トライアスロン水泳中に水を4口以上飲んでしまうと、レース後の消化器症状発生リスクが5倍に
屋外環境で行われるトライアスロンの水泳の際に、意図せずに水を飲んでしまうことが競技後の消化器症状に関連していて、より多く飲むほどそのリスクが高くなることを示唆する調査結果が発表された。4口以上飲んでしまった場合のオッズ比は5.1倍だという。オランダからの報告。

トライアスロンで水をどのくらい飲んでしまうとリスクになるのか
トライアスロンの人気が世界的に高まり、各地で開催されるようになった。この複合スポーツは多くの健康上のメリットをもたらすと考えられるが、水泳が川や湖、運河などのオープンウォーターで行われる場合、選手は病原性微生物に曝露されることになり、意図せずに水を飲み込んだ場合には消化器症状を来し得る。
このリスクを避けるため、大会前には水質検査が実施され、大腸菌の量や藻類の発生状況等次第で水泳が中止されることもある。ただし、水質の評価には時間を要するため、サンプリングは開催の1週間ほど前に行われる。一方でオープンウォーターの水質は周囲からの排水や降雨などによって変化し、競技開催日の水質が水質検査実施日と同じとは言えない。これらの結果として、試合参加選手が水を飲んでしまうことによる体調の悪化が発生する。
2024年のパリ五輪はその代表的な例と言え、細菌濃度が高いために一度は延期されたものの、当初の予定どおりセーヌ川で実施された。そして競技後に多くの選手が水質に対する不満を述べ、複数の選手が体調不良のため入院加療を要した。
このように、トライアスロンのオープンウォータースイミングに一定のリスクがあることは明らかだが、どの程度の水を飲むとリスクになるのかといった定量的な検討はこれまでなされていない。そこで今回取り上げる論文の著者らは、選手の経験、スイムタイムなどを考慮して、飲み込んでしまった水の量と消化器症状との関連を検討した。
オランダ国内の4都市で開催された計6大会の参加者を対象に調査
この研究は、2025年の5~9月にオランダの異なる四つの都市で行われた、計6回のトライアスロン大会参加者(18歳以上)を対象に実施された。競技中の水の摂取の有無や摂取量、大会後7日間の体調などに関するオンラインアンケートを作成、そのサイトへのリンク情報を、各大会の主催者を通じで全参加者に送信。回答の受付けは記憶バイアスの影響を抑制するために、各大会終了後14日以内とした。
6大会の参加者数は合計7,188人であり、1,294人(18%)が回答した。
解析対象者の特徴
1,294人の主な特徴は、男性が70.9%、年齢層は40代29.3%、30代25.3%、50代20.8%、30歳未満17.0%、60歳以上7.7%。競技レベルは51.2%が初心者であり、46.8%が熟練者、1.9%はエリートレベルだった。また84.8%は、オープンウォータースイミングの経験を有していた。なお、3.8%の選手が何らかの慢性疾患を有していた。
スイムの距離・時間
スイムの距離は1,500~1,900mが58.8%と最も多く、400~1,000mが26.3%、3,800m以上が14.9%であり、スイムに要した時間は30~60分が47.4%、30分未満が37.9%、60分超が14.8%だった。
交絡因子を調整後もスイム中に水を飲むことが消化器症状の発現に関連
消化器症状発現頻度は5.1%
全体として4人に1人(24.7%)は意図せずに水を飲むことはなかったと回答し、4人に3人(75.3%)は意図せずに水を飲んだと回答。後者のうち、1~3口の水を飲んだという回答が43.0%、4口以上の水を飲んだという回答が32.2%だった。
大会参加後7日間で消化器症状を発症した選手は全体で5.1%であり、発生頻度を大会別にみると、最も発生率が低い大会は0.5%、最も高い大会は7.6%の範囲だった。症状の発現は大会当日と翌日に多く、2日目以降は減少していた。
飲んだ水の量と消化器症状発現との関連
水泳中に意図せず水を飲むことがなかった選手では、大会後7日間での消化器症状発現頻度は1.3%だった。一方、意図せずに水を飲んでしまった選手でのその頻度は6.4%だった。また、飲んだ水の量で層別化すると、1~3口では4.8%、4口以上では8.4%だった。
結果に影響を及ぼし得る因子として、年齢区分、性別、オープンウォータースイミングの経験の有無、競技レベル、スイムに要した時間、慢性疾患の有無を調整後に、意図せず水を飲むことがなかった選手を基準として、消化器症状発現のオッズを計算すると、以下のような結果が得られた。
まず、意図せずに水を飲んでしまった選手はオッズ比(OR)4.355(95%CI;1.614~11.749)と、有意に消化器症状発現が多かった。また、飲んだ量で層別化すると、1~3口ではOR3.672(同1.316~10.242)、4口以上ではOR5.07(1.740~14.767)であって、より多く飲んでしまった場合により高いオッズ比が示された。
これらに基づき論文の冒頭に、ハイライトとして次のような総括が掲げられている。
- 本研究は、トライアスロンの水泳競技において水を飲み込むことが消化器症状の発現につながる可能性を示唆しており、レクリエーションとしてのウォータースポーツにおける環境衛生上のリスクが、頻繁に発生している実態を浮き彫りにしている。
- 飲み込んだ水の量とレース後の消化器症状との間に観察された関連性は、現在の水質モニタリング方法の限界と、アスリートの保護を強化する必要性を示している可能性がある。
- 今回の調査結果は、レース直前の水質モニタリングをより頻繁に実施すること、および、オープンウォータースイミング中の意図しない水の摂取を減らすため、選手に焦点を当てた予防戦略を開発することの必要性を裏付けている。
文献情報
原題のタイトルは、「Unintentional Water Intake During Swimming and Post-Race Gastrointestinal Illness in Triathletes: Results from 6 Triathlons and 1294 Athletes」。〔Int J Environ Res Public Health. 2026 Mar 19;23(3):392〕
原文はこちら(MDPI)







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