アスリートは健康なのか? 高血圧有病率は非アスリートと同等 スクリーニングと栄養介入の必要性を示唆
アスリートは健康的であり、非アスリートで多くみられる高血圧などは少ないと考えられがちだが、実際はそうではないことを示すデータが報告された。若年アスリートの高血圧有病率は、非アスリートと有意差がないという。この研究はカリフォルニアで実施されたもので、米国心臓病学会のジャーナル「JACC. Advances」に論文が掲載された。

アスリートは若年であることが多く、健診受診の機会が少ない
社会通念として、アスリートは厳しいトレーニングを重ねてきており、体力、健康に優れ、生活習慣病などは一般人口よりも少ないと理解されがちだ。しかし近年、アスリートにおける高血圧などの心血管疾患(cardiovascular disease;CVD)リスク因子の有病率が、決して低くないのではないかとの指摘が散見される。
アスリート集団は社会全体でみれば若年であり、公的な健康診断を受ける年齢に達していないことが多い。仮に、高血圧等のCVDリスク因子が生じていても、健診受診年齢まで見逃されてしまい、その長い間にCVDイベントリスクが蓄積してしまう可能性も考えられる。
よって、若いアスリートにおける高血圧の疫学データが重要だが、そのようなデータはほとんどみられない。これを背景として今回取り上げる論文の研究は、(1)若年者の高血圧の有病率の実態、(2)その有病率がアスリートと非アスリートで差があるかの検討、(3)アスリート集団において行っている競技により高血圧有病率に差があるか、(4)若年世代における高血圧のリスク因子――という4点の検討を目的に行われた。
ロサンゼルスでの若年者対象スクリーニングの結果を解析
研究には、ロサンゼルスにおける地域ベースのスクリーニングプログラムの参加者のデータが解析に用いられた。このスクリーニングへの参加は無料で、2016~2024年にわたって継続された(2020年3月~2021年9月は一時中止)。参加を促す際に用いた教育的メッセージではアスリートには突然心停止のリスクが高いことが強調されていたものの、アスリートをターゲットとした募集広告は行わず、9~35歳であればスポーツを行っているか否かにかかわらず参加可能だった。
スクリーニングには3,423人が参加し、年齢範囲が逸脱している人や既に高血圧と診断されている人などを除外して、1,987人を解析対象とした。解析対象者の年齢は平均16.2歳、中央値15.7歳、範囲9.5~34.2歳、男性51.7%、女性47.9%、その他0.4%であり、64.1%がスポーツに取り組んでおり、35.9%は取り組んでいなかった。
スポーツに取り組んでいる群において、行っている競技は、サッカー(9.50%)、陸上競技・クロスカントリー(7.14%)、バスケットボール(6.28%)、水泳・ダイビング(5.33%)、ダンス・体操・チアリーディング(5.18%)、アメリカンフットボール(4.88%)、テニス(3.22%)、野球・ソフトボール(3.02%)などだった。
若年アスリートの高血圧有病率は非アスリート集団と同等
血圧は、2017年の米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)のガイドラインに従って分類された。
その結果、非アスリート群では、正常(120/80mmHg未満)56.5%、血圧上昇(120~129/80)未満)24.0%、ステージ1高血圧(130~139/80~89mmHg)12.8%、ステージ2高血圧(140/90mmHg以上)6.78%であり、アスリート群は同順に59.9%、22.0%、11.5%、6.6%であって、高血圧の有病率に有意差はみられなかった(p=0.17)。
年齢と社会経済的地位が高血圧リスクに関与
次に、年齢、性別、BMI、人種/民族、社会経済的地位(居住地の平均世帯収入)、環境負荷(交通量、農薬使用量、有害廃棄物の近接性、言語的孤立、喘息による救急外来受診率など)、大気汚染(PM2.5)、アスリートか否かを高血圧予測因子として設定し、ロジスティック回帰分析を施行。
その結果、高齢であるほど高血圧リスクが高く(1歳につきOR1.093〈95%CI;1.059~1.269〉)、また社会経済的地位が低いことが高血圧リスクと有意に関連していた(高位群を基準として中位群はOR2.381〈1.360~4.169〉、低位群はOR2.095〈1.034~4.248〉)。
反対に、女性(男性に対してOR0.358〈0.291~0.440〉)、BMI低値(肥満を基準として過体重は0.369〈0.240~0.566〉、普通体重は0.198〈0.134~0.291〉、低体重は0.089〈0.056~0.141〉)は、高血圧リスクが有意に低かった。
一方、アスリートと非アスリートの比較では有意差はなかった(アスリート群を基準として非アスリート群はOR1.022〈0.825~1.265〉)。また、人種/民族、環境負荷、大気汚染も高血圧リスクとの関連が認められなかった。
行っている競技での比較では高血圧有病率に有意差なし
続いて、アスリート群において行っている競技により高血圧有病率が異なるかを検討した。
等尺性負荷の程度により、以下の3群に分類。低負荷の競技は、ゴルフ、野球/ソフトボール、バレーボール、サッカー、テニスなどで38.1%。中負荷の競技は、アメリカンフットボール、陸上競技・クロスカントリー、水泳・ダイビング、ホッケー、バスケットボール、ラクロスなどで47.3%。高負荷の競技は、ダンス・体操・チアリーディング、ウェイトリフティング、格闘技、レスリングなどで14.5%。なお、この分類にあてはまらない競技を行っているアスリート、複数のカテゴリーに当てはまる競技を行っているアスリートは、この解析から除外した。
解析の結果、この3群間で、血圧値分類の分布に有意差はなかった。
若年アスリート対象の高血圧スクリーニングと栄養介入が必要
著者らは、「CVDリスクが低いとみなされることの多い若年アスリートに対して、包括的なスクリーニングと早期介入戦略の必要性があることを、本研究結果は強調している。早期介入は、適切な栄養、ストレス管理、メンタルヘルスのサポート、健康的な睡眠習慣の促進など、ライフスタイルの変更に焦点を当てるべきである。これらの修正可能なリスク因子に対処することで、この集団における高血圧に関連する長期的なCVDリスクを抑制できる可能性がある」と総括している。
また、「社会経済的格差やBMIの上昇によりリスクにさらされている集団に対しても、スクリーニングの対象とすることを支持する結果が得られた」と付け加えられている。
文献情報
原題のタイトルは、「Prevalence of Hypertension in Young Athletes: A Community-Based Screening Analysis」。〔JACC Adv. 2026 Jan;5(1):102472〕
原文はこちら(American College of Cardiology Foundation)







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