炭水化物の摂取量が少ない人は、45歳以下での骨粗鬆症性骨折が多い 米国の国民健康栄養調査の解析
炭水化物摂取量が少ない食習慣が、骨折のリスクを高めることを示唆するデータが報告された。米国国民健康栄養調査に参加した1万3,000人以上のデータを横断的に解析した結果であり、骨折リスクに影響を及ぼし得る交絡因子の影響を調整後にも有意な関連がみられたという。また、年齢で層別化すると45歳以下の群でのみ、この関連が有意とのことだ。

炭水化物と骨折リスクとの関連は?
骨粗鬆症による骨折は世界的に増加傾向にあると報告されている。骨粗鬆性骨折は、ひとたび発生すると次々に連鎖して発生する“ドミノ骨折”を来しやすく、また長期臥床による廃用症候群から死亡リスクも高まる。
骨粗鬆症リスク、およびそれによる骨折リスクの中で、修正可能なものとして「食事・栄養」が挙げられる。既に、それらのリスクと栄養との関連が多く研究されてきている。しかし、これまでに行われてきた研究の大半は、カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質との関連を調べており、炭水化物に焦点を当てた研究は少ない。
一方、近年あらたに提案された、炭水化物摂取量の少なさを評価する指標「低炭水化物食スコア(low-carbohydrate diet score;LCDS)」を用いた研究が多く報告されるようになり、LCDSと肥満、糖尿病、認知機能、精神疾患との関連が示されてきている。これらを背景として、今回取り上げる論文の著者らは、LCDSと骨粗鬆性骨折リスクとの関連を検討した。
米国の一般住民における炭水化物摂取量と骨折の既往との関連を横断解析
この研究は、米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey;NHANES)のデータを用いた横断研究として実施された。2005~10年、2013~14年、2017~18年のNHANES参加者5万463人から、20歳未満または80歳以上、妊婦、および血清25-ヒドロキシビタミンDなどのデータの欠落者を除外し、1万3,025人(平均年齢53.20歳、男性48.8%)を解析対象とした。なお、NHANESは施設居住者を除く一般住民を対象に行われている。
低炭水化物食スコア(LCDS)は、2回の面接による24時間想起法の記録を基に、脂質とタンパク質に関しては%エネルギー量が高いほど高得点となるように0~10点の間でスコア化し、炭水化物に関しては%エネルギー量が低いほど高得点となるように0~10点の間でスコア化。合計0~30点で評価した。なお、解析に際しては、このスコアを連続変数とした解析と、四分位数に基づき4群に分けて比較するという解析が行われた。
骨粗鬆性骨折の既往あり群は、低炭水化物食スコア(LCDS)が有意に高い
骨粗鬆性骨折の有無は、「医師から『股関節、手首、または脊椎の骨折がある』と言われたことがあるか?」という質問への回答を基に判断した。その結果、3,024人(29.3%)が骨粗鬆性骨折を有していた。
骨粗鬆性骨折の有無で比較すると、既往あり群は高齢で(55.47±14.31 vs 49.61±16.34歳)、BMI(29.58±6.76 vs 28.90±6.73)や血清25(OH)D(72.58±28.87 vs 69.16±27.53nmol/L)が高いといった有意差が認められた。血清カルシウム値は有意差がなかった。そして、低炭水化物食スコア(LCDS)は、既往あり群のほうが有意に高かった(11.47±7.58 vs 10.46±7.37)。
低炭水化物食スコア(LCDS)の高さが骨粗鬆性骨折の既往と有意に関連
骨折リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、BMI、摂取エネルギー量、乳製品摂取量、血清カルシウム・リン・25(OH)D、喫煙・飲酒・身体活動習慣、収入、教育歴、婚姻状況、高血圧・糖尿病・冠状動脈疾患・脳卒中の既往)を調整後、LCDSが1点高いごとに骨粗鬆性骨折の既往者が1.1%多いという有意な関連が認められた(OR1.0113〈95%CI;1.0015~1.0212〉)。
また、LCDSの四分位数で4群に分け、第1四分位群(摂取エネルギー量に占める炭水化物の量が少ない下位25%)を基準に比較すると、第4四分位群(摂取エネルギー量に占める炭水化物の量が多い上位25%)は、骨粗鬆性骨折の既往者が有意に多く(OR1.0695〈1.0058~1.1372〉)、LCDSが高い群ほど骨粗鬆性骨折の既往者が多いという有意な関連が認められた(傾向性p=0.0326)。
このほか、制限付き3次スプラインモデルの解析からは、LCDSと骨粗鬆性骨折との間に、線形の有意な関連が示された。
サブグループ解析では、45歳未満、習慣的飲酒者、高血圧でない人で有意
次に、年齢、性別、BMI、高血圧・糖尿病の有無、喫煙・飲酒・身体活動習慣、冠状動脈疾患・脳卒中の既往の有無で層別化したサブグループ解析を実施。その結果、年齢、飲酒習慣の有無、高血圧の既往の有無という3項目について、有意な交互作用が認められた。
具体的には、年齢については45歳未満でのみLCDSと骨粗鬆性骨折既往との関連が有意であり、45歳超は非有意だった(交互作用p=0.0110)。飲酒については習慣的飲酒者のみ関連が有意だった(交互作用p=0.0099)。また、高血圧でない集団でのみ関連が有意だった(交互作用p=0.0183)。その他の性別や糖尿病の有無などでは、結果に有意な違いは観察されなかった。
著者らは本研究が横断研究であること、骨折も含め既往症の有無を自己申告に基づき判断していることなどを限界点として挙げたうえで、「炭水化物摂取量の少なさと骨粗鬆性骨折の既往との間に有意な相関が認められた。45歳以下、習慣的飲酒者、高血圧のない人は、とくに注意が必要な可能性がある。ただし、サブグループ解析で観察された交互作用は仮説生成的なものとして解釈すべきだろう」と結論づけている。
文献情報
原題のタイトルは、「Association of low-carbohydrate-diet score and osteoporotic fractures: National Health and Nutrition Examination Survey」。〔Front Public Health. 2025 Oct 8:13:1668024〕
原文はこちら(Frontiers Media)







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