40~59歳のNCDリスク抑制につながる健康的な食生活は、適正体重の維持や米の摂取頻度と関連
非感染性疾患(NCD)のリスク抑制に有用な、栄養バランスの良い食事、朝食欠食の少なさ、野菜摂取という3要素で規定される「健康的な食生活」が、適正体重の維持につながる生活習慣や、米飯の摂取頻度の高さと関連していることが報告された。園田学園大学人間健康学部の木林悦子氏、兵庫県立大学環境人間学部の中出麻紀子氏が、兵庫県内の一般住民の食行動の調査結果を詳細に解析した結果であり、論文が「Nutrients」に掲載された。

中年の日本人の「健康的な食生活」は、どのような生活習慣に左右されている?
非感染性疾患(non-communicable disease;NCD)が世界各国で増加しており、国内においてもとくに中年期の成人にNCD罹患者が多く、個人の健康だけでなく医療経済への影響も増大している。NCDの多くは肥満が関連しており、肥満のリスクは食習慣が大きく関与している。例えば、栄養バランスの偏り、朝食欠食のほか、外食の利用、中食と呼ばれる調理済み食品の利用なども、一般的には肥満等につながる非健康的な食習慣とされる。実際、それら個々の習慣と肥満リスクとの関連を示した先行研究は少なくない。ただし、それらの習慣を統合して「健康的な食生活」か否かを評価したうえで、肥満リスクなどとの関連をモデル化して検討した研究は、これまでなされていない。
他方、アジア人は伝統的に米飯を主食としてきており、国内でも米飯を主食に主菜と副菜がそろっている食事スタイルの維持が「健康的な食生活」の典型的なパターンとされている。さらに、アジア以外でも例えば米国から、米の摂取量の多さが野菜摂取量の豊富なこと、脂質食品の摂取量が過剰でないことと関連しているというデータも報告されている。
これらを背景として木林氏らは、NCDのリスクの抑制につながると考えられる健康的な食生活と適正体重の維持の関連を、米飯摂取の役割を考慮に入れながら包括的に把握することを試みた。
仮説モデルとその検討手法について
研究ではまず、「健康的な食生活」に対して正の関連(好ましい関連)があると考えられる因子として、適正体重の維持にふさわしい生活習慣と米飯摂取という2項目を選定。また、健康的な食生活に対して負の関連(好ましくない関連)があると考えられる因子として、外食習慣と中食習慣という2項目を選定。これらの関連性を統合した仮説モデルを構築した(図1)。
このモデルの検証のため、平成28年度の兵庫県「ひょうご食生活実態調査」のデータが用いられた。健康的な食生活、適正体重の維持、米飯摂取、外食習慣、中食習慣は、上記の調査時の質問票への回答を基に、以下のようにスコア化して判定した。
健康的な食生活
バランスのとれた食事(主食〈穀類〉、主菜〈タンパク質〉、副菜〈野菜〉で構成されている食事)を1日に2回以上摂取する頻度が、週に6日以上は4点、週4~5日は3点、2~3日は2点、週1日以下は1点。
朝食摂取頻度が、週に6日以上は4点、週4~5日は3点、2~3日は2点、週1日以下は1点。
1日の野菜料理の摂取量が、5品以上は5点、4品は4点、3品は3点、2品は2点、1品以下は1点。
適正体重の維持
食事の際に、エネルギー量を調整する頻度が、「常に実践している」は4点、「(常にではないが)実践している」は3点、「あまり実践していない」は2点、「全く実践していない」は1点。
同様に、塩分を取り過ぎないようにする頻度、脂肪分の量と質を調整する頻度、甘いもの(糖分)を取り過ぎないようにする頻度、栄養成分表示ラベルの利用頻度、および、習慣的な運動の実施状況について、それぞれ1~4点の範囲で評価。なお、著者らの先行研究(詳細はこちら)では、減塩習慣がBMI抑制につながる可能性が示唆されている。
その他の関連が想定される因子
朝食、昼食、夕食それぞれにおける米飯の摂取頻度を、週7日は5点、5~6日は4点、3~4日は3点、1~2日は2点、0日は1点。
外食および中食の利用頻度をそれぞれ、1日2回以上は7点、1日1回は6点、週4~6回は5点、週2~3回は4点、週1回は3点、月1~3回は2点、0回は1点。
女性のほうが健康的な食生活だが、米飯の摂取頻度は男性のほうが高い
兵庫県内32地区から無作為に抽出された1,919世帯、4,747人のうち、中年の食習慣を調査するという本研究の目的から、40~59歳の649人を抽出。そのうちデータ欠落のない577人(男性44.2%)を解析対象とした。
性別で比較すると、肥満は男性に多く低体重は女性に多いという有意差があったが、年齢層や居住形態は差がなかった。
健康的な食生活のスコアは、性別の比較では女性が有意に高く(p<0.001)、年齢層での比較(40代 vs 50代)では、50代のほうが有意に高かった(p=0.010)。適正体重の維持のスコアも同様に、女性(p<0.001)および50代(p=0.014)が有意に高かった。
米飯の摂取頻度のスコアは、男性のほうが高く(p=0.020)、年齢層での比較に関しては有意差がなかった。同様に外食頻度のスコアも、男性のほうが高く(p<0.001)、年齢層での比較では有意差がなかった。
中食の摂取頻度のスコアに関しては、性別および年齢層別の比較のいずれも有意差がみられなかった。
なお、いずれのスコアについても、性別と年齢層との間に有意な交互作用は認められなかった。
中年の日本人のNCD予防に、適正体重の維持と米飯摂取が寄与している可能性
予め、適正体重の維持と米飯摂取頻度に有意な相関がないことを確認後、GFI(Goodness of Fit Index)、RMSEA(Root Mean Square Error of Approximation)、AIC(Akaike’s Information Criterion)などのモデル適合指標を用いた検討の結果、健康的な食生活に有意な関連が示されなかった外食の頻度を除外することで、許容範囲の適合度が確認された。(図2)。
著者らは本研究が兵庫県内のみの横断調査の結果に基づく検証であること、米飯の精製度を考慮していないこと、教育歴や世帯収入などの交絡要因の存在が考えられることなどを限界点として挙げている。
そのうえで、得られた結果を「適正体重の維持のスコアと米飯摂取頻度のスコアは、男性・女性ともに、健康的な食生活のスコアと正の関連が認められ、男性においてのみ、中食の摂取頻度のスコアが健康的な食生活のスコアと負の関連が認められた」と総括。論文の結論には、「中年の日本人において、NCD予防のための適正体重維持が健康的な食生活に寄与する可能性があり、米飯の摂取がその役割の一部を担っている可能性が示唆された」と述べられている。
文献情報
原題のタイトルは、「Healthy Diets Are Associated with Weight Control in Middle-Aged Japanese」。〔Nutrients. 2025 Oct 8;17(19):3174〕
原文はこちら(MDPI)







熱中症予防情報
SNDJユニフォーム注文受付中!

