スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

遅い時間の夕食が蛋白尿のリスクとなる集団の特徴が明らかに BMIが高くない男性で有意な関連

夕食を遅い時間帯に摂る習慣が、腎臓病でない人の蛋白尿の有病率と関連していることが報告された。有意な関連は、とくにBMIが高くない男性に認められるという。りんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)腎臓内科の村津淳氏らが行った横断研究の結果であり、「Frontiers in Endocrinology」に論文が掲載された。

遅い時間の夕食が蛋白尿のリスクとなる集団の特徴が明らかに BMIが高くない男性で有意な関連

夕食を遅く食べる習慣が腎臓に及ぼす影響は、BMIによって異なる?

夕食を摂取する時間が遅いという生活習慣が、肥満や2型糖尿病などのリスクと関連していることが知られている。肥満や2型糖尿病は蛋白尿のリスク因子であるが、遅い時間の夕食は、肥満や2型糖尿病を介さずに蛋白尿リスクを高める可能性も示されている。

一方、BMIと蛋白尿リスクとの関連はJ字型であり、BMIが高いことと低いことの双方が、そのリスクを高めるという報告がある。さらに、村津氏らの先行研究では、遅い時間の夕食摂取と並ぶ非健康的な食習慣とされる「朝食欠食」と蛋白尿リスクとの関連が、BMIが低いほど強固であることが示されている。これらから、食習慣による蛋白尿リスクへの影響は、BMIの高低によって異なる可能性が想定される。

以上を背景として村津氏らは今回、腎疾患のない集団において、遅い時間に夕食を摂取するという習慣と蛋白尿の有病率との関連を、BMIを考慮に入れて検討を行った。

2,000人強の健診受診者のデータを横断的に解析

解析対象は、2019年10月~2024年4月にりんくう総合医療センターで健診受診者から、腎機能低下(eGFR60mL/分/1.73m2未満)、腎疾患の既往、およびデータ欠落のある人を除外した2,127人(男性48.3%)を対象とした。

生活習慣に関する質問票の回答を基に、就寝前2時間以内に夕食を摂取する頻度が週3日以上の場合を「遅い時間の夕食摂取習慣あり」と定義した。蛋白尿については試験紙法で±以上と定義した。なお、試験紙法で±となる状態は、腎疾患および心血管疾患のリスクが上昇し始める、微量アルブミン尿レベル以上と考えられる。

解析は性別に行った。

男性の非肥満者では、遅い時間の夕食が蛋白尿のリスクの可能性

男性は平均年齢55±14歳で、BMIに基づき、22.3未満(32.4%)、22.3~24.9(30.4%)、24.9超(31.3%)の3群に層別化した。それら各群において、遅い時間の夕食摂取習慣がある割合は、24.9%、25.6%、36.3%だった。また、尿蛋白が±以上の割合は同順に、6.2%、6.7%、7.6%だった。なお、eGFRは各群の平均が約74~76mL/分/1.73m2の範囲であり、有意差はなかった。

遅い時間の夕食摂取習慣と蛋白尿の有病率との関連は、交絡因子(年齢、体重、喫煙・飲酒習慣、睡眠満足度、高血圧・糖尿病・脂質異常症・心血管疾患の既往歴など)を調整後、BMIを考慮しない場合はオッズ比(OR)2.39(95%CI;1.42~4.03)と有意であり、夕食を就寝間際に摂取することが蛋白尿のリスクであることが示唆された。

次に、これを上記のBMIカテゴリー別にみると、BMI22.3未満ではOR3.57(1.34~9.48)、BMI22.3~24.9ではOR3.15(1.22~8.13)であり、この2群はいずれも、夕食を就寝間際に摂取することが蛋白尿のリスクとなっている可能性が示された。それに対してBMIが24.9超の群はOR1.75(0.74~4.15)であり、関連が非有意だった。

以上から、肥満でない(BMI25未満)男性が、遅い時間に夕食を摂取することは蛋白尿のリスクであると考えられた。

女性はBMIにかかわらず有意な関連なし

女性は平均年齢54±14歳で、BMIに基づき、20.3未満(34.9%)、20.3~23.0(31.0%)、23.0超(34.1%)の3群に層別化した。それら各群において、遅い時間の夕食摂取習慣がある割合は、13.3%、15.8%、18.9%だった。また、尿蛋白が±以上の割合は同順に、3.9%、1.8%、4.5%だった。eGFRは各群の平均が約76~78mL/分/1.73m2であり、有意差はなかった。

遅い時間の夕食摂取習慣と蛋白尿の有病率との関連は交絡因子を調整後、BMIを考慮しない場合、OR1.65(0.76~3.57)と非有意だった。さらにBMIカテゴリー別にみても、すべての群で有意な関連は観察されなかった。

以上から、女性はBMIにかかわらず、夕食を就寝間際に摂取する習慣と蛋白尿リスクとの関連はみられなかった。

BMIが基準値以下の男性の心腎疾患予防には、遅い時間の夕食の是正を

これらの結果について論文では先行研究からの知見を参照し、以下のような考察が述べられている。

まず、遅い時間の夕食摂取が蛋白尿リスクとなるメカニズムについては、就寝前の摂食により夜間睡眠中、血糖値が高い状態が続き、高血糖に伴う酸化ストレスなどを介した腎臓への負荷増大が考えられるという。また、女性ではこの影響が有意でない点については、本研究の対象において女性は夕食を遅い時間に摂取する習慣のある割合、および蛋白尿有病率が低く、関連性を見いだすには検出力が不十分であった可能性があること、加えて閉経前女性ではエストロゲンによりインスリン感受性が保たれ夜間の高血糖が抑制され、腎臓に対して保護的に働くというメカニズムも想定されるとしている。

そして、男性においてBMIがおおむね基準範囲以下の群でこの関連が有意であり、肥満者では有意でないことについては、肥満者で認められる腎機能への影響とは異なるメカニズムの関与が示唆されるとして、例えば、非肥満者の中には肥満者よりもβ細胞機能が低下していて食後の血糖変動が激しい一群が含まれているのではないかと述べられている。

本研究により、BMIが高くなく腎疾患のない男性では、遅い時間に夕食を摂るという習慣が、微量アルブミン尿以上の尿蛋白が現れている状態と有意な関連のあることが明らかになった。横断研究のため因果関係は不明だが、BMIが高くない男性は、夕食摂取時間に注意を要することが示唆された。

微量アルブミン尿は、腎機能低下や心血管疾患の早期マーカーと位置づけられている。著者らは、本研究が単施設のデータに基づく解析であること、蛋白尿リスクに影響を及ぼし得る薬剤、栄養素摂取量、夜間シフト勤務などを考慮していないことなどを限界点として挙げたうえで、「非肥満男性の遅い時間の夕食摂取習慣と蛋白尿の関連を示すエビデンスであり、腎疾患・心血管疾患予防のための公衆衛生戦略の策定に有用な知見が得られた」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Lower body mass index potentiates the association between late-night dinner and the prevalence of proteinuria」。〔Front Endocrinol (Lausanne). 2025 Nov 10: 16:1683354.〕
原文はこちら(Frontiers Media)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2025後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ