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横須賀市「子どもたちの体力向上・健康増進に係る研究成果報告会」
【後編】子どもの生活習慣、体力、睡眠、味覚、お口ぽかんの現状と危機感

横須賀市「子どもたちの体力向上・健康増進に係る研究成果報告会」【後編】子どもの生活習慣、体力、睡眠、味覚、お口ぽかんの現状と危機感

横須賀市「子どもたちの体力向上・健康増進に係る研究成果報告会」

神奈川県立保健福祉大学による成果発表

神奈川県立保健福祉大学からの研究成果の発表は4テーマ。個別の発表に先立ち、同大学大学院保健福祉学研究科長の鈴木志保子氏から、研究全体の概要が説明されました。研究の枠組みは大きく分けると、最初の3テーマは横須賀市の児童・生徒の体力や生活習慣などに関する独自調査のレポートで、もう一つは子どもたちの味覚に関する研究。いずれも精緻なデータが報告されましたが、詳細は論文化を待つこととして、ここでは要旨を紹介します。

体力と生活習慣との関係

神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科長 鈴木 志保子 氏

神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科長 鈴木 志保子 氏

鈴木氏は最初に横須賀市の子どもたちの体力評価の結果を報告。その評価結果を学年と性別に分けて解析すると、男子では中学生になるとA判定の子ども増え始めるのに対して、女子では小学生高学年で増え始めるという差があるとのこと。このような差が生じる理由について「成長のピーク年齢の違いによるものではないか。男子は中学に入ってから成長が加速するが、女子は中学入学時点で既にピークを迎えているという差をみている可能性がある」と考察を述べました。

また、体格と体力との関連については、小学生では性別にかかわらず肥満度が高くなく、身長の高い子どもの体力が高い傾向がみられるとのこと。一方、中学生になると、男子は小学生と同様の結果であるのに対して女子は、肥満度と体力との関連が明確でなくなり、身長との関連のみが認められるという結果が示されました。

そのほか、学校や地域でのスポーツクラブ活動への参加と体力との関連、睡眠時間やスクリーンタイムと食習慣、体力などとの関連などが報告されました。同様の調査は全国レベルでも実施されていますが、本研究では例えば睡眠時間について、平日、休日、休日の前日などと詳細に分類したうえで関連が解析されており、子どもたちの健康課題の本質により迫るデータを蓄積しているとのことでした。

睡眠と生活習慣との関係

神奈川県立保健福祉大学実践教育センター専任教員 兼 保健福祉学部講師 中西 朋子 氏

神奈川県立保健福祉大学実践教育センター専任教員 兼 保健福祉学部講師 中西 朋子 氏

中西氏は子どもたちの睡眠の実態を、厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド2023』の推奨と対比させて紹介するとともに、睡眠と生活習慣の関係の解析結果を示しました。横須賀の子どもにおいては、睡眠時間の推奨を満たしているのは2~3割程度にとどまり、中学2~3年の女子では2割を下回っているとのこと。そして、睡眠時間が不足している男子は肥満度が高いこと、性別にかかわらず睡眠不足の子どもは学習目的以外でのスクリーンタイムが1日5時間以上の割合が高いこと、睡眠時間が充足している子どもは朝食欠食が少ないことなどが示されました。

さらに睡眠は、子どもの体力、および不定愁訴と呼ばれるさまざまな自覚症状とも関係があるようです。まず、体力については、推奨される睡眠時間を満たしている子どもは、学年や性別による違いはあるものの概して体力テストの得点が高いという結果が示されました。次に不定愁訴についても、推奨される睡眠時間より実際の睡眠時間が短く、その差が大きい子どもほど、立ちくらみ、疲れやすさ、やる気が起きない、イライラする、授業に集中できないなどの症状が多いという関連が認められたとのことです。これらのデータを基に同氏は、「推奨される睡眠時間を満たしている子どもは規則的な生活リズムをもち、好ましい生活習慣を実践して体調も良好であった。推奨睡眠時間を毎日確保することの重要性が示唆される」とまとめました。

「お口ぽかん(口唇閉鎖不全)」の現状と課題

神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科講師 久保田 悠 氏

神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科講師 久保田 悠 氏

久保田氏からは、子どもの歯科保健の現状が報告されました。近年、むし歯が減少している一方で、いつも口が開いている子どもや、しっかり噛めない子どもが増えているとのこと。とくに「いつも口が開いている」という状態は子どもの3割に認められ、これはむし歯の有病率にほぼ匹敵するということです。口がいつも開いていると、口中の乾燥、むし歯、口臭などのリスク上昇が明らかになりつつあることから、2018年に「口腔機能発達不全症」が病名として定義されました。

本連携協定での研究では、この「お口ぽかん」(歯学的には口唇閉鎖不全と呼ばれます)の実態も調査されました。これまで口唇閉鎖不全の調査は、歯科を受診した患児のみを対象としていたのに対して、本調査では歯科受診の有無にかかわらず多くの横須賀の子どもたちを対象に実施されており、有病率など疫学関連の有為な情報が得られました。解析の結果、口唇閉鎖不全に該当する自覚症状は、その程度や学年・性別により若干の差はあるものの、半分以上の子どもたちにみられるとのこと。さらに、口唇閉鎖不全と、目の乾燥、睡眠時間の少なさ、スクリーンタイムの長さ、不定愁訴の多さ、体力の低さなど、意外とも言えるような関連性を示すデータが報告されました。

久保田氏は、明らかになった結果の総括として、「子どもたちの“お口ぽかん”という状態は、口の機能低下のみならず、生活習慣や各種の症状、体力レベルとの関連がみられた。今後はこれらの変数の関連について、多角的に検討していきたい」と総括しました。

「5基本味体験キット」を用いた「味覚」の認識に関する現状

神奈川県立保健福祉大学実践教育センター専任教員 兼 保健福祉学部講師 中西 朋子 氏

最後の4題目は中西氏が再度登壇。まず、味覚について、食品の安全性の確認等のために極めて重要な感覚であり、また「食」という行為は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感を同時に刺激する唯一の活動と考えられていること、味覚は甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の5基本味からなることを解説。そのうえで、横須賀市立の小学校2校、127人の生徒を対象とする味覚教室での成果を報告しました。

味覚教育用に開発された「5基本味体験キット」で五味を実感してもらったところ、うま味以外の四味についてはいずれも、その味を言い当てた子どもが有意に多かったものの、うま味に関しては他の味を挙げたり、何の味だかわからないと答えたりする子どもが少なくなかったとのこと。この結果から中西氏は、「うま味という味を理解していない子どもが少なくないというのが現状のようだ。うま味とはどんな味なのかを学びとる機会が少なくなっているのではないか」との考察を加えました。

このほかにも、食べものの好き嫌いが少ない子どもは五味を感じとれる割合が高いこと、この味覚体験を行う前後で緑茶を飲んだ時に感じとれる味が変化することなども、本研究の結果として示されました。同氏は、「好き嫌いなく食べること、または、好き嫌いがあってもバランスよく食べるという意識を持つことが、正しい味覚の獲得に寄与する可能性がある。味覚教育は、子どもたちの味覚認知と健全な食習慣と健康意識の形成に寄与する、有効な方法と考えられる」と結論づけています。

主催者総括

味の素(株)執行理事グローバルコミュニケーション部長 小笠原 和子 氏

味の素(株)執行理事グローバルコミュニケーション部長 小笠原 和子 氏

以上の報告のあと、味の素(株)執行理事グローバルコミュニケーション部長の小笠原和子氏が挨拶に立ち、同社の創業者である鈴木三郎助が事業の基盤を作ったのが横須賀であったという歴史を紹介し、「横須賀の地は私どもにとって原点であり、この地で行われるこのような連携に加わることはまさにご縁だと感じている」と語りました。そのうえで、サンプルサイズが1万以上の精緻な調査を継続していくことの意義に触れ、「男子と女子の成長ピークの違いによる体力への影響をはじめとする、国の調査では埋もれてしまうような重要な知見が得られていることに感銘を受けた。また中西先生のご発表にあったように、私どもが開発した5基本味の体験型キットが教育の場でも役立てられている手応えを感じた。今後とも一緒にデータを蓄積してまいりたく、協力させていただきたい」と総括しました。

閉会の挨拶

横須賀市教育委員会学校教育部長 坂下 雄一 氏

横須賀市教育委員会学校教育部長 坂下 雄一 氏

最後に、横須賀市教育委員会学校教育部長の坂下雄一氏が閉会の挨拶に立ち、「本報告会は、三者連携により取り組んだ成果を初めて皆様に報告する機会となった。コロナ禍以降、子どもたちの体力は一部の学年で回復の兆しがあるが依然として厳しい状況にあることや、体力や睡眠、生活習慣との関係、味覚の認識に関する現状などが報告され、味の素様による味覚教室は非常に有意義な学びの場となった。今後も、この三者による連携により産学官それぞれの強みを生かして研究・分析等を進め、より一層、子どもたちの体力向上、健康増進のために取り組んでいきたい」と述べ、閉会となりました。

横須賀市「子どもたちの体力向上・健康増進に係る研究成果報告会」

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関連情報

横須賀市児童生徒体力向上・健康増進に係る産学官連携協定公開成果報告会 2025

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