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バイアスロン競技特有のエネルギー需要の高さ、回復時間の短さ、精密射撃の持続などを踏まえた栄養戦略

バイアスロン選手の栄養戦略をナラティブレビューとして総括した論文が発表された。雪上での持久力とともに、射撃というテクニカルな能力も求められる特異性に対応するための最適な栄養素摂取方法を、これまでの研究報告から探った内容。一部を紹介する。

バイアスロン競技特有のエネルギー需要の高さ、回復時間の短さ、精密射撃の持続などを踏まえた栄養戦略

バイアスロンの特異性を考慮して文献を検索

バイアスロンは1960年の冬季オリンピックで正式種目となった、断続的な持久系スポーツ。クロスカントリースキーとライフル射撃を組み合わせた競技で、高い有酸素能力と巧緻な射撃能力が求められる。勝敗は、スキーの速度、射撃に要する時間、射撃の精度などの複数の因子によって総合的に決まる。

エネルギー需要が極めて高く、大会では複数のレース間の短期間(一般的に24時間未満のことが多い)での回復を要し、かつ精密な射撃のための微細な運動を阻害しない栄養戦略が必要とされる。それにもかかわらず、これまでバイアスロンに特化した栄養に関するエビデンスはほとんどなく、現状では他の持久系競技の研究での知見を援用している。しかし、寒冷で高地で行われるという一点のみでも、他の競技のエビデンスをそのまま外挿可能とは考えにくく、バイアスロンに特異的な栄養戦略の探索が必要とされている。

以上を背景として、この論文の著者らは、ナラティブレビューにより知見の総括を試みた。著者らは、バイアスロンに特化した研究は非常に少ないため、システマティックレビューの実施はできないことから、ナラティブレビューという手法を採用したと述べている。

PubMedとGoogle Scholarを用いて、2024年12月までに発表された研究論文を検索した。検索キーワードとして、バイアスロン、栄養、サプリメント、生理学などを用いた。バイアスロンの研究はわずかであるため、クロスカントリースキーなどの関連性のある競技での研究も採用した。査読システムのないジャーナルの論文、栄養と関連のない症例報告、持久力またはテクニカルパフォーマンスと関連のない研究報告は除外した。

トレーニングのための栄養

エネルギー要件

バイアスロン選手のエネルギー消費量を評価した研究はない。クロスカントリースキーでの研究によると、1日に2回のトレーニングセッションを含むことが多い準備期間中のエネルギー消費量は4,800~6,000kcal/日であり、55~75kcal/kg/日の摂取が推奨されている。ただし、競技レベルで異なり、またジュニア期もこれが当てはまらない可能性がある。

クロスカントリースキーとバイアスロンはどちらもスキーで走行するが、バイアスロンは背中にライフルを背負うため、身体的負荷が異なると考えられる。ライフル(約4kgの荷重)を担ぐと、平均で約7%、エネルギーコストが上昇することが示唆されている。

エネルギー産生栄養素

炭水化物

バイアスロン選手はトレーニングプログラムに応じて6~12g/kg/日の炭水化物を摂取する必要がある。典型的な場合、1日に2回のトレーニングセッションを行い、セッション間のインターバルは4~6時間であり、セッション直後の回復を優先することが推奨される。よって運動直後に1.2g/kgの炭水化物を摂取し、摂取量が不十分な場合は0.3g/kgのタンパク質を摂取すると、グリコーゲン再合成速度が向上することが示されている。

タンパク質

1日2回のトレーニングを行うバイアスロン選手は、タンパク質摂取のタイミングに関する現行のガイドラインを遵守することが推奨される。つまり、トレーニングや競技の直後に、0.3g/kg(高品質タンパク質約20~25g)を摂取する必要がある。これにより、体タンパク質合成反応が最適化される。1日の推奨摂取量は約1.6g/kgであり、これを達成するには3~4時間ごとに約0.3g/kgの高品質タンパク質を含む食事を摂取することが推奨される。ただしこれは、他の持久力系アスリート全般のデータから外挿されたものであることに留意が必要。

微量栄養素

バイアスロン選手は通常、摂取エネルギー量が多いため、微量栄養素の欠乏は一般的にみられない。ただし、競技特性から日光への曝露が不足しがちであり、ビタミンDや鉄の不足に注意が求められる。なお、持久系アスリートに鉄とビタミンDの不足が多いことはよく知られているものの、バイアスロン選手でのデータはなく、エビデンスに基づくのではなく経験に基づく対応が中心となる。

寒冷と高地への対応

バイアスロンは冬季の寒冷かつ高地の屋外で行われる。体温を維持するために、エネルギー需要が高くなり、かつ高地ではエネルギー基質の変化が起こり、糖への依存が高くなる。そのためエネルギーと炭水化物の適切な摂取がより重要となる。

また、高地では赤血球の鉄需要が増加するため、鉄不足のリスクが高まる。そのため高地への移動の3~6週間前に、血液スクリーニング検査を実施する必要があり、高地滞在中は200mgの鉄剤の経口投与も推奨される。ただし鉄剤投与は、スポーツドクターの判断を要する。

論文では上記のほかに、体格・体組成を維持・向上するための栄養戦略、競技期間中の栄養戦略、サプリメント戦略などについて、他の競技でのエビデンスを援用した推奨が述べられている。結論は、「バイアスロンの栄養戦略に関する研究は不足しており、バイアスロン特有のデータが得られるまでは、一般的な持久系競技での栄養の原則を基に、競技特異的な要件を加味して慎重に調整する必要がある」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutritional Strategies for Olympic Biathletes: A Practical Review」。〔Nutrients. 2025 Oct 28;17(21):3385〕
原文はこちら(MDPI)

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