スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

カフェイン、クレアチンに可能性 格闘技選手のパフォーマンス向上に有効なサプリを比較

エリートレベルの格闘技におけるパフォーマンスに対するサプリメントの有用性を、これまでの多数の論文のデータを統合して比較検討した結果が報告された。ピークパワー、平均パワー、投げ技やキックの回数などに対する、カフェイン、重炭酸ナトリウム、クレアチンなどの有意な効果を報告している。中国とマレーシアの研究者による論文。

カフェイン、クレアチンに可能性 格闘技選手のパフォーマンス向上に有効なサプリを比較

ベイジアンネットワークメタ解析で格闘技パフォーマンスへのサプリの影響を比較

格闘技は古代五輪から競技として存在し、現在では夏季五輪のメダルの25%以上が格闘技選手で占めるほど、多くの競技・種目・階級が設けられている。格闘技は瞬発的な筋力だけでなく持久力も要することが多く、アデノシン三リン酸・クレアチンリン酸系(ATP-CP系)、解糖系(乳酸系)、有酸素系(酸化系)という代謝経路のいずれもが、パフォーマンスの発揮に重要とされる。また、効果的なトレーニングのために回復の促進も欠かせない。これらの需要を満たすために、食事由来の栄養素に加えてサプリメントが利用されることが多い。

これまでにも格闘技におけるサプリの有用性を示した研究は多く報告されてきている。しかし、それぞれのサプリの効果の比較はあまり行われていない。今回紹介する論文の著者らは、システマティックレビューとベイジアンネットワークメタ解析によって、格闘技アスリートに用いられるサプリの効果を比較検討した。なお、ネットワークメタ解析は、複数の異なる研究の結果を統合して統計学的な解析を行い、介入手段の有効性を比較する手法。なかでもベイジアンネットワークメタ解析は、介入手段の優劣の順位付けに向いている。

システマティックレビューについて

PubMed、Web of Science、Cochrane、Embase、SPORTDiscusという文献データベースのスタートから2023年11月2日までに収載された論文を対象として検索を実施。包括基準は、エリートレベル(Tier 3以上)の成人アスリートを対象に、世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)の禁止物質以外を用いて対照群(プラセボ摂取またはサプリ非摂取)を置き、格闘技関連パフォーマンス指標への影響を検討した、無作為化比較試験の英語論文。除外基準は、未成年対象、WADA禁止物質による介入、査読システムのないジャーナル、レビュー論文、学会発表、同一の試験結果に基づく論文など。

一次検索で2万731報がヒットし、重複削除後に2名の研究者がタイトルと要約に基づくスクリーニングを実施して133報に絞り込み、全文精査を行った。採否の意見の不一致は3人目の研究者を含めた討議により解決した。最終的に67件の研究報告を適格と判断した。

抽出された報告の研究参加者数は合計1,026人で、多くは男性選手対象研究であり(男性598人。ただし14件は性別について記されていない)、ブラジルから19件、ポーランド9件、台湾7件、チュニジア6件、英国、スペインが各5件、イラン4件で、日本、セルビア、エストニアが各2件などであり、競技については柔道、レスリング、ボクシング、空手、剣道、総合格闘技などだった。

用いられていたサプリはカフェイン、重炭酸ナトリウム(重曹)、クレアチン一水和物、クレアチンリンゴ酸塩、β-アラニン、分岐鎖アミノ酸(branched chain amino acids;BCAA)、β-ヒドロキシ-β-メチルブチレート(β-Hydroxy β-Methylbutyric;HMB)、アルギニン、ビート根ジュース、コエンザイムQ10、ω3脂肪酸、炭水化物、ビタミンD、プロバイオティクス、アルカリ水、水素水などだった。評価項目は、ピークパワー、平均パワー、握力、自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)、柔道特異的テスト、投げ技やキックの回数、攻撃回数、乳酸値、心拍数などだった。

カフェイン、クレアチン一水和物などが格闘技を有利にする可能性

論文では、前記の指標ごとの解析結果が述べられている。それらの中から、解析の結果、有意な影響が認められたものを中心に、いくつかを抜粋して紹介する。

パワー

17件の研究で平均パワーへの影響が検討されており、解析の結果、クレアチン(標準化平均差〈standardized mean difference;SMD〉=1.00〈95%CI;0.38~1.61〉、重炭酸ナトリウム(SMD=0.42〈0.18~0.66〉)、クレアチン+重炭酸ナトリウム(SMD=2.25〈1.47~3.11〉)が、対プラセボで有意な違いが認められた。

また、15件の研究でピークパワーへの影響が検討されており、前記同様、クレアチン(SMD=1.10〈0.45~1.75〉、重炭酸ナトリウム(SMD=0.35〈0.11~0.57〉)、クレアチン+重炭酸ナトリウム(SMD=1.57〈0.85~2.27〉)という三つのサプリで有意な違いが認められた。

柔道特異的テスト

11件の研究で、柔道特異的テストにおける投げ技の回数への影響が検討されており、カフェイン(SMD=0.35〈0.08~0.61〉)の有意な効果が認められた。一方、クレアチンリンゴ酸塩は負の影響が認められた(SMD=-1.84〈-3.53~-0.18〉)。なお、クレアチン一水和物については、SMDは正であるものの非有意だった(SMD=0.42〈-0.13~0.97〉)。また、8件の研究で柔柔道特異的テスト指数への影響が検討されていたが、有意な影響を示したサプリは特定されなかった。

キック数

5件の研究でキック数への影響が検討されており、カフェイン(SMD=1.44〈0.19~2.71〉の有意な効果が認められた。

このほかの評価指標のうち、自覚的運動強度(RPE)、模擬戦での攻撃回数、握力に関しては、どのサプリも統計的に影響が認められなかった。

文献情報

原題のタイトルは、「Advantages of different dietary supplements for elite combat sports athletes: a systematic review and Bayesian network meta-analysis」。〔Sci Rep. 2025 Jan 2;15(1):271〕
原文はこちら(Springer Nature)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2025前期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ