回復目的のサプリは運動直後に摂取が有利な可能性 ただし、その優位性を示した研究の異質性が高い
サプリの摂取タイミングが運動後の疲労回復に及ぼす影響を、システマティックレビューとメタ解析により検証した結果が報告された。運動直後に摂取したほうが、時間がたってから摂取するよりも有効性が高いという結果が示されている。ただし、研究間の異質性が高く、摂取タイミングによる効果の差は、個人差や運動のタイプなどによって異なる可能性が示唆された。中国の研究者らの報告。
回復のためのサプリは運動直後がよいのか、タイミングは関係ないのか?
スポーツ栄養戦略の目的はさまざまだが、トレーニングや試合後に摂取する飲食物に関しては、水分補給とともに、筋タンパク質合成、グリコーゲン回復、疲労の回復促進などを主に意図したものと言える。従来、運動後30分以内のタンパク質や炭水化物の摂取が回復促進につながると考えられてきているが、近年では必ずしも運動直後ではなくても、必要量を満たすことのほうが重要なのではないかとの指摘もみられる。また、運動直後には通常、食欲が低下していたり、食品摂取によって消化器症状が発現しやすく、それらを回避するためにも食直後にこだわらずに摂取したほうが良いとする考え方もある。
今回取り上げる論文の著者らは、このトピックについて、システマティックレビューとメタ解析による検討を行った。
PRISMAに準拠し8件の研究報告を抽出
システマティックレビューとメタ解析のガイドライン(PRISMA)に基づき、Web of Science、PubMed、Cochrane Library、EmBaseなどの文献データベースやライブラリを利用し、それぞれのスタートから2024年3月3日までに収載された論文を対象とした検索を実施。包括基準は、運動後のさまざまな時点での栄養補給に関する無作為化比較対照試験であり、筋機能の回復、グリコーゲン回復、疲労などの運動後回復効果を評価した研究。除外基準は、総説論文、学会発表抄録、一次研究でないもの(専門家の意見、理論的研究など)、データが不完全な報告など。
一次検索で184報がヒットし、2名の研究者がスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は討議により解決した。全文精査を経て最終的に8件の研究報告を抽出した。
抽出された研究の特徴
8件の研究の参加者数は合計270人で、158人が運動後早期摂取群、112人が対照群だった。米国から3件、ブラジルから2件報告され、その他、韓国、カナダ、オランダから各1件報告されていた。
評価指標は、血清クレアチンキナーゼ、筋タンパク質合成と異化、筋肉痛と回復、ホエイプロテインの炎症と代謝への影響などだった。サプリメント摂取のタイミングは研究によって大きく異なり、運動後摂取群内においても差が認められた。例えば、一部の研究は「即時摂取」と「遅延摂取」という二つの群に分けていて、別の研究では運動の30分後、1時間後、2時間後というように細分化して検討していた。
運動後早期の摂取が有利と考えられるが、条件による異質性が高いという結果
8件の研究のうち7件は、摂取タイミングの違いによる有効性の有意差を示しておらず、有意差ありとする研究は、研究参加者数が最も多い(全体の45.22%)1件の研究のみで、その研究では即時摂取の優位性を示していた。遅延摂取の優位性を示す研究報告はなかった。
メタ解析の結果、効果量0.27(95%CI;0.04~0.50)で、運動後の早期に摂取(即時摂取)したほうが、種々の回復指標により優位な影響を及ぼし得ることが示された。ただし、研究間の異質性を表すI2統計量が53.9%であり、比較的高かった。またこのメタ解析の結果は、唯一単独で有意な結果を報告していた前述の1件の研究のデータに、強く影響を及ぼされたものと考えられた。
異質性が低くなるサブグループでは有意差が認められない
研究間の異質性が認められない(I2=0%)となる4件の研究のサブグループ解析(研究参加者数は全体の32.38%)では、効果量は-0.19(-0.59~0.22)であり、摂取タイミングの違いによる回復促進効果の有意差が認められなかった。
それに対して、それら以外の4件の研究のサブグループ解析(研究参加者数は全体の67.62%)では、効果量は0.49(0.21~0.77)であり、運動後の早いタイミングに摂取したほうが、回復促進効果が高いという有意差が認められた。ただしこのサブグループの異質性は全体解析より高くなった(I2=60.7%)。
この結果について著者らは、サプリの摂取タイミングによる回復促進効果の有用性は、解析対象者の特徴、運動の種類、サプリの摂取タイミング、評価指標などにより左右されると考えられると述べている。
論文は、上記のメタ解析のほかに既報研究に基づく考察を加えたうえで、以下のように総括されている。
「食事摂取のタイミングは、運動後の疲労回復に大きな影響を与える。とくに激しい運動などの身体活動の直後にタンパク質と炭水化物のサプリメントを摂取すると、筋肉の合成、グリコーゲンの回復、そして疲労の軽減に役立つ。本研究は、アスリートをはじめとする幅広い運動人口にとって、エビデンスに基づいた回復戦略を提供するものである。今後の研究では、さまざまな異なる対象や活動状況において、サプリメント摂取がどのようなタイミングで有益となるかを明らかにすることに重点を置くべきだろう」。
文献情報
原題のタイトルは、「An investigation into how the timing of nutritional supplements affects the recovery from post-exercise fatigue: a systematic review and meta-analysis」。〔Front Nutr. 2025 Apr 25:12:1567438〕
原文はこちら(Frontiers Media)