心不全患者の身体機能がタンパク質・アミノ酸摂取で改善 運動困難な高齢者の実用的サポート 信州大学
心不全患者がタンパク質、アミノ酸を摂取することにより、身体機能が向上することを示す研究結果が報告された。金沢医科大学や信州大学の研究グループによるシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、「Circulation Reports」に論文が掲載されるとともにプレスリリースが発行された。タンパク質およびアミノ酸の摂取単独でも、運動療法併用と同等の効果が確認されたという。研究者らは、高齢者や運動療法が困難な人でも効果が期待されるとしている。

研究の概要:栄養介入のみで運動介入併用と同等の効果を期待できる可能性
金沢医科大学病院リハビリテーションセンターと、信州大学医学部保健学科基礎理学療法学の研究者を中心とする研究グループは、世界中で発表された過去の研究データを集めて統計的な分析・評価を行い、心不全患者に対するタンパク質やアミノ酸の摂取が身体機能(身体の動かしやすさ)に与える影響を検証した。
その結果、タンパク質およびアミノ酸を摂取することにより、心不全患者の身体機能の指標である6分間歩行距離が平均で35m延びることが明らかになった。この効果は、摂取単独でも、運動療法と組み合わせた場合でも、同等の改善がみられたことから、運動が十分にできない高齢患者にとって、運動療法を併用しなくても、適切な栄養補給が身体機能の維持・向上をサポートする実用的な選択肢となる可能性が見出された。
図1 研究の概要

研究の背景:運動介入が困難な心不全患者に栄養介入はどの程度有効?
心不全は世界で2,600万人以上が罹患しており、高齢化に伴いその有病率は上昇している。とくに高齢の心不全患者においては、疾患による炎症や食欲不振などから栄養状態が悪化し、筋肉が衰え心身が弱くなる「サルコペニア」や「フレイル」になりやすいことが問題となっている。これらの筋力低下は、身体機能の低下や生活の質(QOL)の悪化、さらには再入院や死亡のリスクを高める。
心不全の治療において運動療法が重要とされているが、高齢でフレイル状態の患者の中には十分な運動が難しい患者も多い。また、これまでの研究では結果が一貫していないため、明確な治療指針がない状況。その一方、筋肉の合成を促し、身体機能の維持・向上に役立つとされるタンパク質およびアミノ酸の摂取が、運動困難な患者のための代替手段として期待されている。
研究の成果:6分間歩行距離が有意に改善し、腎機能への影響は認められない
本研究では、合計744名の患者が参加した15件のランダム化比較試験を分析した。
主要評価項目(身体機能)の改善
主要な評価指標である6分間歩行距離は、摂取群で対照群に比べ平均35.3mの有意な改善を示した。
次に、この効果がどのような条件の人にも共通してみられるかを調べるため、さらに詳しい分析を行った結果、主に二つの大切なことがわかった。
(1)運動療法併用との比較
タンパク質およびアミノ酸を摂取するだけの人たちと、運動療法をしながら摂取する人たちを比べたが、効果にほとんど差はなかった。これは、運動と関係なく、摂取するだけでも身体機能の改善に役立つ可能性を示している。
(2)年齢層での比較
65歳以上の高齢患者と、65歳未満の比較的若い患者を比べたところ、どちらの年齢層でも同じように6分間歩行距離が大きく改善し、年齢に左右されないことがわかった。
副次評価項目(筋力、体組成、安全性)
筋力(握力)や、体組成(筋肉量や脂肪量)を測っても、タンパク質およびアミノ酸摂取による目立った改善は確認されなかった。
一方、腎臓の機能が損なわれることはなく、下痢や吐き気などの副作用の頻度に増加傾向を示さなかったため、このタンパク質およびアミノ酸の摂取による安全性に関して特段の問題は認められなかった。
効果・今後の展開
本研究は、タンパク質およびアミノ酸の摂取が心不全患者の身体機能(体の動かしやすさ)を向上させるための実用的な戦略となり得ることを示した。とくに、運動療法が難しい高齢の心不全患者に対して、身体機能の維持・向上をサポートする補完的な介入法として有用である可能性が示された。
今後は、タンパク質およびアミノ酸の摂取と運動療法の組み合わせが、筋力や体組成といった他の指標に与える影響について、さらなる研究が期待される。
プレスリリース
心不全患者さんの「身体の動かしやすさ」を改善! タンパク質・アミノ酸の摂取が身体機能の向上をサポート~運動が困難な高齢者にとって実用的な支援策に~(信州大学)
文献情報
原題のタイトルは、「Effects of Protein and Amino Acid Supplementation on Physical Performance in Patients With Chronic Heart Failure - A Systematic Review and Meta-Analysis」。〔Circ Rep. 2025 Oct 31;8(1):39-47〕
原文はこちら(J-STAGE)







熱中症予防情報
SNDJユニフォーム注文受付中!

