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生成AI支援スマホアプリでフレイル高齢者の食事の質が向上 東京都での準実験的研究の報告

フレイルに該当する高齢者に対して、生成AIを援用するスマホアプリを用いた介入によって、対象者の食事の質を改善し得るとする研究結果が報告された。昭和女子大学大学院生活機構研究科生活科学研究専攻の黒谷佳代氏らの準実験的研究によるもので、論文が「Geriatrics」に掲載された。

生成AI支援スマホアプリでフレイル高齢者の食事の質が向上 東京都での準実験的研究の報告

フレイル対策のキーとなる食事をICTで改善できるか?

フレイルの予防や改善において食事は運動とともに、重要な修正可能因子であることが明らかになっている。高齢者では、食事多様性スコア(Dietary Variety Score;DVS)が高いほど、低栄養、機能低下、死亡リスクが低いという関連のあることも報告されている。しかし、高齢者は一般的に社会参加の機会が限られていて、栄養指導へのアクセスも限られている。さらに、社会参加の機会が少ないこと、つまり孤立や孤独もフレイルのリスクを押し上げる重要な因子であり、そのような状況にある高齢者は、より一層、栄養介入を受ける機会が減少すると考えられる。

一方、近年の情報通信技術(ICT)の急速な進歩はさまざまな課題解決の可能性を秘めており、食事の質や孤立・孤独という課題についてもICTを活用した介入を行う環境が整いつつある。ただし、このような手法の有効性や実現可能性は十分検討されておらず、とくに高齢者のフレイル改善における有用性は、これまで検討されていない。

以上の状況を背景として黒谷氏らは、都内の地域在住高齢者を対象とする準実験的研究(無作為化なし)を実施した。

フレイルに該当する高齢者に3カ月間のスマホアプリ介入効果を検討

この研究の対象は、65歳以上の一般住民から募集された高齢者。医療管理下にあり食事療法を行っている患者や、スマホの基本的な操作(テキスト入力、写真撮影など)ができない人を除外し、29人が参加。これら参加者を介入群11名、対照群18名に振り分けた。ベースラインでの基本チェックリストによる評価により、参加者全員がスコア8以上でありフレイルであることが確認された。

介入群に対しては以下の介入を3カ月間実施し、対照群はその間、いかなる介入も行わなかった。

ICT活用によって、直接的なコミュニケーションを最小限に抑えた介入を実施

介入群は4~7人のグループに分けられ、最初は対面セッションにより、食事多様性スコア(DVS)を意識した食事を摂取するような教育と、スマートミール(生活習慣病関連学会が参画している一般社団法人健康な食事・食環境コンソーシアムにより高品質と認証された食事)の紹介、および、新たに開発されたスマホアプリ(食事交換日記)の使用法を伝えた。

介入群の研究参加者は3カ月間にわたり、摂取した食事をすべて写真撮影し、週単位でアップロードした。その写真はグループ内で共有され、互いにコメントを書き込み交流促進に用いられた。また、地元の食料品の販売店の情報などもアプリを通じて交わされた。

さらに、アップロードされた写真は生成AI(ChatGPT)によりDVSが評価され、改善点などのアドバイスが生成された。その評価結果とアドバイスの内容は管理栄養士がチェック・修正したのち、参加者にフィードバックされた。

論文中ではこのような介入手法の特徴として、「医療スタッフと対象者との直接的なコミュニケーションは最小限に抑えられ、参加者同士の情報交換がコミュニケーションの中心に位置づけられていた」と述べられている。

評価項目について

主要評価項目は、厚生労働省・農林水産省「食事バランスガイド」の遵守状況であり、同氏らが以前に開発した食事バランスガイドスコア(Japanese Food Guide Spinning Top Score)により評価した(DOI: 10.1136/bmj.i1209)。このスコアは範囲0~70点で、点数が高いほど食事バランスガイドを遵守した食事であることを意味する。

副次評価項目は、孤独感、体重、BMI、皮膚カロテノイドスコアの4項目とした。孤独感の評価には、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で開発された指標を用いた。なお、皮膚カロテノイドスコアは近年、野菜や果物の摂取量の非侵襲的な代理マーカーとして利用されつつある。

介入群は3カ月後の食事の質が良好で、群間に有意差

介入群は74.6±5.5歳、BMI21.9±2.9で全員女性であり、食事バランスガイドスコアは43.7±9.8であった。対照群は79.2±6.5歳、BMI21.9±1.6、女性94.4%、食事バランスガイドスコア45.6±6.8だった。研究参加者全員が脱落せず追跡評価を受けた。

年齢、教育歴、降圧薬服用、およびベースラインの食事バランスガイドスコアを調整後、主要評価項目である追跡評価における食事バランスガイドスコアは、介入群49.0±2.6、対照群39.5±2.0であり、群間差9.5(95%CI;2.3~16.7)と統計的に有意であった(p=0.01)。

一方、副次評価項目はすべて有意差がみられなかった。

介入群は穀類、食物繊維、微量栄養素の摂取量が多く、菓子類は少ない

簡易型自記式食事歴質問票(brief-type self-administered diet history questionnaire;BDHQ)を用いた検討の結果、追跡評価における食品群ベースの比較では、介入群は穀類の摂取量が多く(調整平均差83.4g/日〈95%CI;20.3~146.4〉)、菓子類の摂取量は少なかった(同-29.7g/日〈-51.4~-7.9〉)。その他の食品群の摂取量は有意差がなかった。

栄養素ベースの比較では、介入群はカリウム、カルシウム、βカロテン、ビタミンK、葉酸、食物繊維の摂取量が、対照群より有意に多かった。

高齢者の中でもより高齢の集団はアプリ操作を難しいと回答

スマホアプリの操作の難易度については、約45%が「とても簡単」または「どちらかと言えば簡単」と回答し、同じく約45%が「どちらかと言えば難しい」と回答した。難しいと回答した人は平均75.6歳であり、簡単と回答した人(66.0歳)より高齢だった。

著者らは本研究の特質すべき点として、参加者全員が脱落せずに追跡調査を終了したことを挙げ、「スマホアプリなどのICTを活用した介入が、高齢のフレイル該当者にも適用できることを示している」と述べている。

サンプルサイズが小さいこと、割り付けを無作為化していないこと、追跡期間が3カ月と限られていることともに、副次評価項目には有意差が認められなかったことなどは解釈上の留意点であるとしたうえで、結論は「AI支援型スマホアプリが、フレイルに該当する地域在住高齢者の食事の質を向上させる有望なツールとなり得る、初期段階のエビデンスを得られた」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「An Artificial Intelligence-Assisted Smartphone Application for Improving Dietary Quality Among Frail Older Adults: A Quasi-Experimental Study」。〔Geriatrics (Basel). 2025 Dec 4;10(6):160〕
原文はこちら(MDPI)

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