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日本・韓国・シンガポールなどで少子化が進む理由とは? 食事・運動・睡眠と女性の妊孕性の関係を解説

世界的に出生率の低下が起きているが、日本、韓国、シンガポールなどのアジア諸国はとくに出生率が低い。なぜこのような現象が起きているのだろうか。アジア太平洋諸国の女性の健康と生殖能力に焦点をあて、食事・栄養・運動などを含むライフスタイル、社会経済的地位、環境汚染などに関する考察を述べた総説を紹介する。

日本・韓国・シンガポールで深刻な少子化が進む理由とは? 食事・運動・睡眠と女性の妊孕性の関係を解説

イントロダクション:出生率の低下が世界的な懸念事項

多くの国で出生率の低下が起きており、2050年までに76%の国で、合計特殊出生率が人口の維持に必要な2.1を下回ると予測され、2100年には97.1%に達するとされている。人口規模の低下は経済や医療、環境に深刻な問題を引き起こす。とくにアジアでは、日本、韓国、シンガポールで子どもの減少速度が速く、さまざまな社会的課題が表面化している。女性の健康と幸福(wellbeing)は生殖能力に影響し、出生率を左右すると考えられており、出生率を向上するには女性の健康と幸福を高め得る施策が必要な可能性がある。

こうした背景のもと、今回取り上げる論文は、既報文献のレビューに基づき、女性の健康と幸福および生殖能力に関するエビデンスを総括している。なお、著者によると、このトピックに関するエビデンスの多くは白人を対象とする研究から得られたものであり、アジア太平洋地域での研究は少ないとのことだ。

女性の健康とwellbeingの主要な五つの決定因子

文献検索には、PubMed、Embase、Cochrane Libraryが用いられ、それぞれのスタートから2025年2月までに収載された文献を対象とし、キーワードには、出生率、妊孕性、受胎能力、妊娠などを設定して、英語で執筆されているものを検索した。研究対象集団は限定しなかった。

女性の健康と幸福の主要な決定因子として、1)生活習慣要因(食事と栄養、身体活動、精神的幸福、睡眠という四つの主要な因子を含む)、2)社会経済的地位、3)環境汚染物質、4)体重と代謝の健康、5)女性の生殖特性とした。ここでは食事・栄養、身体活動に関する内容を中心に紹介する。

生活習慣要因

食事と栄養

食事と栄養は、肥満、酸化ストレス、炎症、インスリン抵抗性など、さまざまな経路に影響を与え、全体的な健康に対する重要な修正可能なリスク因子であって、これらはすべて生殖能力と関連付けられている。エビデンスはまだ限られているが、ここ数十年で食事と女性の生殖能力との関連性に関する研究の大きな進歩があった。

食習慣

主として白人を対象とした研究では、地中海食の遵守度が高いほど、妊娠が困難となるリスクが低いことが示されている。一方、アジア太平洋地域での限られた報告の中には、地中海食と不妊症との間に有意な関連性はないとの報告もみられる。

微量栄養素

葉酸は細胞の成長とDNA合成および修復に不可欠。葉酸が女性の生殖能力と出生率に及ぼす影響に関するエビデンスは、主に北米と欧州で行われてきており、結果の一貫性は高くはないが、潜在的なメリットが存在する可能性がある。他方、動物実験では、ビタミンD欠乏が生殖機能を損なう可能性が示唆されている。ビタミンD欠乏症の有病率は世界的に高く、アジア太平洋地域ではより高い可能性がある。

食事性脂質

食事性脂質の種類によって、生殖能力への影響が異なる。多価不飽和脂肪酸、とくにDHAとEPAは、ホルモン調節、卵胞の発育、胚の着床をサポートし、トランス脂肪酸はインスリン抵抗性や炎症を引き起こして生殖能力に悪影響を及ぼす。米国、欧州、および韓国と日本で実施された研究によると、魚を食べることによるω3脂肪酸の摂取が、不妊治療を受けている女性を含め、妊娠率と生殖能力の向上に関連していることが示された。

その他

乳製品摂取と妊娠可能性の関係は依然として不明瞭。有害性を示す確固たる証拠は報告されていない。カフェインについても研究の異質性のため、依然として決定的な結論には至っていない。いくつかの前向き研究では、妊娠前のカフェイン摂取量が多いと、流産リスクがわずかに増加する可能性が示唆されている。アルコールが妊娠に及ぼす影響は不明確であり、一般集団における報告結果はまちまちである。

身体活動

身体活動がエネルギーバランス、心血管代謝機能、インスリン感受性、体重調節、精神的健康を向上させることは十分に立証されており、これらはすべて生殖にかかわる健康にプラスの影響を与える。ただし、身体活動と生殖能力との間には複雑な関係があることも示唆されている。

運動不足

欧米での研究に基づくシステマティックレビューからは、座位行動の多さが女性の生殖能力の低下と関連していることが報告されているが、身体活動の不足が女性の生殖能力にどのような影響を与えるかはまだ解明されてはいない。

中強度身体活動

速歩やレクリエーション水泳など、中程度の努力を必要とし心拍数がわずかに上昇する程度の運動は、一般的に女性の妊孕性を向上させることが示されている。中国での研究を含むメタ解析では、中強度身体活動は低強度身体活動と比較して、不妊リスクの有意な低下と関連していた。

高強度身体活動

高強度身体活動が妊孕性に及ぼす影響については依然として議論の余地がある。いくつかの研究では潜在的な利点が示唆され、他方で激しい運動の量が多いほど妊孕性が低下することを示唆するデータもある。興味深い点として、過体重または肥満の人では高強度身体活動が妊孕性にプラスの影響を与える可能性がある一方、高負荷トレーニングや体重制限を受けているアスリートでは、無月経、稀発月経、黄体機能不全などが多い。つまり、身体活動の増加は必ずしも生殖能力を高めるわけではないようであり、さらなる研究に値する。

不妊症の女性の身体活動

レクリエーションとしての身体活動は、とくに肥満や多嚢胞性卵巣症候群などの代謝機能障害に関連する疾患のリスクを低減することで、妊孕性の向上につながる可能性がある。しかし入手可能なエビデンスの大半は欧州と北米で行われた研究によるものであり、アジアからのデータは限られていてばらつきも大きい。さらに、身体活動を厳密かつ一貫して定量化した研究は依然として不足している。

睡眠

概日リズムは生殖ホルモンを調節しており、その乱れはホルモンバランスを変化させる可能性がある。中国で実施されたコホート研究を含むいくつかの研究で、睡眠時間が長い場合も短い場合も不妊のリスクが高いというU字型の関係が示唆されている。また、シフト勤務では流産のリスクが高いことも示唆されている。このほか、システマティックレビューでは、睡眠の質の低下、睡眠障害、睡眠時無呼吸、特定のクロノタイプが、自然妊娠の減少、生児出産率の低下と関連していることが示された。

睡眠時間と睡眠の質を最適化することは生殖の成功にとって重要であると考えられる。今後はとくにアジア太平洋地域の住民を対象とした、質の高い研究が求められる。

体重と代謝の健康

肥満

肥満は、女性の生殖能力に悪影響を与える最もよく知られた要因の一つ。自然妊娠率を低下させ、生息補助医療の成功率を低下させることが示唆されている。アジア人集団でも、過体重または肥満の女性は、正常なBMIの女性と比較して不妊のリスクが1.3~3.7倍高いという観察研究がある。

最近、肥満外科手術による体重減少が不妊症に有益な効果をもたらす可能性が示唆されている。しかしエビデンスの蓄積は十分でなく、潜在的なリスクの理解も必要。

論文では上記のほかに、メンタルヘルス、社会経済的地位、大気汚染、内分泌かく乱化学物質、重金属、代謝性疾患、子宮内膜症、性感染症、授乳などと生殖機能との関連について、現時点のエビデンスが総括されている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Women's health and female fertility: current evidence and knowledge gaps in the Asia–Pacific region」。〔Lancet Reg Health West Pac. 2025 Dec 8:65:101710〕
原文はこちら(Elsevier)

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