HMBサプリは筋肉量と筋力の向上に有用で、特に高齢者に恩恵が大きい可能性 アンブレラレビュー
β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)の体組成と筋力への影響を検討したメタ解析の結果を統合した、アンブレラレビュー論文が報告された。HMBは体重や脂肪量には影響することなく、筋肉量と筋力を高めるのに役立つと結論づけられている。
HMBの有効性をアンブレラレビューで検討
β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(β-Hydroxy-β-methyl butyrate;HMB)は、分岐鎖アミノ酸であるロイシンの代謝の過程で生成される化合物で、筋タンパク質の同化作用と抗異化作用を持つと考えられており、体組成や筋肉量・筋力に対する影響が研究されてきている。また、筋グリコーゲンの増加やミトコンドリアの生合成促進を介した、有酸素能力の向上も報告されている。ほかにも、インスリン感受性の亢進や脂質代謝を促進させるように働くとする報告もある。
これまで、アスリート、高齢者、ボディービルダーなど、さまざまな対象でHMBサプリメントの効果が検討されてきている。それらの研究のうち、筋力や体組成に関しては、効果ありとするものと有意な変化はないとするものが混在している。このような研究結果の差異は、研究対象者の年齢や健康状態などの違いによるものである可能性が想定されるが、そのような視点での検討はまだ十分行われていない。これを背景として、今回取り上げる論文の著者らは、“メタ解析のメタ解析”と言われるアンブレラレビューによる検討を行った。
文献検索の手法と抽出されたメタ解析の特徴
Scopus、EMBASE、Web of Science、PubMedなどの文献データベースに、2024年8月までに収載された論文を対象として、発表の時期や言語を制限せずに検索を実施。包括基準は、成人を対象にHMBサプリを用いた介入を行い、体組成や筋力への影響を対照群を設けて検討した無作為化比較試験のメタ解析の報告であり、基礎研究、観察研究、メタ解析を行っていないシステマティックレビューなどは除外した。
重複削除後の126報を2名の研究者が独立してタイトルと要約に基づきスクリーニングを実施し、18報に絞り込み全文精査を行った。その結果、41件のデータセットからなる11報のメタ解析の報告が適格と判断された。
メタ解析は2003年以降に報告されていて、脂肪量、筋力などへの影響を評価
11報の論文のうち3件は中国発の論文で、米国が2報、その他、英国、カナダ、スペイン、チリ、オーストラリア、ニュージーランド発の論文が各1報だった。すべて2003年以降に発表されたもので、対象研究のサンプル数は113~433人、年齢範囲は23~78歳、介入に用いられたHMBの用量は1~4g、介入期間は1週間~1年だった。
体重に対する影響に関しては5件のデータセットからなる4件のメタ解析、脂肪量に関しては11件のデータセットからなる8件のメタ解析、除脂肪量に関しては8件のデータセットからなる5件のメタ解析、筋肉量に関しては5件のデータセットからなる5件のメタ解析、筋力に関しては6件のデータセットからなる12件のメタ解析がなされていた。
HMBの除脂肪量への影響
除脂肪量に関する8件のメタ解析は、4件が有意、4件は非有意という結果であり、それらを統合した解析の結果、HMBサプリは除脂肪量を有意に増加させることが示された(効果量〈ES〉:0.22〈95%CI;0.11~0.34〉、p<0.001)。ただし、研究間に大きな異質性が認められたが(I2=58%)、感度分析ではいずれかの研究を除外しても結果は変わらなかった。
サブグループ解析から、介入期間と年齢が異質性の原因であることが示唆された。例えば介入期間については、8週間超ではES:0.35と効果が高いながら異質性も高く(I2=67%)、8週以下ではES:0.12で異質性はなかった(I2=0%)。また年齢については、70歳以上ではES:0.33、I2=83.5%、30歳以下ではES:0.12、I2=0%だった。
HMBの筋力への影響
筋力に関する12件のメタ解析は、9件が有意、3件は非有意という結果であり、それらを統合した解析の結果、HMBサプリは筋力を有意に増加させることが示された(ES:0.27〈0.19~0.35〉、p< 0.001)。異質性は高くなく(I2=44.4%)、感度分析ではいずれかの研究を除外しても結果は変わらなかった。
サブグループ解析から、30歳以下(ES:0.17)よりも60歳以上(ES:0.36)で有効性が高く、また介入期間が8週間超(ES0.36)で8週間以下(ES:0.17)よりも有効性が高かった。また、HMB単独よりもカルシウムと併用した場合に筋力への影響がより強く、とくに上半身より下半身の筋力に対する有効性が高いことが示唆された。
HMBの筋肉量への影響
筋肉量に関する5件のメタ解析は、3件が有意、2件は非有意という結果であり、それらを統合した解析の結果、HMBサプリは筋肉量を有意に増加させることが示された(ES:0.21〈0.06~0.35〉、p=0.004)。異質性は許容範囲内で(I2=49.5%)、感度分析ではいずれかの研究を除外しても結果は変わらなかった。
サブグループ解析から、30歳以下(ES:0.15)よりも70歳以上(ES:0.26)で有効性が高く、また介入期間が8週間超(ES0.26)で8週間以下(ES:0.15)よりも有効性が高かった。
HMBサプリは体組成や筋力の向上に有用で、とくに高齢者でメリットが高い可能性
このほかには、脂肪量に関する11件のメタ解析はすべて非有意という結果であり、それらを統合した解析の結果、HMBサプリは脂肪量を有意に変化させないことが示された(ES:0.0〈-0.04~0.35〉、p=0.09)。また体重に関する5件のメタ解析は、1件が有意、4件は非有意という結果であり、それらを統合した解析の結果、HMBサプリは体重を有意に変化させないことが示された(ES:0.09〈-0.06~0.24〉、p=0.22)。
まとめると、HMBサプリは筋肉量、除脂肪体重、筋力に対して有意なプラス作用をもたらし、脂肪量や体重に対しては有意な影響を与えないと考えられた。論文の結論には、「生理学的疾患のために筋萎縮を来しているような人にとって、HMBの摂取は有益な可能性があり、HMBの筋肉量と筋力への影響は、若年者と比較して高齢者でより顕著であるように思われる。高齢者は、HMBのエルゴジェニック効果によって、より大きなメリットを受けられるのではないか」と述べられている。
文献情報
原題のタイトルは、「Ergogenic Benefits of β-Hydroxy-β-Methyl Butyrate (HMB) Supplementation on Body Composition and Muscle Strength: An Umbrella Review of Meta-Analyses」。〔J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2025 Feb;16(1):e13671〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)