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BMIが低いほど「朝食欠食者に蛋白尿陽性者が多い」という関係がより顕著 国内健診データの解析

BMIが低い人ほど、朝食欠食によって蛋白尿が出現しやすくなる可能性を示唆するデータが報告された。りんくう総合医療センター腎臓内科の村津 淳氏らの研究の結果であり、「Frontiers in Endocrinology」にこのほど論文が掲載された。

BMIが低いほど「朝食欠食者に蛋白尿陽性者が多い」という関係がより顕著 国内健診データの解析

朝食欠食と蛋白尿の関係と、BMIと蛋白尿との関係を、組み合わせて検討

朝食の欠食が健康に良くないことは広く知られている。朝食欠食の悪影響の一つとして、蛋白尿のリスクを押し上げる可能性が指摘されている。蛋白尿は、単に腎機能低下のリスク因子であるだけでなく、心血管イベントや全死亡に対して、腎機能低下とは独立してリスクとなり得ることも明らかになっている。

そのような蛋白尿は、糖尿病などの腎機能に及ぼし得る疾患の有無にかかわらず、肥満者では多くみられることも知られている。しかしその一方で、低体重者にも無症候性蛋白尿が少なくないことが、国内で実施された健診受診者データの解析結果として報告されている。

つまり、「朝食欠食者には蛋白尿陽性者が多い」こと、そして「蛋白尿リスクは肥満者だけでなく低体重者もリスクが高い」ことは、既にわかっている。では、「朝食欠食者では蛋白尿陽性者が多いという関係は、BMIの高低によって異なるのだろうか?」という疑問が沸く。村津 淳氏らの研究は、このような背景のもとで実施された。

仮に、BMI高値または低値では、朝食欠食による蛋白尿リスクへの影響がより高く現れるということであれば、朝食欠食者と慢性腎臓病(CKD)患者の増加が問題となっている今日、公衆衛生施策に与えるインパクトは小さなものではない。

参考情報
朝食・夕食を食べない女性は蛋白尿のリスクが高い 大阪大学職員の健診データを解析

健診受診者2.7万人のデータを横断的に解析

この研究は、2008年4月~2018年12月に市中病院で健診を受診した、一般住民3万3,216人のデータを用いた横断研究として実施された。腎機能低下(eGFR60mL/分/1.73m2未満)、腎疾患既往者、および解析に必要なデータが欠落している人を除外し、2万6,888人(80.9%)を解析対象とした。

朝食摂取習慣を含めて、喫煙・飲酒・運動・睡眠習慣などは、健診時の自記式アンケートにより把握した。また蛋白尿は、スポット尿サンプルの試験紙法で1+以上の場合と定義した。

男性の21%、女性の14%が朝食を欠食

解析対象者2万6,888人のうち男性は1万5,875人(59.0%)で、そのうち朝食欠食者は3,306人(20.8%)であり、蛋白尿陽性者は643人(4.1%)だった。一方、女性は1万1,013人中1,514人(13.8%)が朝食欠食者で、蛋白尿陽性者は387人(3.5%)だった。

男性、女性ともに、朝食欠食者は年齢が若く、疾患有病率が低く、喫煙者率が高く、エタノール換算1日60g以上の飲酒者が多く、また、間食や遅い時間帯に夕食を摂取する習慣のある人が多く、運動習慣のある人は少なかった。

朝食欠食はやはり蛋白尿陽性率と有意に関連

ロジスティック回帰分析の結果、朝食欠食は、男性、女性ともに、以下に示すように蛋白尿陽性率と有意な関連が認められた。まず、交絡因子未調整モデルでは、男性ではOR1.72(95%CI;1.45~2.05)、女性ではOR2.17(同1.72~2.75)だった。

蛋白尿出現リスクに影響を及ぼし得る交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、間食・就寝前の夕食摂取習慣、睡眠時間、空腹時血糖値、現在の糖尿病・脂質異常症・高血圧・高尿酸血症・脳卒中・冠動脈疾患の治療など)を調整したモデルでも、男性がOR1.36(95%CI;1.13~1.64)、女性はOR1.79(同1.38~2.31)であり、やはり有意な関連が認められた。

BMIが低い人では、朝食欠食と蛋白尿陽性率の関係がより強固

次に、本研究の主題である、朝食欠食による蛋白尿リスクへのBMIによる影響を検討するため、男性、女性ごとにBMIの三位分(33パーセンタイルと66パーセンタイル)で3群に分けたうえで比較検討した。

男性での検討:BMI第1三分位群でのみ、有意な関係が示される

前記の交絡因子調整モデルで検討した結果、男性のBMI第1三分位群(BMI22.2未満)ではOR1.66(1.16~2.37)であり、朝食欠食者で蛋白尿陽性率が高いという有意な関係が引き続き認められた。一方、第2三分位群(BMI22.2~24.5未満)はOR1.15(0.76~1.73)であり、有意性がみとめられなかった。同様に第3三分位群(BMI24.5以上)もOR1.29(0.98~1.68)で非有意だった。

女性での検討:BMI第1・第2三分位群で有意な関係が示される

一方、女性では、交絡因子調整モデルで、第1三分位群(BMI19.3未満)ではOR1.94(1.31~2.87)であり、朝食欠食と蛋白尿陽性率との有意な関係が認められ、さらに第2三分位群(BMI19.3~21.6未満)もOR1.79(1.08~2.96)と有意な関係が認められた。第3三分位群(BMI21.6以上)はOR1.45(0.89~2.34)で非有意だった。

腹囲長での検討や糖尿病症例を除外した検討でも同じ結果

なお、BMIのかわりに腹囲長の三分位で層別化して検討すると、男性、女性ともに第1・第2三分位群で、朝食欠食者で蛋白尿陽性率が高いという有意な関係が認められた。また、糖尿病症例を除外して行った解析の結果も、ほぼ上記と同様だった。

「朝食を欠かさない」という栄養指導がより重要に

以上の結果を基に論文の結論は、「朝食を抜くことと蛋白尿陽性率の高さとの関係は、低BMIおよび低腹囲長の集団でより強く認められた」とまとめられている。ただし、横断研究であるため、BMIの高低によって朝食欠食による蛋白尿有病率が変化することの因果関係は不明。そのため「無作為化比較試験による検証が求められる」と述べている。

朝食欠食と蛋白尿出現の関連のメカニズム

今回の研究でわかったことは以上だが、朝食欠食者で蛋白尿陽性率が高い理由や、なぜやせている人でそのリスクがより高い可能性があるのかという点が気になる。論文ではそれらのメカニズムについて、「本研究のみでは不明」としたうえで、既報研究を参考に以下のような考察が述べられている。

まず、朝食欠食により、昼食時にセカンドミール効果が生じず、昼食後に血糖スパイクがより急峻になっている可能性の影響が考えられるという。食後の急峻な高血糖が血管内皮機能やアルブミン尿出現のリスクであることを示唆する論文があるとのことだ。また、BMIが低いほど血糖変動が大きいことを示した報告もあるとしている。加えて、絶食時間が長くなることで脂肪分解が亢進して遊離脂肪酸レベルが上昇し、そのような経路でも内皮機能が低下する可能性も述べられている。

二つ目の疑問である、なぜBMIが低い人ほど、朝食欠食との関連が強く認められるのかという点については、BMIが高い場合はそのこと自体が蛋白尿出現のリスクであるため、朝食欠食の影響が強く現れにくい可能性が考えられるという。そして、「低BMIの人にみられる蛋白尿は、肥満者でみられる蛋白尿とは全く異なる病態生理により生じた糸球体病変を反映している可能性がある」としている。

解明すべきテーマは多く残されているが、今回の研究発表によって、「朝食の大切さ」を強調する栄養指導が、よりいっそう重要になったことは間違いなさそうだ。

文献情報

原題のタイトルは、「Lower body mass index potentiates the association between skipping breakfast and prevalence of proteinuria」。〔Front Endocrinol (Lausanne). 2022 Aug 19;13:916374〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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