日本人の食事リズムは4タイプに分類可能、時間栄養学研究で明らかに 東京大学
20~69歳の日本人男女1,047人を対象に、詳細なリアルタイム食事記録を用いて食事のタイミングや頻度など「食事リズム」の包括的な調査を11日間にわたって実施し、その解析の結果から日本人の食事リズムは「勤務日に朝食早め・多め型」や「休日に朝食抜き型」など、4つの特徴的な型に分類されることが報告された。一方で、いずれの型も食事の質や肥満(BMI・腹囲)とは、統計的に有意な関連を示さなかったという。

東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野の研究者らによる論文が「British Journal of Nutrition」に掲載されるとともに、同大学からプレスリリースが発行された。著者らは、「本成果は日本人の多様な食事リズムの実態を初めて網羅的に捉えたものであり、将来的に個々のライフスタイルや勤務形態に即した効果的な健康づくり戦略を検討するための重要な科学的根拠となることが期待される」としている。
研究の概要
東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野の研究者らのグループは、20~69歳の日本人1,047人を対象に、11日間にわたるリアルタイムの食事記録を用いて、いつ、どのくらいの頻度で食べるかという「食事リズム(時間栄養学的食行動)」の個人差を網羅的に解析した。
統計解析の結果、日本人の食事リズムは「勤務日に朝食早め・多め型」や「休日に朝食抜き型」など、大きく4つのパターンに分類できることを世界で初めて明らかにした。これらの型は性別、年齢、勤務形態といった属性と強く関連していた。一方で、意外なことに、食事の質(栄養バランス)や肥満(BMI・腹囲)との間に直接的な関連はみられなかった。
この研究は、日本人の多様な食事リズムの実態を初めて可視化したものであり、時間栄養学に基づいて個々のライフスタイルに即した健康増進策を構築するための重要な科学的基盤となる成果。
発表内容
研究の背景:食事のリズムの全体像が、これまでよくわかっていなかった
近年、いつ、どのくらいの頻度で食べるかという「時間栄養学」※1が健康に与える影響が注目されている。しかし、これまでの研究は朝食の欠食など、単独の習慣に焦点を当てたものが多く、1日の食事全体のタイミングや頻度が組み合わさった「食事リズム」の全体像を捉えた研究は、とくに日本人においてはほとんどなかった。
※1 時間栄養学(chrono-nutrition):「いつ、どのくらいの頻度で食べるか」という視点から健康への影響を考える栄養学の分野。
研究の内容:全国各地に暮らす千人以上の食事リズムを11日間にわたって評価
研究の参加者は、全国26都道府県の20~69歳の男女1,047人。11日間にわたり、食事をするたびに時刻を記録してもらった。あわせて、起床時刻と就寝時刻の記録も依頼した。このうち4日間は、時刻だけでなく、食事内容も記録してもらった。
このデータから、19種類の時間栄養学的食行動の変数を作成した(表1)。また、時間と頻度に関する時間栄養学的食行動の変数の具体的な例は図1のとおり。
表1 研究で用いた19種類の時間栄養学的食行動の変数

図1 時間と頻度をもとにした時間栄養学的食行動

これらを、主成分分析※2という手法で解析した結果、以下の4つのパターンが特定され、食行動の個人差の63%を説明することがわかった(図2)。
※2 主成分分析:多くの変数を少数の主要な特徴(パターン)にまとめ、データの構造を明らかにする統計手法。
- 「勤務日に朝食早め・多め型」:仕事がある日の起床が早く、朝食を早い時間にしっかりとる規則正しいリズム。
- 「休日に朝食抜き型」:仕事がある日とない日の食事時間のズレが大きく、休日に朝食を抜くリズム。
- 「間食多め・夕食少なめ型」:1日の間食回数が多く、その分、夕食のエネルギー摂取割合が低いリズム。
- 「昼食多め・夕食早め型」:夕食の終了時刻が早く、昼食をメインにしっかりとるリズム。
図2 4つの「食事リズム」のパターン

これらのパターンと関連する要因を分析したところ、若年層や男性は「休日に朝食抜き型」が多く、女性は「間食多め・夕食少なめ型」が多いなど、個人の属性によって明確な違いがあった。
一方で、健康食インデックス※3を基に評価した食事の質(栄養バランス)や、BMI・腹囲で測定した肥満との関連を調べたところ、いずれのリズムの型においても統計的に有意な関連は認められなかった。
※3 健康食インデックス(Healthy Eating Index):現時点での科学的知見を網羅的にまとめたうえで定められた「アメリカ人のための食事ガイドライン」(Dietary Guidelines for Americans)の遵守の程度を測る指標で、日本人における有用性も検証済み。
社会的意義と今後の展望:画一的な「理想のリズム」よりも柔軟性な指導が必要
本研究は、日本人の多様な食事リズムを初めて包括的に可視化したもの。食事リズムは個人のライフスタイルや勤務形態を色濃く反映しているが、そのリズムそのものが直ちに肥満や低栄養を招くわけではない可能性が示唆された。
著者らは、「この結果は、画一的な『理想のリズム』を押し付けるのではなく、個々の生活背景に合わせた柔軟な健康指導の必要性を示している。今後は、リズムと『何を食べるか(食事内容)』を組み合わせた多角的な研究が進むことで、より実効性の高い食事ガイドラインの策定に寄与することが期待される」と述べている。
プレスリリース
日本人の「食事リズム」には4つの型があることを特定―時間栄養学による包括的な食行動分析―(東京大学)
文献情報
原典論文のタイトルは、「Identification of chrono-nutrition behaviour patterns and their associations with sociodemographic characteristics, diet quality and obesity」。〔Br J Nutr. 2026 Apr 16:1-16〕
原文はこちら(Cambridge University Press)







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