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日本の女子学生ランナーのトライアド有病率は米国より有意に高く、低BMI・疲労骨折が多い 日米2大学を比較

女性アスリートの三主徴(トライアド)の有病率などを日米で比較したデータが報告された。米ペンシルベニア州立大学のMary Jane De Souza氏、神奈川県立保健福祉大学の鈴木志保子氏らの研究によるもので、「PM & R」に論文が掲載された。日本の女子ランナーはトライアド有病率が米国に比較し有意に高い可能性が示されている。

日本の女子学生ランナーのトライアド有病率は米国より有意に高く、低BMI・疲労骨折が多い 日米2大学を比較

トライアドの有病率等に関する初の日米間国際比較

女性アスリートには、エネルギー不足、月経異常、骨の健康不良という三つの因子が併存することが少なくない。それら3因子は互いに関連して健康状態を悪化させ得ることから、「女性アスリートの三主徴(female athlete triad)」と呼ばれ、多くの研究が行われ注意喚起がされてきている。

トライアドの有病率に関する報告も各国から報告されてきている。ただし、トライアドのリスク因子は他の多くの疾患と同様に、人種/民族的な差異が存在すると考えられ、さらにスポーツの文化的な違いや食習慣の違いも、トライアドの発症や病態に大きな影響を及ぼすと考えられる。そのため、リスク評価や個別化された介入戦略を確立するうえで、国際間の比較研究によって各国の傾向や特徴を明確に把握することが重要と言える。しかしこれまでのところ、そのような視点で行われた研究は少ない。

以上を背景として行われた今回取り上げる論文の研究では、日米の大学女子ランナーのトライアドの有病率、およびトライアドの各構成因子が該当する割合の比較が行われた。著者らは本研究を、トライアドの構成因子も含めた有病率を日米間で比較した初の研究と位置づけている。

日米の持久系学生ランナーを対象に解析

この研究は、陸上中距離以上の種目に参加している17~25歳の学生ランナーを対象に実施された。いずれも妊娠・授乳中、外傷等の治療中、およびパラアスリートは解析から除外されている。

日本のランナーは36人で、年齢は20±2歳だった。米国のランナーは41人で、そのうち24人はNCAAディビジョンⅠのクロスカントリー代表チームに所属、他の17人は大学関連のクラブチームに所属していて、9割を白人が占めアジア系の学生は含まれていなかった。年齢は19±2歳で日本人ランナーより1歳若年だった(p=0.043)。

評価項目について

主要評価項目はトライアドおよびトライアドの各構成因子の有病率であり、具体的には、BMI、血清総トリヨードサイロニン(total triiodothyronine;TT3)、自己申告による摂食障害の既往、月経異常(初経遅延、月経不順の既往、および現在の稀発月経)、骨の健康不良(骨密度の低下、疲労骨折の既往)であった。骨密度や体組成は二重エネルギーⅩ線吸収法(dual energy X-ray absorptiometry;DXA)で測定した。

このほかに、連続する3日間(平日2日、休日1日)の食事記録、7日間の身体活動記録に基づき、エネルギー出納や利用可能エネルギー量が評価された。

日本人ランナーには低BMIや疲労骨折が多い

解析結果のうち、BMI(日本人19.5±1.8 vs 米国人20.3±2.2)、初経年齢(14±2 vs 13±1歳)、初経後の経過年数(6.3±1.9 vs 5.9±1.9年)、および月経周期(28±6 vs 30±7日)には有意差がなかった。一方、体脂肪率は日本人アスリートのほうが有意に低値だった(17.5±2.6 vs. 22.7±4.6%、p<0.001)。ただし、除脂肪体重(fat-free mass;FFM)には有意差がなかった。

トライアドの構成因子の比較

トライアドの各構成因子に関しては、以下のように有意差が認められた項目があり、総じて日本人ランナーのほうがハイリスクの傾向を示していた。

エネルギー不足

体重あたりのエネルギー摂取量は日本人ランナーのほうが多かった(43.1±8.3 vs 37.6±10.4kcal/kg/日、p=0.023)。一方でトレーニング時間は日本人ランナーのほうが長く(595±203 vs 315±161分/週、p<0.001)、運動によるエネルギー消費量が有意に多かった(中央値4,656 vs 3,242kcal/週、p=0.017)。除脂肪体重あたりの利用可能エネルギー量には有意差がなかった(32.3±13.2 vs 36.4±14.9kcal/kg FFM/日)。

月経異常

初経遅延、月経不順の既往、および現在の稀発月経については、いずれも両群間に有意差がなかった。これらのいずれか一つ以上が該当する割合も、日本人ランナーが92%、米国人ランナーが82%で有意差はなかった。

骨の健康不良

骨密度は、腰椎、股関節、大腿骨頸部において有意差が認められ、いずれも日本人ランナーのほうが低値だった。全身の骨密度は有意差がなかった。なお、体格差などを考慮してZスコアで比較した場合、股関節のみ有意差が観察され、日本人ランナーのほうが高値だった。Zスコアが−1.0未満(平均の1標準偏差未満)の割合は、全身および部位別でも有意差がなかった。

一方、疲労骨折の既往を有する割合は、日本人ランナーのほうが有意に高かった(64 vs 50%、p=0.003)。

その他(低BMI、摂食障害の既往、TT3)

上記以外の評価項目のうち、低BMI(18.5未満)の割合は日本人ランナーのほうが有意に高かった(55 vs 32%、p=0.035)。自己申告による摂食障害の既往(8 vs 9%)、総トリヨードサイロニン(TT3)80ng/dL未満の割合(28 vs 19%)は有意差がなかった。

トライアドの有病率にも有意差

続いて、保有しているトライアドの構成因子の数ごとに、該当者率を比較した。

まず、3因子のいずれか一つを保有するランナーの割合は、日本94%、米国95%とほぼ同等だった。次に、3因子のうち二つを保有するランナーの割合は、同順に75%、55%であり、日本人ランナーのほうが多いものの、群間差は有意水準未満だった(p=0.075)。

そして、トライアドの3因子すべてを有している割合(トライアドの有病率)は、42%、16%であり、日本人ランナーが有意に高かった(p=0.014)。

日本人ランナーはトレーニング量が多く、それに見合った栄養を摂取していない

論文ではこれらの結果から本研究のポイントとして、トライアドの構成因子ごとに以下のようにまとめられている。

エネルギー出納について

まず、エネルギー出納については、日本人ランナーは米国人ランナーよりもトレーニング量とエネルギー消費量が多く、かつ、体重あたりのエネルギー摂取量が多かった。その結果として、集団としてみた場合のエネルギーバランスは両群同等と考えられた。しかしそれにもかかわらず、体脂肪率が低く、低BMIの該当者が多いという有意差がみられたことから、エネルギー不足のリスクに直面しているランナーは日本人に多い可能性が考えられた。

また、これに関連して、米国のディビジョンIのアスリートにはトレーニング時間を制限する施策がなされているのに対し、日本ではそのような規制がないという違いに注視すべきと述べられている。

月経機能について

月経異常の有病率は日本と米国で有意差がなかった。しかし、月経異常を表す症状を有する割合は日本・米国を問わず極めて高値だった(前述のように92%と82%)。さらに、研究調査時点での稀発月経の割合が3割以上(日本35%、米国36%)を占めていた。著者らはこの点を「極めて憂慮すべき結果」と記している。

骨の健康状態について

骨密度に関しては複数の部位で有意差が観察され、日本人アスリートのほうが低値だった。しかし体格の差が調整されるZスコアでの比較では、ほぼ同等であった。それにもかかわらず疲労骨折の既往は日本人ランナーのほうが有意に多かった。これには、トレーニング量が多くエネルギー不足のリスクが高いことと、骨密度の低さが関与している可能性があるという。

性ホルモン分泌や文化の違いを考慮に入れた研究が求められる

以上、当研究の結果と考察を基に論文の結論は以下のように記されている。

「日本の女子ランナーは米国の女子ランナーに比較して、トレーニング量が多くて体脂肪が少なく、エネルギー不足につながるリスク因子を多く抱えていて、疲労骨折の既往を有する割合が高いことが示された。これは、日本人女子ランナーは米国人女子ランナーよりもトライアドのリスクが高いことを示唆している。トライアドの人種/民族的な差異はまだ十分に研究されておらず、性ホルモン分泌動態や文化的背景の違いも考慮し得るデザインでの検討、およびランナー以外のアスリートでの検討など、さらなる研究が必要とされる」

文献情報

原題のタイトルは、「Differences in female athlete triad risk factors between Japanese and American female runners: A comparative study」。〔PM R. 2026 Feb 11〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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