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特定健診・保健指導のこれまでとこれから 非肥満ハイリスク者などの課題を考える

“メタボ健診”と呼ばれ日本の社会に定着した健診制度である「特定健康診査・特定保健指導」の歴史と現状を総括した総説が、日本動脈硬化学会発行の英文ジャーナル「Journal of Atherosclerosis and Thrombosis」に掲載された。慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室の平田あや氏、内田智絵氏によるもので、同健診制度の今後の在り方についても述べられている。特定健診・特定保健指導の仕組みそのものは国内居住者であれば既によく理解していると思われるため、ここではそれ以外の情報を中心に要旨を紹介する。

特定健診・保健指導のこれまでとこれから 非肥満ハイリスク者などの課題を考える

過去40年間の日本の健診制度の変遷

1982年に制定された老人保健法に基づき、40歳以上の住民を対象とした市町村による健診がスタートした。これは、国民の健康レベルの改善には、高齢期に好発するさまざまな疾患の早期発見と中年期からの予防が重要であるとの理解に基づくものであった。この健診制度は、当時、いまだに日本人の死因のトップを占めていた、高血圧を主因とする脳血管疾患の抑制に貢献した。

その後、急速な高齢化が進展し、かつ人々の生活習慣が変化したことに伴い、国内の疾病構造が変わってきた。具体的には、糖尿病をはじめとする代謝性疾患とそれによる心血管疾患が増加してきた。それらの疾患は「生活習慣病」と位置づけられ、生活習慣病の抑制が公衆衛生上の課題とされて、2000年に「21世紀における国民健康づくり運動」、いわゆる「健康日本21」が開始された。健康日本21は生活習慣病の一次予防を主眼とし、食事や運動等の生活習慣、および生活習慣病関連の検査値異常の頻度等に関する数値目標が設定された。

こうしたなか、生活習慣病のハイリスク者を早期に検出し、かつ効果的な保健指導の実施も含めて制度化された「特定健康診査・特定保健指導」が、2008年にスタートした。この特定健診・保健指導では、心血管代謝疾患の主要な原因は内臓脂肪の過剰蓄積によるメタボリックシンドローム(Mets)であるとの認識の下で、保健指導該当者には内臓脂肪型肥満の改善に焦点を当てた介入が行われている。そして2024年からは第4期に入り、アウトカムをより重視したものになっている。

特定健診・保健指導の有効性に関するエビデンス

特定健診・保健指導について、その有効性を裏付けるエビデンスが増加している。

例えば、40~79歳の国民健康保険受給者4万8,775人を約11年間追跡したところ、特定健診受診者は受診していない人よりも死亡リスクが低く、全死因死亡の多変量調整ハザード比は、男性で0.74(95%CI;0.62~0.88)、女性は0.69(0.52~0.91)とリスクが低く、心血管死も男性において0.65(0.44~0.95)と低リスクだった(女性は0.61〈0.36~1.04〉)。

保健指導についても、体重やウエスト周囲長の有意な減少が示されている。そして、同制度が主眼としているMetsの改善も、保健指導参加者でより多く認められている(調整オッズ比1.31〈1.29~1.33〉)。

さらに国民の健康の維持のみでなく、医療コストの抑制という視点でも、同制度が好ましい変化を起こしていることが示唆されている。統計学的なシミュレーションにより、保健指導の対象者1人あたり医療コストが5万3,014円減少し、質調整生存年(quality-adjusted life years;QALY)が0.044増加したという推計の報告がある。

特定健診・保健指導の課題と方向性

特定健診・保健指導の肯定的なエビデンスがある一方で、いくつかの限界も指摘されている。

まず、介入による長期的な効果は、一部の集団では限定的なものにとどまる可能性がある。また、本制度は内臓脂肪型肥満に焦点を当てていることから、肥満ではないにもかかわらずリスクが重複している人に適切な介入がなされていない可能性がある。

後者については例えば、10件の前向きコホート研究から得られた40~74歳の成人2万9,288人のデータ解析から、心血管リスク因子を2項目以上有する非肥満者は、同数のリスク因子を有する肥満者と同様にイベントリスクが高いことが示されている。また、40~74歳の国民健康保険加入者36万6,881人を対象とした解析からは、代謝リスク因子の数と脳卒中リスクとの正の関連が示され、とくに65歳未満の非高齢者(該当リスク因子数が1でHR2.21、2で2.60、3で3.93)と女性(同順に1.49、1.57、2.27)においては、肥満でなくてもその傾向が顕著であり、冠動脈疾患についても同様の傾向が認められた。これらの知見は、肥満の有無にかかわらず、リスク因子の蓄積を適切に評価し何らかのアプローチを行う必要性を浮き彫りにしている。

厚生労働省の報告によると、2022年度には特定健診対象者の58.1%にあたる約3,017万人が健診を受診し、保健指導対象者の26.5%にあたる約135万人が指導を受けた。ただしこれらの割合は、被保険者が加入している健康保険組合の種類によって異なる。また、近年これらの割合が徐々に増加してきているものの、さらに参加率を向上させることが重要な課題となっている。

特定健診・保健指導の有効性をより高めるには、リスクの層別化をさらに洗練させる必要があるだろう。そして、保健指導でよいのか医療機関の受診勧奨をすべきなのかといった、介入強度の判定もより適格なものにすることや、長期的なアウトカムに関する研究の充実も求められる。

これらの取り組みは、日本人全体の心血管疾患リスクを抑制するための戦略として欠かせないものと言えるだろう。

文献情報

原題のタイトルは、「The Specific Health Checkups and Specific Health Guidance Program: A Strategy for the Prevention of Cardiovascular Disease in Japan」。〔J Atheroscler Thromb
. 2025 Dec 20〕
原文はこちら(J-STAGE)

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