学生アスリートの腸内環境が機能性食品で改善 “腸活”によるパフォーマンス向上に期待
アスリートはタンパク質過多の食事と高強度の運動が原因で腸内環境が乱れやすいが、機能性食品(グアー豆食物繊維・カシス抽出物)の摂取により腸内環境が改善することが報告された。太陽化学株式会社、摂南大学、京都府立医科大学、森下仁丹株式会社の研究グループの成果であり、「Microorganisms」に論文が掲載され、プレスリリースが発表された。腸内環境が悪い選手ほど、機能性食品の効果がとくに大きいという。
腸の負担が増えやすいというアスリート特有の課題を機能性食品で解決できないか?
近年、腸内細菌がヒトの健康にさまざまな影響を与えることが明らかになりつつあり、アスリートの腸内細菌叢にも注目が集まっている。摂南大学の研究チームによる先行研(詳細はこちら)では、ラグビー部員88人の腸内環境を調査した結果、多くの学生アスリートでは一般成人と比べて悪玉菌が多く、それらが作るコハク酸(悪い物質)が腸内に蓄積する傾向があることが明らかにされた。
こうした腸内環境の悪化の背景には、タンパク質や炭水化物の摂取を重視するあまり、食物繊維の摂取が不足しがちであること、さらに、身体接触を伴う高強度な運動によって腸内に酸化ストレスがかかりやすいことが考えられる。
このような状況を踏まえ、同研究チームでは、学生アスリートの栄養改善による健康・パフォーマンスのさらなる向上に向けた研究を継続的に行ってきた。本研究では、太陽化学、森下仁丹の協力のもと、学生アスリートの腸内環境を改善するための食事介入試験を実施した。
研究では、上記のような学生アスリート特有の問題に着目し、水溶性食物繊維「グアー豆食物繊維」と、抗酸化物質を豊富に含む「カシス抽出物」を4週間摂取することで、腸内環境にどのような変化が起こるかを検証した。なお、本研究は、腸内環境への効果をより厳密に評価するため、二重盲検試験※2という科学的信頼性の高い試験手法を採用した点も、大きなポイント。
グアー豆食物繊維、カシス抽出物で善玉菌が増えて短鎖脂肪酸も有意に増加
実験の結果、グアー豆食物繊維またはカシス抽出物、あるいはその両方を摂取した被験者では、善玉菌として知られるビフィズス菌(Bifidobacterium属細菌)や、有用物質である「酪酸」を産生するMegasphaera属細菌が有意に増加するなど、腸内環境の改善を示す結果がみられた。また、試験開始時に腸内環境が悪かった被験者に絞った層別解析では、より顕著な改善効果が確認された。
これらの被験者では、機能性食品の摂取により、酪酸などを産生し腸のバリア機能維持に貢献するFaecalibacterium属細菌や、腸内のコハク酸蓄積解消に貢献し得るPhascolarctobacterium属細菌といった有用菌が増加した。加えて、腸内環境改善の重要な指標である有用物質「短鎖脂肪酸」の総量も有意に増加した。
図1 研究の概要
今回の結果は、グアー豆食物繊維およびカシス抽出物が、とくに腸内環境が乱れている学生アスリートの腸内環境を改善し、腸の健康を促進する有効な機能性素材となり得ることを示している。また、摂南大学などによる別の先行研究(詳細はこちら)では、長距離ランナーでも同様の腸内環境の悪化が報告されており、本研究の成果はラグビー選手にとどまらず、高強度のトレーニングを行う幅広いアスリートに応用できる可能性がある。
プレスリリース
学生アスリートの腸内環境が機能性食品で改善-“腸活”によるパフォーマンス向上に期待-(太陽化学株式会社)
文献情報
原題のタイトルは、「Effects of Blackcurrant Extract and Partially Hydrolyzed Guar Gum Intake on Gut Dysbiosis in Male University Rugby Players」。〔Microorganisms. 2025 Jul 2;13(7):1561〕
原文はこちら(MDPI)