ビタミンDの充足度が日本人高校生アスリートの筋力と相関 1,000IUのサプリ摂取が必要な可能性
国内の高校生アスリートを対象とする横断研究から、血清ビタミンDレベルと筋力との関連を示す結果が報告された。さらに、6カ月にわたり1,000IUのサプリメントを摂取するという介入により、ビタミンDレベルが上昇し、かつ筋力上昇にもつながり得ることが示された。専門学校健祥会学園の武田英二氏らの研究であり、論文が「The Journal of Medical Investigation」に掲載された。
日本人若年アスリートのビタミンD不足/欠乏の実態と影響を探る
ビタミンD(VD)は、古くは骨代謝に関連する栄養素として位置付けられていたが、近年は免疫や筋肉機能など、さまざまな機能にとっても重要な栄養素であると理解されるようになっている。実際、VDの受容体は筋肉にも多数発現していて、リン脂質代謝の調節や筋肉の収縮に関与していることが知られている。
VDは世界的に不足している人の多い栄養素であり、日本人でも50~70%が不足または欠乏状態にあると報告されている。VD不足により筋力の低下が生じる可能性があり、既に高齢者のサルコペニアとの関連で精力的に研究されている。その一方、若年アスリートにおけるVD不足の実態は不明点が少なくない。
これを背景に武田氏らは、国内の高校生アスリートを対象とする横断研究により、ビタミンD不足の実態と筋力との関連を検討。あわせてサプリメントを用いた介入効果を検討した。
横断研究:高校生アスリートのVD不足の有病率と筋力との関連が明らかに
VDが充足している割合は3割足らず
研究参加者は、高校生アスリート21人(男子6人、女子15人)。大半の生徒が1回90~120分、週5日のトレーニングを行っていた。
血清25-ヒドロキシビタミンD [25(OH)D]が30ng/mL超を「充足」、21~30ng/mLは「不足」、20ng/mL未満は「欠乏」と定義すると、充足は6人(28.6%)、不足/欠乏が71.4%であり、前者の群の25(OH)D中央値は35.8ng/mL(四分位範囲33.0~38.9)、後者は同24.2ng/mL(22.3~27.0)だった。
2日間の食事記録から算出したエネルギー摂取量や水分摂取量は、VD充足群と不足/欠乏群との間に有意差がなかった。
不足/欠乏群はピークパワーが低く、女子ではVDレベルと総仕事量が相関
筋力パフォーマンスは、無酸素性パワーや筋持久力を評価するウィンゲートテスト、下肢筋力を評価するカウンタームーブメントジャンプ、および握力で評価した。
VD充足群と不足/欠乏群を比較すると、ウィンゲートテストにおけるピークパワーが、充足群は440W(415~535)、不足/欠乏群は393W(367~431)であり、前者が高い傾向にあった(p=0.056)。性別に解析した場合も、女子において全体解析と同様の傾向が認められた(p=0.078)。
さらに女子では、血清25(OH)D値と総仕事量との間に有意な相関が認められた(rs=0.637、p=0.011/体重換算値ではrs=0.515、p=0.049)。
介入研究:6カ月のサプリ摂取でVDレベルが上昇し、筋力向上
次に、毎日1,000IUのVDサプリを6カ月間摂取するという介入研究が行われた。
介入前の血清25(OH)Dのベースライン値は、全体で27.0ng/mL(22.9~32.1)、性別では男子は27.3ng/mL(21.1~33.7)、女子は26.6ng/mL(23.7~29.9)だった。介入6カ月後には同順に、37.9ng/mL(28.9~40.9)、35.4ng/mL(27.3~39.7)、38.5ng/mL(29.3~43.3)であり、それぞれ有意に上昇していた(全体と女子はp<0.001、男子はp<0.05)。
介入後に無酸素パワーやピークパワーが有意に上昇
介入前後で骨格筋量の有意な変化はみられなかったが、ウィンゲートテストの一部の指標に、以下のような有意な変化が認められた。
全体解析では、無酸素パワー(580W〈509~678〉から598W〈556~798〉、p<0.001)とピークパワー(386W〈301~425〉から396W〈367~472〉、p<0.05)が有意に上昇していた。性別の解析では、男子はピークパワー(441W〈386~495〉から480W〈459~601〉、p<0.05)、女子は無酸素パワー(550W〈485~582〉から573W〈532~598〉、p<0.01)が向上していた。
高校生アスリートには1日1,000IUのVDサプリが推奨される可能性
本研究により、日本人高校生アスリートの間でビタミンD不足/欠乏が少なくないこと、サプリメント摂取によりそれが充足されるとともに、筋力が向上する可能性のあることが明らかになった。著者らは、「本研究の結果は、とくに成長期の健康効果という観点から、ビタミンDの重要性を強調するものと言える」と述べている。
限界点としては、サンプルサイズが小さいこと、栄養素摂取量を想起法に基づき評価していること、および介入研究で対照群を設けていないことなどが挙げられるが、論文の結論には、「高校生アスリートのパフォーマンスを最適化するために、通常の食事摂取に加えて1,000IUのビタミンDサプリメントを摂取することを推奨すべきかもしれない」と記されている。
文献情報
原題のタイトルは、「Effects of vitamin D on muscle mass and function in high school athletes」。〔J Med Invest. 2025;72(1.2):167-171〕
原文はこちら(J-STAGE)