性 順天堂大学ほか

高タンパク食を摂取している男性アスリートが、ある種のヒト常在性ビフィズス菌種を摂取すると、下痢に関連するQOLスコアが改善し、体臭関連代謝物が低減される可能性があることが報告された。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科、順天堂東京江東高齢者医療センター、森永乳業の共同研究の結果であり、論文が「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に掲載されるとともに、同大学からプレスリリースが発行された。

ビフィズス菌BB536が、高タンパク食を摂取する男性アスリートの下痢や体臭を改善する可能性 順天堂大学ほか

研究成果のポイント

  • ヒト常在性ビフィズス菌種、Bifidobacterium longum BB536の摂取により、下痢関連QOLスコアが改善傾向を示した。
  • 下痢関連QOLスコアが改善した被験者の腸内細菌叢における、酪酸産生菌、Faecalibacteriumの占有率が増加した。
  • ビフィズス菌BB536の“体臭関連代謝物”への影響は、腸内細菌タイプ(エンテロタイプ※1)に依存する可能性が示唆された。
  • 一部のエンテロタイプでは、高タンパク食を摂取するアスリートにおける体臭関連代謝物を低減する作用が示唆された。

※1 エンテロタイプ:エンテロタイプとは、腸内細菌叢の構成パターンを分類する概念。個人の食事や生活習慣を反映しており、長期的な食生活の傾向と関連しているとされている。

研究背景:高タンパク食摂取アスリートの消化器症状や体臭を腸から調整できるか?

アスリートは筋肉の回復・成長のため高タンパク食を摂ることが多い一方、過剰摂取による腸内環境の乱れや消化器症状、体臭の原因となる代謝物増加が懸念されている。プロバイオティクスは腸内環境改善作用が知られているが、これまで高タンパク食を摂取するアスリートを対象とした研究は限られていた。そこで、森永乳業が50年以上にわたり研究を行っているビフィズス菌BB536を摂取することによる影響を探索的に検証した。

研究方法:男性アスリートを対象に4週間介入、対プラセボおよび介入前後で比較

順天堂大学運動部に所属する健康な男性アスリート60名を対象に、ビフィズス菌BB536を含むカプセルまたはプラセボカプセルを4週間摂取してもらい、さらに両群ともにホエイプロテイン70g/日を併用する、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を実施した。消化器症状(出雲スケール※2)、腸内細菌叢(16S rRNA解析)、体臭関連代謝物(皮膚ガス※3測定)を評価した。

※2 出雲スケール:出雲スケールは、胸やけ、胃痛、胃もたれ、便秘、下痢という、上部から下部にわたる五つの消化器症状を総合的に評価する合計15項目からなる自己記入式質問票。各項目は「全く困らなかった(0点)」から「がまんできないくらい困った(5点)」までの6段階で評価される。消化器症状(3項目)ごとのQOLスコアは0〜15点の範囲で算出され、数値が高いほど日常生活への障害が大きいことを示す。
※3 皮膚ガス:皮膚ガスとは、皮膚から自然に放出される微量の揮発性物質で、体臭の一因となる。人は皮膚からも多数の化学物質を放出しており、近年、腸内細菌由来の代謝物が血流を介して皮膚から放出されることが明らかになってきた。そのため、腸内環境の変化が皮膚ガスやにおい成分に反映される可能性がある。

研究結果:BB536群で下痢関連QOLスコアが改善し、短鎖脂肪酸菌増加と関連

(1)消化器症状について:下痢関連QOLスコアが改善傾向

ビフィズス菌BB536摂取群とプラセボ摂取群で群間差は確認されなかったものの、ビフィズス菌BB536摂取群では、摂取4週間後に下痢に関連するQOLスコアが有意に改善した(図1)。

図1 下痢関連QOLスコアの変化

下痢関連QOLスコアの変化

下痢関連QOLスコアは出雲スケールの下痢症状に関する3項目の合計点として算出した(0~15点)。BB536群29名、プラセボ群30名。
*:p<0.05。Wilcoxon符号付き順位検定。
(出典:順天堂大学)

(2)腸内細菌叢について:QOLスコアが改善した被験者では酪酸産生菌占有率が増加

下痢関連QOLスコアが改善した被験者(レスポンダー)では、ビフィズス菌BB536摂取4週間後に抗炎症作用を持つ酪酸産生菌であるFaecalibacteriumの腸内細菌占有率が、ノンレスポンダーより有意に増加し(図2)、ビフィズス菌BB536による(1)の改善効果が、腸内細菌叢に依存する可能性が示唆された。

図2 酪酸産生菌Faecalibacteriumの腸内細菌占有率の変化

酪酸産生菌Faecalibacteriumの腸内細菌占有率の変化

BB536摂取群をレスポンダー(n=9)とノンレスポンダー(n=19)に分け、摂取前後における腸内Faecalibacteriumの占有率を算出した。
*:p<0.05。多重性を考慮したノンパラメトリック共分散分析。
(出典:順天堂大学)

(3)体臭関連代謝物への影響は、腸内細菌タイプに依存する可能性

被験者の腸内細菌叢の違いによる、ビフィズス菌BB536の体臭関連代謝物への影響を明らかにするために、摂取前の腸内細菌叢に基づき被験者を以下の二つのエンテロタイプに分類した。

  • R型:Ruminococcus優勢型(ビフィズス菌BB536群8名、プラセボ群10名)
  • F型:Faecalibacterium優勢型(ビフィズス菌BB536群21名、プラセボ群20名)

いずれのエンテロタイプにおいても、体臭関連代謝物はビフィズス菌BB536摂取群とプラセボ摂取群で群間差は確認されなかったものの、R型ではビフィズス菌BB536摂取により、プロピオン酸が増加傾向、酪酸が有意に増加した。一方、F型ではアンモニアが減少傾向、メチルメルカプタンが有意に減少した(図3)。

図3 ビフィズス菌BB536摂取によるエンテロタイプごとの代謝産物の変化

ビフィズス菌BB536摂取によるエンテロタイプごとの代謝産物の変化

BB536摂取群をR型、F型に分け、摂取前後の体臭関連代謝物を測定した。
*:p<0.05、#:p<0.1。Wilcoxon符号付き順位検定。
(出典:順天堂大学)

以上より、ビフィズス菌BB536の体臭関連代謝物への影響はエンテロタイプに依存する可能性があり、とくにF型では高タンパク食を摂取するアスリートにおける体臭関連代謝物の低減作用が示唆された。

著者らは、「本研究結果は、アスリート特有の食生活環境において、腸内環境の違いに基づく個別化栄養アプローチの可能性を示唆するものと考えられる。本研究は探索的試験であり、今後さらなる検証を行い、アスリートの健康維持およびQOL向上に向けたプロバイオティクスの研究開発を進めていきたい」と記している。

関連情報

ヒトのビフィズス菌BB536が高タンパク食を摂取する男性アスリートの 下痢に関連するQOLスコアの改善および体臭関連代謝物を低減する可能性が示唆(順天堂大学)

文献情報

原典論文のタイトルは、「Bifidobacterium longum BB536 is associated with improvements in gastrointestinal symptoms and odor-related metabolites in microbiota-defined subgroups of male athletes consuming a high-protein diet: exploratory randomized double‑blind placebo‑controlled trial」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2026 Dec 31;23(1):2664664〕
原文はこちら(Informa UK)

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