危険な減量は変えられる? 体系化された減量戦略が総合格闘技の体重管理に有用 前向き介入研究のエビデンス
総合格闘技選手の試合前の減量を安全・確実に行うための構造化された戦略の有用性を、前向き介入試験で検討した研究結果が報告された。31人のエリートレベルの選手が参加し、平均10%以上の減量、および計量後から試合開始までに11%以上の増量を達成したという。ブラジルからの報告。

総合格闘技では計量前に極端な減量を行う選手が少なくない
格闘技は体重別階級が設けられており、多くの選手が有利な条件で戦うために計量前に急速な減量(rapid weight loss;RWL)を実施する。報告によると、格闘技選手全体の試合前の平均的な減量幅は5%とされている。それに対して総合格闘技の選手は、より極端な減量を行うことが多く、減量幅が10%を超えることもある。
減量が極端であるほど、疲労、めまい、動悸、痙攣などを経験することが増え、トレーニングの質や試合結果へ負の影響を及ぼすリスクが高まる。そのため、最適な減量および計量後の増量のための戦略を探る研究が行われてきている。ただ、これまでに報告されてきたアプローチは構造化されたものでなく、実際の試合に適用して安全性・有効性を検証するという研究が少ない。
以上を背景として今回取り上げる論文の研究は、ブラジルのエリートレベルの総合格闘技選手を試合に出場する前に研究参加登録して、スポーツ栄養士などの専門家の介入のもと体系化されたRWL戦略を適用し有用性を検証するという、前向き介入研究として実施された。
体系化されたRWLアプローチで10%の減量と計量後の増量を安全に達成できるか
この研究の目的は、10%の減量を達成するための戦略を新たに開発し、その適用可能性を探ることとされ、31人のエリートレベルの総合格闘技選手が参加した。研究参加の適格条件は、プロ選手として1年以上の経験があること、急速な減量(RWL)を行い試合に出場する予定があることであり、除外条件として、アナボリックステロイドの使用歴があること、競技を妨げる怪我等の状態があることとされた。
参加選手は全員ブラジル人であり、男性28人、年齢28±4歳で、22.6%は国際大会出場レベル、その他の77.4%は国内大会レベルだった。なお、本研究に参加直後に出場した試合の成績は、21人(67.8%)が勝利し、敗戦が8人(25.9%)、引き分けは2人だった。
研究は試合日の6週間前からスタートし、体重のモニタリングとともに、個々にあわせた日々の食事・水分補給計画が立案された。実際の急速な減量(RWL)および計量後から試合までの増量に充てられた期間は、平均34±19.5日だった。
スポーツ栄養士の介入によるRWL戦略
試合前の介入期間は大きく以下の四つの段階に分類され、スポーツ栄養士が個別介入した。介入に際して、選手は個人用メッセージアプリ(WhatsApp)を用いて毎日、スポーツ栄養士に摂取した飲食物の写真を報告し、指導に対する遵守状況が確認され、是正のアドバイスがなされた。
フェーズ0:RWL開始前の29.2±17日
摂取エネルギー量1,812.3±2501.7kcal。タンパク質31.3%、炭水化物42.8%、脂質23.3%。食物繊維30.3±12.4mg。
フェーズ1:RWL開始後3.5±1.0日
摂取エネルギー量を約30%減少し1,299.7±305.4(前値の-512.7)kcal。タンパク質38.6%、炭水化物34.6%、脂質22.7%。食物繊維18.8±8.4mg。水分摂取量は、1日7.5Lから開始し5.5Lまで減少。
フェーズ2:フェーズ1に続く2.5±0.5日
摂取エネルギー量981.3±154.7kcal。タンパク質45.3%、炭水化物22.4%、脂質27.8%。食物繊維10.0±3.4mg。水分摂取量は、1日4.5Lから3.5Lへと減少。
フェーズ3:計量直前の2.0±0.3日
摂取エネルギー量669.5±167.6kcal。タンパク質51.6%、炭水化物17.4%、脂質30.4%。食物繊維5.2±2.8mg。水分摂取量は、1日1Lから0.5Lへと減少。
計量後の増量戦略
計量をパスした後、直ちに1.5Lの電解質飲料を90分で摂取。全粒穀物や食物繊維の多い食品を避けるようにアドバイスし、試合までの1±0.5日(24~36時間)で2,146.6kcal、タンパク質16%、炭水化物70%、脂質14%、食物繊維7.0±0.5mgを摂取。水分摂取量は、試合の前日が7L、試合当日の試合前が2.5L。
平均7.4kg(10.5%)の減量と、計量後の7.5kg(11.3%)の増量を達成
上記の体系化されたアプローチによる介入の結果、7.238±8.4kgの減量に成功し、これは介入開始時の体重の10.56%の減少に相当する。また、計量パス後の試合までの約30時間で、7.5±1.7kgの増量を達成した。これは計量時の体重から11.25%の増加に相当する。
一連の介入期間中に、58%の選手が疲労を報告した。そのほか、32%が痙攣、22%がめまいを報告。動悸、頭痛、嘔気などは15%未満だった。失神などの重篤な症状は報告されなかった。試合の結果は前述のように、21人が勝利、8人が敗戦、引き分け2人だった。
これらの結果に基づき著者らは、「体系化された栄養アプローチによる試合前の減量は、コントロールされていない他の方法に比べて安全な効果的な代替手段となる可能性が示された。今後、大規模な無作為化比較試験によって、このような手法の生理学的、心理学的、およびパフォーマンスへの影響を検証する必要があるだろう」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「An alternative structured weight management protocol to rapid weight loss in mixed martial arts: a prospective interventional study of pre-competition weight management strategies in professional athletes」。〔Front Nutr. 2025 Oct 8:12:1581698〕
原文はこちら(Frontiers Media)







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