子どもの「行動上の問題」に受動喫煙が関与? 岐阜県の公立保育園・小学校での調査 静岡県立大学
子どもたちの行動上の問題、例えば、落ち着きがない、頭痛や腹痛などをよく訴える、新しい場面に直面すると不安になり自信をなくす――といったことに、受動喫煙が影響を及ぼしている可能性を示唆する研究結果が報告された。尿中のコチニン濃度が高い子どもは、「子どもの強さと困難さアンケート」のスコアが高いという。静岡県立大学食品栄養科学部栄養生命科学科・大学院食品栄養環境科学研究院の桑野稔子氏らによる論文が、「Frontiers in Public Health」に掲載された。

受動喫煙は、子どもの行動上の問題の変更可能なリスク因子の一つか
子どもの行動上の問題はときに生涯にわたり影響を及ぼすことがあるとされており、人生の早い段階で変更可能なリスク因子への介入が求められる。一方、成人においては喫煙が神経疾患のリスク因子であることが知られており、また受動喫煙が脳神経機能の発達に影響を及ぼすことや、受動喫煙と注意欠如多動症(ADHD)、素行症、破壊的行動との関連性が、いくつかの先行研究で報告されている。ただし、日本国内での研究は少なく、受動喫煙と子どもの行動上の問題との関連は不明点が多い。とくに学童期での知見は極めて少ない。
これを背景として桑野氏らは、岐阜県山県市内の全公立保育園と小学校の児童・保護者を対象とする調査を行い、受動喫煙と「子どもの強さと困難さアンケート(Strength and Difficulties Questionnaire;SDQ)」スコアとの関連性を検討した。
尿中コチニン濃度が高い子どもは、行動上の問題が多い
この研究は、岐阜県山県市のすべての公立保育園の年長児(5~6歳)と公立小学校の2-6年生の児童(7~12歳)を対象に行われた。自宅で早朝第一尿を採取してもらい、クレアチニン補正した尿中コチニン濃度(urinary creatinine-corrected cotinine concentration;UC)を測定し、5.0 ng/mgCrをカットオフ値として低UC群/高UC群に二分した。
行動上の問題は、スクリーニングに広く用いられている「子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)」で評価した。SDQは、「落ち着きがなく、長い間じっとしていられない」、「頭が痛い、お腹が痛い、気持ちが悪いなどと、よく訴える」、「目新しい場面に直面すると不安ですがりついたり、すぐに自信をなくす」、「よくうそをついたり、ごまかしたりする」など25項目の質問で構成されている。各項目について、「あてはまらない」、「まああてはまる」、「あてはまる」の3択で回答してもらい、それぞれ0-2点を付与し、得点が高いほど困難さが大きいことを意味する。困難さの4つの下位尺度(情緒の問題、行為の問題、多動/不注意、仲間関係の問題)と、強みの1つの下位尺度(向社会的な行動)があり、各下位尺度の合計点は0-10点。さらに、困難さの4つの下位尺度の合計点は、総合的困難さ(TDS:total difficulties score)として計算し、スコア範囲は0~40点。本研究では最上位20パーセンタイルを「行動上の問題あり」とし、低学年(年長児、2~3年生)は15点以上、高学年(4~6年生)は14点以上を「行動上の問題あり」と定義した。
低学年の10.1%、高学年の7.4%が受動喫煙の曝露レベルが高い
まず、クレアチニン補正した尿中コチニン濃度(UC)は、低学年は平均2.3±6.0ng/mgCrであり、10.1%が高UC群に分類された。高学年は平均1.5±5.2ng/mgCrであり、7.4%が高UC群に分類された。
低学年の児童において、高UC群は年齢がより低く、ローレル指数が高い、同居家族の喫煙率が高い、保護者の教育歴が短い、社会的ニコチン依存度(喫煙に対する肯定的姿勢)が高いという有意差が認められた。高学年の児童においては、高UC群はローレル指数が高い、アレルギー性鼻炎の既往歴が多い、同居家族の喫煙率が高い、保護者の社会的ニコチン依存度が高いという有意差が認められた。
受動喫煙暴露レベルが高い群の児童は、支援の必要性が高い
次に、子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)のスコアと尿中コチニン濃度(UC)との関連を検討。解析に際しては、年齢、性別、ローレル指数、喘息・アレルギー性鼻炎の既往歴、家族構成、同居家族の喫煙状況、保護者の教育歴、保護者の社会的ニコチン依存度を共変量として調整した。
その結果、低学年については、高UC群と低UC群とでSDQの総合的困難さスコア(SDQ-TDS)に有意差はなかった。ただし、SDQの下位尺度のうち、情緒の問題については高UC群のスコアのほうが有意に高かった(p=0.008)。
一方、高学年ではSDQ-TDSに有意差がみられ、高UC群のほうが高かった(p=0.004)。さらに下位尺度のうち、多動/不注意(p=0.001)、行為の問題(p=0.003)、向社会的な行動(p=0.028)にも有意差が認められ、いずれも高UC群のほうが高かった。仲間関係の問題と情緒の問題については有意差がなかった。
高学年の受動喫煙暴露レベルが高い群では、交絡因子調整後も、行動上の問題のオッズ比が有意に高い
続いて、高UC群で行動上の問題が発生するオッズ比(OR)を、低UC群を基準とするロジスティック回帰分析により検討した。その結果、低学年では交絡因子未調整の粗モデルでOR1.51(95%CI;0.72~3.16)、前記の交絡因子調整モデルでもOR1.04(0.45~2.40)と、95%信頼区間が1を跨いでいた。つまり低学年においては、受動喫煙は行動上の問題との関連がみられなかった。
一方、高学年では粗モデルでOR3.04(1.49~6.21)と有意であり、調整モデルでもOR2.39(1.05~5.45)と有意であった。つまり高学年においては、受動喫煙が行動上の問題に影響を及ぼしている可能性が考えられた。
家庭や地域社会における禁煙環境の促進に向けた、より強力なイニシアチブが必要
著者らは本研究について、横断的デザインであるため因果関係の考察が制限されること、自記式質問票による評価を解析に用いたことによる想起バイアス、および把握されていない残余交絡が存在する可能性があること、また、環境内に残留する煙の影響(いわゆる三次喫煙)を考慮していないことなどの限界点があるとしている。加えて本研究における同居家族の喫煙率が44.5%と日本の平均より高かったことも、解釈上の留意点としている。
一方で、「受動喫煙を抑制することで子どもたちの行動上の問題のリスクを低下させ得る可能性が、初めて日本の児童を対象とする研究で実証された」と意義を述べ、「受動喫煙の防止は公衆衛生施策として欠くことのできない要素であり、家庭や地域社会における禁煙環境の促進に向けた、より強力なイニシアチブが必要とされる」と結論づけている。
文献情報
原題のタイトルは、「Secondhand smoke exposure and behavioral problems in Japanese schoolchildren」。〔Front Public Health. 2025 Jul 3:13:1595509〕
原文はこちら(Frontiers Media)







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