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運動誘発性酸化ストレスや筋損傷に対するに抗酸化物質の有用性 系統的レビューとメタ解析

アスリートの運動誘発性参加ストレスまたは筋損傷に対する抗酸化物質の有用性を、システマティックレビューとメタ解析で検討した結果が報告された。乳酸とクレアチンキナーゼに対する有意な影響が確認されたが、その他に評価した指標への影響は有意でなく、また研究デザインや対象者の競技レベル等による異質性が大きいという結果が示されている。

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アスリートの疲労や回復遅延にかかわる酸化ストレスを抗酸化物質で抑制できるか?

酸化ストレスとは、活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)と活性窒素種(reactive nitrogen species;RNS)の産生が、体内の抗酸化機構による中和能力を上回り、核酸、タンパク質などの生体高分子に酸化損傷を引き起こす病態生理学的プロセスを指す。低濃度のROSやRNSは、抗酸化酵素の発現に関与するシグナル分子として機能してトレーニングへの適応を高めるように働くが、高強度または長時間の運動で体内の抗酸化防御能力を超えると、脂質過酸化、タンパク質のカルボニル化、酸化的DNA損傷が引き起こされる。アスリートの場合、これらが筋収縮力の低下、疲労の増加、回復の遅延につながり、結果としてトレーニングの質の低下や怪我のリスク増大が生じる。

これに対して、ビタミンCやE、フラボノイドなどの外因性抗酸化物質の有用性が検討されてきており、有意な効果も報告されている。ただし一貫性が十分でなく、また、さまざまな抗酸化物質の効果を比較可能なメタ解析は行われていない。今回紹介する論文の研究について著者らは、「アスリートの運動に伴う酸化ストレス、および筋損傷に対するさまざまなタイプの抗酸化物質の効果を比較した、初のメタ解析」と位置づけている。

5件の文献データベースから26報(26件のRCT)の論文を抽出

システマティックレビューとメタ解析のための優先報告項目(PRISMA)のガイダンスに準拠し、2025年4月までに5件の文献データベース(Embase、Web of Science、Cochrane Library、PubMed、Scopus)に収載された論文から、抗酸化物質に関する無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)の報告を検索した。検索キーワードとして、「抗酸化効果」、「運動」、「栄養補助食品」などを用い、言語を制限せずに収集。また、過去5年以内に世界スポーツ医学会議(World Congresses of Sports Medicine)で発表されたRCTや、すべての研究報告の参考文献をハンドサーチし適格性を検討した。一方、観察研究、症例報告、レター、個人的意見、書籍などは除外した。

一次検索で3,992報がヒットし、重複削除後、2名の研究者が独立してスクリーニングを行い60報を全文精査の対象とした。採否の意見の不一致は3人目の研究者を含めた討議により解決。最終的に、26報(26件のRCT)を適格と判断した。

メタ解析対象研究の特徴

26件のRCTに合計505人が参加し、52の異なる介入が行われていた。24件は男性のみ、2件は男性と女性を対象とし、22件はプロレベルアスリート、4件はアマチュアレベルのアスリートを対象としていた。

介入に用いられていた抗酸化物質は多岐にわたり、ビタミン(CやEなど)、ポリフェノール(アントシアニン、緑茶ポリフェノールなど)、補酵素および生理活性分子(コエンザイムQ10、メラトニン、L-カルノシン)、特定の機能性物質(ビート根ジュースなど)といった物質で検討されていた。

研究参加アスリートの参加競技は、おもに球技(サッカー、バスケットボール、バレーボールなど)と持久系競技(ランニング、自転車/トライアスロン、ボートなど)であり、ほかにラグビーや筋力トレーニングに焦点を当てた研究も複数含まれていた。研究地点は大半が欧州だった。

乳酸とクレアチンキナーゼに対しては有意な影響が示される

メタ解析の主要評価項目は、総抗酸化状態(total antioxidant status;TAS)、グルタチオンペルオキシダーゼ(glutathione peroxidase;GPx)、スーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase;SOD)、チオバルビツール酸反応性物質(thiobarbituric acid reactive substances;TBARS)、乳酸(lactate;LA)とし、副次評価項目は、インターロイキン-6(interleukin-6;IL-6)、マロンジアルデヒド(malondialdehyde;MDA)、クレアチンキナーゼ(creatine kinase;CK)、硝酸塩(nitrates;NOx)とした。効果量は、標準化平均差(standardized mean difference;SMD)として評価した。

論文では、競技レベル、研究デザイン、研究地点などでのサブグループ解析の結果も示されているが、ここでは主解析の結果のみ紹介する。

主要評価項目

抗酸化能の指標である総抗酸化状態(TAS)は12件のRCTで検討され、3件が有意な正の関連(酸化ストレスの軽減を示唆)を報告していたが、メタ解析の結果は標準化平均差(SMD)0.06(95%CI;-0.42~0.53)と非有意であり、異質性がやや大きかった(I2=67.9%)。

脂質過酸化の指標であるチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)は4件のRCTで検討され、いずれも有意でない結果を報告しており、メタ解析の結果もSMD-0.23(-0.65~0.19)と非有意だった。異質性は認められなかった(I2=0.0%)。

活性酸素を分解する酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は11件で検討され、正の関連と負の関連を報告した研究がそれぞれ2件あり、メタ解析の結果はSMD0.05(-0.56~0.66)と非有意であり、異質性が大きかった(I2=76.2%)。

抗酸化能の指標であるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)は9件のRCTで検討され、正の関連と負の関連を報告した研究がそれぞれ2件あり、メタ解析の結果はSMD-0.14(-0.87~0.59)と非有意であり、異質性が大きかった(I2=79%)。

代謝ストレスの指標である乳酸(LA)は9件のRCTで検討され、4件が有意な負の関連(代謝ストレスの軽減を示唆)を報告しており、メタ解析の結果もSMD-1.25(-2.06~-0.43)と有意であったが、異質性が大きかった(I2=81.7%)。

副次評価項目

筋損傷のマーカーであるクレアチンキナーゼ(CK)は8件のRCTで検討され、メタ解析の結果、有意な負の関連(筋損傷の抑制を示唆)が示されたが(SMD-1.88〈-2.98~-0.78〉)、異質性が大きかった(I2=86.2%)。

その他の介入である、インターロイキン-6(IL-6)、マロンジアルデヒド(MDA)、硝酸塩(NOx)については、メタ解析の結果、有意な関連はみられなかった。

研究間の異質性の探求が、有効な介入法の確率につながる可能性

以上に基づき著者らは、「抗酸化サプリメントの摂取は運動後の乳酸およびクレアチンキナーゼのレベルを有意に低下させることが明らかになった。これは、抗酸化物質が疲労回復の促進と筋損傷の軽減に有益な役割を果たすことを示唆している。これらの結果は、アスリートにおける抗酸化物質の使用を裏付ける貴重なエビデンスとなり、個々のアスリートにあわせたサプリメント戦略を確立するための科学的根拠となる」と総括。

一方で、全体的に研究間の異質性が高かったことから、「抗酸化サプリメントの影響は複雑であり、さまざまな要因によって左右される。抗酸化物質は一定の効果を示すものの、アスリートにおける酸化ストレスと筋損傷への影響は状況に依存する」と述べている。そのうえで、「今後の研究では、個人差、抗酸化物質の種類、投与量、運動の種類などの精密な調査が必要とされる」と付言している。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of different antioxidants on exercise-induced oxidative stress and muscle damage in athletes: a systematic review and meta-analysis」。〔BMC Sports Sci Med Rehabil. 2025 Nov 11;17(1):328〕
原文はこちら(Springer Nature)

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