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親の身体活動が子どもの食習慣に影響 特に母親との関連が強く、活動の種類で摂取食品が変化

親の身体活動が子どもの食習慣に影響を与えていることを示す研究結果が報告された。親が行っている身体活動の種類、つまり、就労に伴う身体活動、スポーツとしての身体活動、余暇での身体活動によって影響が異なり、かつ、母親と父親の身体活動は、それぞれ異なる影響を及ぼしているという。

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子の食習慣は親の食事・身体活動習慣に左右される。では、親の身体活動習慣の影響は?

子どもの食習慣に影響を与える要因として、家庭環境と身体活動という二つが重要という考え方があり、それを示唆する研究報告は少なくない。さらに、親の身体活動習慣と子どもの食習慣との関連を示した研究結果も報告されている。ただし、それらの研究の大半は、親の身体活動を総活動量のみで評価している。

一方、身体活動と食習慣との関連は、身体活動の種類によって異なることが明らかにされてきている。例えば、余暇時間の身体活動は果物の摂取量の多さと関連しているが、職業上の身体活動はそうでないといった報告がある。よって、親の身体活動が子どもの食習慣に及ぼす影響も、親がふだん行っている身体活動の種類によって異なる可能性も考えられる。ただし、そのような視点での研究はこれまで報告されていない。

親がどのようなシーンで身体活動を行っているかで、子どもの食習慣との関連が異なる

今回取り上げる論文の研究は、ブラジルのサンパウロでソーシャルメディアやチラシ配布によって募集された473人が参加した。その内訳は、6~17歳の子どもが192人(女子39.6%)で、その母親が163人、父親が118人。

子どもの食習慣は、食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire;FFQ)で把握し、親の身体活動の種類や量は、ベッケ習慣的身体活動質問票(Baecke Habitual 、Physical Activity Questionnaire;BH、PAQ)で把握した。BH、PAQでは、職業上の身体活動、スポーツとしての身体活動、および余暇時間での身体活動という3種類の身体活動について、1~5点のリッカートスコアで回答を得て活動量を評価する。

解析に際しては、BH、PAQスコアの三分数で3群に分類し、最高三分位群をその種類の身体活動が活発な群、最低三分位群をその種類の身体活動が不活発な群と定義して比較した。また、共変量として、子どもの年齢、性別、加速度計で把握した身体活動量、世帯の社会経済的状況を考慮した。

なお、研究参加者の主な特徴は以下のとおり。数値はすべて中央値(四分位範囲)。

子どもは、年齢10(8~14)歳、BMI 18.8(16.4~21.4)、中~高強度身体活動(MV、PA)192.5(115.5~303.0)分/週。母親は42(37~45)歳、BMI 25.7(23.4~29.6)、MV、PA 71.5(36.3~140.0)分/週。父親は44(40~47)歳、BMI 28.5(25.8~32.2)、MV、PA 137.0(66.3~222.0)。

親の職業上の身体活動と子どもの食習慣の関係

母親の職業上の身体活動と子どもの食習慣の関係

職業上の身体活動が非活動的な母親では、子どもの揚げ物(β=0.470、p=0.017)、菓子類(β=0.554、p=0.005)、ファストフード(β=0.305、p=0.032)、赤身肉(β=0.496、p=0.961)の摂取量が多いという点で有意だった。

一方、職業上の身体活動が活動的な母親では、子どもの果物(β=0.398、p=0.013)、野菜(β=0.833、p=0.013)、乳製品(β=0.600、p<0.001)、揚げ物(β=0.442、p=0.013)、ソフトドリンク(β=0.313、p=0.039)、塩辛いスナック菓子(β=0.467、p=0.039)、赤身肉(β=0.645、p=0.011)の摂取量が多いという点で有意だった。

子どもの穀類の摂取量については、母親の職業上の身体活動量の多寡との関連はみられなかった。

父親の職業上の身体活動と子どもの食習慣の関係

職業上の身体活動が非活動的な父親では、子どもの果物(β=0.524、p=0.011)、野菜(β=0.670、p=0.010)、菓子(β=0.504、p=0.043)、ソフトドリンク(β=0.549、p=0.001)の摂取量が多いという点で有意だった。

一方、職業上の身体活動が活動的な父親では、その身体活動量と子どもの食習慣との間に有意な関連がみられなかった。

親のスポーツとしての身体活動と子どもの食習慣の関係

母親のスポーツでの身体活動と子どもの食習慣の関係

スポーツでの身体活動が非活動的な母親では、子どもの果物(β=0.273、p=0.026)、野菜(β=0.892、p<0.001)、揚げ物(β=0.474、p=0.004)の摂取量が多いという点で有意だった。

一方、スポーツでの身体活動が活動的な母親では、子どもの野菜(β=0.853、p=0.011)、塩辛いスナック菓子(β=1.495、p<0.001)、赤身肉(β=0.870、p<0.001)の摂取量が多いという点で有意だった。

子どもの穀類や乳製品などの摂取量については、母親のスポーツ活動での身体活動量の多寡との関連はみられなかった。

父親のスポーツでの身体活動と子どもの食習慣の関係

スポーツでの身体活動が非活動的な父親では、子どもの果物(β=0.675、p=0.010)、ソフトドリンク(β=0.331、p=0.001)、赤身肉(β=0.623、p=0.011)の摂取量が多いという点で有意だった。

一方、スポーツでの身体活動が活動的な父親では、子どもの穀類(β=0.714、p<0.001)、ファストフード(β=0.418、p=0.035)、塩辛いスナック菓子(β=0.812、p<0.001)の摂取量が多いという点で有意だった。

親の余暇時間での身体活動と子どもの食習慣の関係

母親の余暇時間での身体活動と子どもの食習慣の関係

余暇時間での身体活動が非活動的な母親では、子どものファストフード(β=0.375、p=0.006)、ソフトドリンク(β=0.511、p<0.001)の摂取量が多いという点で有意だった。

一方、余暇時間での身体活動が活動的な母親では、子どもの果物(β=0.420、p=0.029)、揚げ物(β=0.442、p=0.002)、ファストフード(β=0.269、p=0.009)、赤身肉(β=0.743、p=0.001)の摂取量が多いという点で有意だった。

父親の余暇時間での身体活動と子どもの食習慣の関係

余暇時間での身体活動が非活動的な父親では、子どもの果物(β=0.457、p=0.033)、ファストフード(β=0.275、p=0.013)、ソフトドリンク(β=0.289、p=0.040)の摂取量が多いという点で有意であり、反対に子どもの揚げ物の摂取量とは負の有意な関連がみられた(β=-0.390、p=0.009)。

一方、余暇時間での身体活動が活動的な父親では、子どもの果物(β=0.807、p<0.001)、ソフトドリンク(β=0.414、p=0.003)、塩味のスナック菓子(β=0.636、p<0.001)の摂取量が多いという点で有意だった。

父親よりも母親の身体活動のほうが子どもの食習慣との関連が強固

まとめると、親の身体活動と子どもの食習慣との関連は、職業領域の身体活動において最も強くみられ、特に母親が職業領域で活動的であった場合に顕著だった。一方、父親と子どもの食習慣との関連は、父親がどのような種類の身体活動を行っているかにかかわらず、類似した関連がみられた。

全体として、親の身体活動は子どもの食品摂取量が増える方向に関連していた。著者らは、横断研究であること、子どもが親と過ごす時間の長さを把握せず検討していることなどを限界点として挙げたうえで、「親子間の食習慣の関係は、親の身体活動の種類によって異なる傾向があるという我々の当初の仮説が裏付けられた」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Parent–Child Associations of Eating Habits According to Domains of 、Parental 、Physical Activity (E、PI-Family Health Study)」。〔Nutrients. 2025 Oct 15;17(20):3234〕
原文はこちら(MDP)

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