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サッカー選手の回復戦略を総まとめ 性別、年齢、競技レベルの研究を含めた系統的レビュー

男性と女性、あらゆる年齢・競技レベルのサッカー選手における、運動後の回復戦略に関するシステマティックレビュー論文が報告された。多くの指標に対する冷水浸漬の有用性が認められ、その他の栄養療法などについてはエビデンスレベルがさまざまだが、回復に対してプラスの影響が示されているという。

サッカー選手の回復戦略を総まとめ 性別、年齢、競技レベルの研究を含めた系統的レビュー

幅広いサッカー人口に適用できる回復のエビテンスとは

アスリートの「回復」とは幅広い概念だが、研究上は、トレーニングや競技参加の後に、それ以前のパフォーマンス状態もしくはそれを超える状態となることと定義される。回復が十分でない状態で次のトレーニングを行ったり競技に参加すると、パフォーマンスを発揮できず、また怪我のリスクが上昇する。

サッカーは急激な加速、減速、方向転換、ジャンプなどが組み合わさり、嫌気性および好気性の運動が頻繁に切り替わるという特徴がある、高負荷のチームスポーツ。トレーニングや試合で求められる身体的・精神的要求は高く、回復戦略が重要な競技といえる。しかし従来、サッカー選手の回復戦略は経験的な知見に基づいてとられているのが実態といえる。

最近、サッカーの回復戦略についてシステマティックレビューによりエビデンスを総括した論文が報告されたが、その研究は対象をプロレベルの男性選手のみに絞り込んでいた。サッカー人口の大半はプロとしてプレーしておらず、年齢層も幅広く、かつ、女性選手が増加している。以上を背景としてこの論文の著者らは、研究対象を絞り込まず、サッカー選手の回復についての知見を広く収集するという方針でシステマティックレビューを実施している。

包括基準や除外基準

文献検索は、システマティックレビューとメタ解析のための優先報告項目PRISMA(preferred reporting items for systematic reviews)のガイドラインに則して実施された。PubMed、SPORTDiscuss、Web of Scienceという3件の文献データベースに2023年10月17日までに収載された論文の中から、サッカー選手の運動後の回復戦略を検討した研究報告を検索。包括条件は、サッカーチームに所属している選手を対象として、運動(トレーニングまたは競技)後の回復戦略を無作為化比較試験またはクロスオーバー試験により、パフォーマンスまたは心理生理学的アウトカムを比較し、査読システムのあるジャーナルに英語で報告されている論文。ケーススタディー、エディトリアル、レビュー、灰色文献、および、研究参加者に負傷している選手が含まれている研究は除外した。

一次検索で1,102報がヒットし、重複削除後の120報を、タイトルと要約に基づくスクリーニング、全文精査を経て、41件の研究報告を適格と判断した。

抽出された研究報告の特徴

抽出された41件の研究の参加者数は合計685人で男性が91.97%であり、平均年齢は14.3~25.4歳。サンプルサイズは8~40人で、競技レベルはユース29.19%、大学/ノンプロ18.24%、セミプロ18.18%、プロ32.99%だった。研究の品質は概ね良好と判定された。

回復に用いられた戦略は、アクティブリカバリーが6件、血流制限2件、冷水浸漬12件、着圧ウエア3件、アクティブクールダウン2件、全身凍結療法2件、睡眠3件、および栄養介入7件などだった。ここでは栄養介入の項目を少し詳しく紹介するとともに、論文の考察部分に表形式で掲げられている推奨事項の一部を抜粋して紹介する。

サッカー選手の回復のための栄養

運動後のタンパク質補給が、カウンタームーブメントジャンプの高さや筋肉痛の自覚、気分に有益な効果のあることが報告されている。プロの男子サッカー選手が試合後、就寝前にカゼイン40gを摂取すると、対プラセボでそれらが有意に改善したという。一方、別の研究では、運動後に炭水化物とタンパク質を豊富に含む食事(%エネルギーが炭水化物71%、タンパク質21%、脂質8%)を摂取しても、グリコーゲン再合成に有意な影響はなかったとしている。

ホエイプロテインまたは大豆プロテインを補給しタンパク質摂取量を1.5g/kg/日とすることで、スピードや持久力パフォーマンスの低下が緩和されたという報告がみられた。しかしその研究では、ホエイまたは大豆補給群と対照群の間で、カウンタームーブメントジャンプ、クレアチンキナーゼ、筋肉痛には差がなかったという。

推奨される回復戦略

冷水浸漬

運動後1時間以内に10~15°Cの冷水に10~15分間浸かる。

温冷交代浴

運動後1時間以内に温水(36~40°C)に1~2分浸かり、冷水(10~15°C)に1分浸かることを3~7回繰り返し、合計6~15分行う。

アクティブリカバリー

運動の24時間後に、合計10~20分の低強度サイクリングまたはランニングと動的ストレッチを組み合わせて行う。

血流制限

受動的な仰臥位で大腿部の近位部の両側にカフを装着し、5分間の閉塞(収縮期血圧より50mmHg高い圧)と5分間の再灌流(0mmHg)を3サイクル行う。

静的ストレッチ

運動後30分以内に、大腿四頭筋、ハムストリング、内転筋、臀筋、腓腹筋を30秒間ストレッチする。

全身凍結療法

運動後1時間以内に-135~-180°Cで120~180秒間冷却する。

マインドフルネス

2分間のマインドフルネス呼吸、4分間のボディースキャン(全身を注意深く意識する)、再度2分間のマインドフルネス呼吸。

昼寝

午後の早い時間に40分間の昼寝。

就寝前のカゼイン摂取

就寝の30分前以降にカゼイン40gを摂取する。

ビート根ジュース

1日2回(午前8時と午後6時)150mLを摂取する。

クルクミンサプリメント

運動後1時間以内に500mgのクルクミンサプリメントを摂取する。

文献情報

原題のタイトルは、「Post-Exercise Recovery Modalities in Male and Female Soccer Players of All Ages and Competitive Levels: A Systematic Review」。〔Review Sports (Basel). 2025 Oct 2;13(10):343〕
原文はこちら(MDPI)

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