スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

WADAが“ドーピングOK”の競技会に警鐘 アスリートへの重大な脅威であり若者への悪影響と倫理崩壊を危惧

薬物の使用や医療処置の利用を許容する競技会「Enhanced Games」(強化された大会)の開催が決定したことに対し、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)およびWADAアスリート評議会は22日、これを非難する声明を発出した。

WADAが“ドーピングOK”の競技会に警鐘 アスリートへの重大な脅威であり若者への悪影響と倫理崩壊を危惧

ドーピングし放題、むしろ推奨する世界大会が来年5月開催

報道によると、薬物や医療処置の利用を可とし、むしろその利用を推奨する「Enhanced Games」と称する国際競技会が2026年の5月21~24日の4日間にわたり、米国・ラスベガスで開催されることが決定した。競技は陸上、競泳、重量挙げが予定されており、競泳については既に、世界選手権のメダリストも参加を表明している。主催者らはこの競技会を、「スポーツと科学の革命」、「人体の潜在能力を解放する試み」などと喧伝し、医薬品の開発促進、健康長寿の推進につながり得ると表明している。

これに対して、さまざまな団体・個人が、アスリートの身体的健康・安全性、そして、アスリートを中心にスポーツ界が目指す高い精神性への悪影響などの懸念を指摘している。世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)アスリート評議会は、この競技会の計画が発表されて以降、積極的に介入することでかえってこの競技会への注目度が高まるリスクを考慮し、これまで表立った反対活動をしていなかった。しかしこのたび開催の詳細が決定したことを受けて、明確な非難声明を発出した。

声明はWADAによるものと、WADAアスリート評議会によるものが出されている。以下はそれらの要約。

強化大会(Enhanced Games)は危険かつ無責任

WADAは、いわゆる「強化大会」を危険かつ無責任な概念として非難する。

WADAの最優先事項は、アスリートの健康と幸福である。この大会は、娯楽やマーケティング目的で、アスリートによる薬物・その他の使用を推進しようとするものであり、明らかにWADAの優先事項を脅かすものだ。禁止薬物の使用によって深刻で長期的な副作用に苦しむアスリートの例は数多くあり、なかには死亡したアスリートの例も存在する。

これは、世界中のすべてのアンチ・ドーピング機関と各国政府、とくに開催が予定されている米国が団結して対応すべき事態である。我々は、アスリートを含むすべてのクリーンスポーツパートナーに向けて、影響力のある支持者がいるか否かにかかわらず、このイベントを非難するために、ともに立ち上がるよう呼びかける。

ラスベガスでのイベント計画が明らかになって以降、主催者の狙いは、自社製品の販売促進や、その使用に伴うリスクを軽視しようとするものであることが明らかになっている。エリートアスリートが、自身のプロフィールを利用して、禁止薬物や潜在的な危険性のある薬物の使用の推奨に加担することは、有害な行為である。

WADAは、世界アンチ・ドーピング規程(コード)の規制対象となるスポーツへの参加を希望するアスリートおよびサポートスタッフに対し、強化大会への参加は、コードに定められた規則違反のリスクを伴うことを警告する。また、世間の評判という、ドーピングとの関連が永遠に社会に記憶されるリスクを背負うことになる。

WADAは、正当なスポーツの公正性を守るため、各地のアンチ・ドーピング機関に対し、本大会の開催前、開催中、そして開催後に、関与した選手の検査を実施するよう奨励する。また、WADAはアスリート評議会と緊密に連携し、選手がリスクについて十分に理解できるよう努めていく。WADAはまた、すべての政府と法執行機関に対し、パフォーマンス向上薬の使用を認めた選手、あるいはそうした薬物を供給または投与する医師が、自国であれ競技会の開催地であれ、刑法や職業規則に違反している可能性があるかどうかを評価するよう求めている。

スポーツの美しさと人気は、クリーンでフェアな競技という理想に基づいている。これらの価値観は守られなければならない。アスリートは模範となる存在であり、WADAは今回の出来事が、世界中の若者に危険なメッセージを送っていると考える。

WADAアスリート評議会は強化大会に強く反対する

WADAのアスリート評議会(Athlete Council;AC)として我々は、アンチ・ドーピングに関するアスリートの声を代表し、支援し促進している。ACはまた、アスリートによって選出されたアスリートがWADAの統治機関において重要なポストに就くための場でもある。この立場から我々は、クリーンなスポーツと世界中のアスリートを脅かす問題、すなわち、昨日(5月21日)発表された、2026年5月に米国ネバダ州ラスベガスで開催される強化大会(Enhanced Games)について言及したい。

2024年初頭、アスリートによるパフォーマンス向上のための物質や方法の使用を奨励する多種目競技大会「強化大会」の開催に関する報道が初めて行われた。ACは当時、早すぎる介入によって、正当性に欠けクリーンなスポーツへの脅威となるプロジェクトへの注目が、意図せず高まってしまうリスクを考慮して、公式声明を出さないことを選択した。

しかし今、ACは、強化大会、およびパフォーマンス向上のための物質や方法の使用を促進するあらゆるイベントに、断固反対することをここに表明する。これらの大会は、数十年にわたる医学的エビデンスと、ドーピングの被害を受けたアスリートたちの実体験を無視した、危険な概念である。このようなイベントは、アスリートを深刻なリスクにさらし、スポーツの中核的価値を根本的に損うものだ。このようなイベントを奨励することは、無責任であり容認できるものでない。したがって、ACはWADAと協力し、アスリートがこのイベントに伴うリスク、つまりアスリートの健康と幸福だけでなく、スポーツ選手のキャリアにも影響を与えるリスクについて、アスリートに情報を提供していく。

我々は、クリーンなスポーツを推進する者として、いかなるアスリートにも、今大会に参加しないことを強く推奨する。

公正な競争とアスリートの幸福を信じるすべてのアスリートは、ぜひ声を上げてほしい。今こそ、アスリートを守り、スポーツが安全で、誠実、そして敬意に満ちたものであり続けるよう、我々はこれまで以上に団結して尽力しなければならない。

関連情報

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2025前期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ