出産後も競技力を維持・向上した選手も 出産後も競技を続ける女性アスリートの実態調査
トップレベルで活躍している女性アスリートの中で、出産後も競技スポーツを続けている選手を対象に、出産の経験や復帰後のパフォーマンスなどを調査した結果がカナダから報告された。アスリートの育児支援、授乳とトレーニングの両立など、多くの課題が浮き彫りにされている。

出産後も競技スポーツを継続しているカナダのトップ女性アスリート対象調査
かつてエリート女性アスリートの多くが家庭をもつとともに競技スポーツからは引退していたが、今日では結婚・出産後も活躍し続ける選手が増えてきている。また、産後のスポーツ活動に関する推奨事項も既に存在する。ただしその推奨は主としてレクリエーションレベルのアスリートに対するものであり、根拠とされたエビデンスの質も高いとは言えない。現状において、エリート女性アスリートの出産とその後のスポーツへの復帰に関する情報は乏しい。
これを背景としてこの研究では、カナダ国内の出産後のアスリートを対象とするオンラインアンケート調査が行われた。調査期間は2023年11月~2024年7月で、回答の適格条件は、カナダにおいて全国レベル以上の競技会に参加し、キャリア中に出産を経験して出産後に復帰しようとしたことのある女性アスリート。妊娠前または妊娠中に引退したアスリートや、出産後に復帰を目指さなかったアスリートは除外された。
この適格条件を満たすアスリートはそれほど多くないと予測されたため、サンプル数を確保するためにソーシャルメディアを活用するなどして回答を呼び掛けた。なお、回答は匿名とした。
解析対象アスリートの特徴
受付期間中に回答した17人に対して適格性が調査され、競技レベルが十分でない、出産の時期がキャリア期間に重複していないとの理由で3人が除外された。ほかに4人が回答を終了しなかったため、解析対象は10人となった。
10人のうち人口統計学的特性のセッションに回答したアスリートは9人であり、年齢中央値38歳(範囲29~43、四分位範囲8.5)で、全員が法的な婚姻状態にあり配偶者と同居している白人女性だった。2人は出産後に復帰後、調査回答時点では引退していた。
参加競技は7人が陸上、2人がバスケットボールで、競技歴は平均24年(範囲2~30)、エリートレベルでの競技歴は16年(2~25)であり、全選手が国家代表の経験を有しており、6人はオリンピックまたは世界選手権に出場していた。
トップアスリートの出産後の競技への復帰を妨げる因子が明らかに
この調査では、妊娠から出産、その後の復帰に関して、10以上のセクションにわたるさまざまな質問が行われ、論文ではその解析結果が報告されている。ここではその一部を紹介する。
妊娠計画と出産
妊娠計画に関するセクションについては10人が回答していた。
全員が計画的に妊娠し、競技スケジュールなどを考慮して妊娠していた。妊娠に要した期間は1カ月未満から1年以上までと広範囲に分布しており、5人が1年以上を要していた。半数以上の選手が計画した期間内に妊娠しなければならないというプレッシャーを感じたと回答し、その大半は主要な大会を欠場したくないという理由だった。
子どもの数は、1人が50%、2人が40%、3人が10%であり、初産年齢は平均32.5歳(26~36歳)で、20%の選手が帝王切開による出産を経験していた。
母乳育児
10人全員、母乳育児をしたと報告した。授乳期間について回答した9人中7人は1年以上と回答した。
全員が授乳中もトレーニングを続けられたと回答した一方、80%はトレーニングスケジュールと授乳のタイミングの調整が困難と報告した。また1人のアスリートはトレーニング再開のために授乳を中止していた。
授乳を続けながら競技に復帰したアスリートの大半が、子どもを競技会場に連れて行くことの苦労を報告した。スポーツ界におけるこの領域のサポートは不足しており、会場内でベビーカーの使用が許可されていなかったり、授乳室がなかったり、海外遠征時に子どものケアにあたる保護者を帯同する資金を得られなかったと述べた。
トレーニングパターン
妊娠中のトレーニング
10人中7人が妊娠中もトレーニングを続けていた。他の3人のうち1人も妊娠中に活動は続けていたものの、競技に特化したトレーニングは行わなかったと回答し、別の1人はコーチからの指導がなかったため妊娠中にはトレーニングを行わなかったと述べた。もう1人は早産のリスクを指摘されたためトレーニングをしなかった。
妊娠中にトレーニングを継続した7人のうち6人は、第3三半期も含めて妊娠中の全期間、トレーニングを行っていた。妊娠前の週あたりのトレーニングセッション数は中央値10回で計12時間であり、妊娠初期には7回、8時間、妊娠の経過とともに6~4回、7~4時間へと減少していた。
出産後のトレーニング
9人が出産後にトレーニングを再開していた。別の1人は妊娠前の怪我が妊娠中に放置されていた影響で、出産後のトレーニング再開が妨げられた。
出産後のトレーニング量は12週間を過ぎると、大幅に増加していた。75%は12週間以上経てから妊娠前のトレーニングレベルに到達し、25%は10~12週間で到達していた。
出産後のパフォーマンス
出産後にトレーニングを再開した9人のうち7人が競技に復帰した。産後の最初の競技出場までの期間は中央値8カ月(4~11)だった。
出産後のパフォーマンスは、向上したと回答した選手が4人、1人は不変、低下したとの回答が2人だった。パフォーマンスが向上または不変だった5人は全員が陸上競技の選手であり、このうち4人は回答したパフォーマンスレベルに達するまでに1年以上かかり、1人は3カ月未満で到達していた。
出産後の競技会への参加頻度は選手によって大きく異なり、1人は出産前の1割未満に低下していたが、3人は出産前よりも増えていた。
本人の反省や意見
競技スポーツに復帰した7人のアスリートのうち、5人は育児との両立が産後復帰の大きな障壁になったと述べた。1人のアスリートは、適切な栄養摂取と体系的なスポーツトレーニングへの復帰に関する情報が不足しており、そのことが復帰をさらに困難にしていると回答した。
1人を除くすべての選手が、産後の復帰と育児の両面において、配偶者や家族の存在と精神的な励ましが重要だったと語った。
文献情報
原題のタイトルは、「Exploring the postpartum return to sport and performance in Canadian elite athletes」。〔Front Sports Act Living. 2025 Oct 7:7:1665212〕
原文はこちら(Frontiers Media)







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