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プロバイオティクスの体組成、運動誘発性筋損傷後の回復、パフォーマンスに及ぼす影響のメタ解析

アスリートのプロバイオティクス摂取に関する、システマティックレビューとメタ解析の結果が報告された。体組成とVO2maxなどに対する有意な影響が認められるものの、エビデンスの確実性は低~中等度であり、さらなる研究が求められると述べられている。

プロバイオティクスの体組成、運動誘発性筋損傷後の回復、パフォーマンスに及ぼす影響のメタ解析

アスリートにとってプロバイオティクスはどんな効果を期待できる?

ヨーグルトや納豆、味噌などの発酵食品に豊富なプロバイオティクスは、腸内細菌叢の改善を介して、免疫能の調整、便秘をはじめとする消化器症状の改善のほか、近年ではメンタルヘルスへの関与なども示唆され始めている。また、アスリートにとっても、栄養素吸収の改善、感染症罹患リスク低減、消化器症状抑制などとともに、パフォーマンス向上につながるとする研究報告も増えている。

今回取り上げる論文は、最もエビデンスレベルの高い研究手法と位置づけられている、システマティックレビューとメタ解析により、アスリートにおけるプロバイオティクス摂取の影響を検討した結果の報告。イランとイラクの研究者によるもの。

エビデンスは限定的ながら、体組成、筋損傷後の回復、VO2maxに有意な影響

システマティックレビューとメタ解析のための優先レポート項目(PRISMA)に準拠して、PubMed/Medline、Scopus、Web of Science、Google Scholarのスタートから2024年5月までに収載された論文を対象とし、言語や期間を制限せずに文献検索を行った。包括条件は、18歳以上を対象に何らかのプロバイオティクスによる介入を行い対照条件と比較した並行群間試験またはクロスオーバー試験であり、効果量の算出に十分なデータが公開されている研究。除外基準は、横断研究、レビュー、基礎実験、対照条件のない研究、18歳未満対象の研究など。

一次検索で1,827報がヒットし重複削除後の980報を2名の研究者が独立して、タイトルと要約に基づきスクリーニングを実施し、460を全文精査の対象とした。採否の意見の不一致は3人目の研究者を含めた討議で合意を得た。

最終的に35件の研究報告をメタ解析の対象として抽出。研究参加者数は合計1,336人で、うち680人がプロバイオティクス介入条件、656人が対照条件だった。なお、研究参加者はアスリートに限定されていないが、トレーニングを行っている集団とそうでない集団とに層別化したサブグループ解析が行われている。

体重や体組成への影響

BMI

15件の研究(介入群372名、対照群338名)でBMIへの影響が検討されていた。すべての研究が有意な影響を報告しておらず、メタ解析の結果も非有意であり、研究間の異質性はみられなかった(加重平均差〈weighted mean difference;WMD〉0.009〈95%CI;-0.13~0.14〉、p=0.899、異質性〈I2〉=0.0%)。

体重

プロバイオティクス補給の体重への影響は、19の効果量を含む16件の研究で検討されていた。メタ解析の結果、プロバイオティクス摂取後の有意な体重減少が認められたが、中程度の異質性がみられた(WMD-0.55kg〈-0.98~-0.13〉、p=0.010、I2=65.2%)。

サブグループ解析では、介入期間が6週間を超える研究、女性または男性と女性を対象とした研究、過体重または肥満に該当する30歳以上での研究、およびトレーニングを行っていない対象での研究で、有意な体重減少が認められた。

体脂肪率

体脂肪率への影響は、25の効果量を含む20件の研究で検討されていた。メタ解析の結果、プロバイオティクス摂取後の有意な体脂肪率の低下が認められたが、異質性もみられた(WMD-0.46〈-0.83~-0.09〉、p=0.014、I2=61.6%)。

サブグループ解析では、年齢が30歳以下で介入前のBMIが標準的な個人、単一のプロバイオティクスを用い介入期間が6週間未満の研究で、有意な体脂肪率の低下が認められた。

除脂肪体重

17の効果量を含む13件の研究のメタ解析の結果、プロバイオティクス摂取は除脂肪体重に有意な影響を及ぼしていなかった(WMD0.11kg〈-0.23~0.47〉、p=0.508)。また、研究間の異質性が高かった(I2=78.2%)。

サブグループ解析では、男性およびトレーニングを行っている集団では、除脂肪体重の有意な増加が示された。

運動誘発性筋損傷後の回復への影響

37件の効果量のメタ解析により、プロバイオティクス摂取はクレアチンキナーゼ(creatine kinase;CK)の有意な低下と関連していた(WMD=-47.57IU/L〈-65.12~-26.02〉、p=0.000)。ただし、高い異質性が観察された(I2=96.9%)。サブグループ解析では、BMIが正常範囲の男性においてCKが低下し、とくに運動直後と運動後3時間の値の抑制作用が示された。

一方、乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase;LDH)やミオグロビン(myoglobin;MB)に関しては、有意な影響がみられなかった。

VO2maxへの影響

11の効果量を含む10件の研究のメタ解析から、プロバイオティクス摂取により最大酸素消費量(VO2max)が有意に上昇していた(WMD=1.55mL/kg/分〈0.61~2.49〉、p=0.001)。ただし、研究間の異質性が高かった(I2=93.2%)。

サブグループ解析からは、トレーニングを行っている集団や介入期間が6週間未満の研究で有意な影響が観察された。

論文の結論は、「このメタ解析から、プロバイオティクスの摂取が、体組成、筋損傷後の回復、VO2maxに有意な影響を与えることが示唆された。ただし、エビデンスの確実性は限定的であり、より広範かつ綿密にデザインされた研究が求められる」と総括されている。

文献情報

原題のタイトルは、「The effects of probiotic supplementation on body composition, recovery following exercise-induced muscle damage, and exercise performance: A systematic review and meta-analysis of clinical trials」。〔Physiol Rep. 2025 Apr;13(8):e70288〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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