血漿BCAAレベルと心血管疾患リスクの関連を検証 ライフスタイル介入試験の縦断解析
血漿中の分岐鎖アミノ酸(BCAA)の上昇が、インスリン抵抗性や炎症マーカーの上昇、およびリポ蛋白プロファイルの好ましくない変化と関連しているとするデータを紹介する。米国で行われた、血圧が至適レベルでなく降圧薬を服用していない一般住民対象への生活習慣介入研究(PREMIER研究)のデータを縦断的に解析したもの。

BCAA摂取と心血管代謝リスクの関連を検証
ロイシン、イソロイシン、バリンという分岐鎖アミノ酸(branched chain amino acids;BCAA)は、タンパク質合成を含むさまざまな生物学的プロセスに重要な役割を果たす必須アミノ酸であり、サプリメントとして摂取しているアスリートも少なくない。このBCAAは、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mammalian target of rapamycin;mTOR)経路を活性化する可能性があり、インスリン感受性低下、炎症、酸化ストレス、トリグリセライドの上昇につながることを示唆する報告がある。また、複数の疫学研究において、血漿中のBCAAの高さが心血管代謝リスクの高さと関連があることが報告されている。
さらに、日本とブラジルのコホート研究で、ベースラインのBCAAレベルの高さが追跡調査時点でのインスリン抵抗性の高さと関連していたとする縦断的解析の報告がある。しかし、BCAAと心血管リスクマーカーとの関連を示した研究の多くは横断的デザインで検討されてきており、因果関係は確立されていない。そこで今回取り上げる論文の研究では、米国で実施された生活習慣介入研究(PREMIER研究)のデータが縦断的に解析された。
縦断的研究で血漿BCAA濃度の上昇とインスリン抵抗性、炎症などが関連
PREMIER研究は他施設共同無作為化比較試験として行われ、降圧薬を服用しておらず血圧が至適レベルでない(収縮期血圧120~159/拡張期血圧80~95mmHg)、25~78歳の健康な一般住民810人を無作為に3群に分け、アドバイスのみ、一般的な生活習慣改善介入、一般的な生活習慣改善介入+血圧管理のための食事療法(dietary approaches to stop hypertension;DASH)介入を実施して、6カ月後に血圧等の変化が検討されていた。
今回取り上げる論文では、6カ月の介入期間中の血漿中のBCAA濃度の変化と、同じく6カ月の介入期間中の心血管代謝リスク因子の変化との関連が検討された。
解析対象者の特徴
PREMIER研究参加者は、心血管疾患・癌・腎不全・糖代謝異常の既往、降圧薬・減量薬・経口ステロイドの服用者、習慣的多量飲酒(週に21杯以上)者は除外されており、今回の解析対象はデータ欠落者を除外し708人だった。主な特徴は、女性61.7%、年齢は41~60歳が74.2%と多くを占め、40歳以下は13.3%、61歳以上は12.6%であり、BMIは33.06±5.68だった。また、血漿総BCAAは449.33±74.58μmol/L、ロイシンは146.64±29.758μmol/L、イソロイシンは62.89±14.338μmol/L、バリンは239.78±37.00μmol/Lだった。
解析に際しては、年齢、性別、人種、婚姻状況、居住地域、PREMIER研究における割付け、ならびに介入期間中のBMI変化を交絡因子の候補として検討した。しかし、これらを調整しても推定された関連性に実質的な影響は認められなかったため、最終モデルには含めなかった。
BCAAレベルの上昇幅の大きいほどHOMA-IRの上昇幅などが大きい
多重検定を考慮して偽発見率(false discovery rate;FDR)調整を行ってQ値を算出した結果、介入6カ月間でBCAAレベルの上昇幅が1標準偏差(SD)大きいごとに、インスリン抵抗性(HOMA-IR:β=0.22、標準誤差〈SE〉=0.07)や、炎症マーカー(糖タンパク質のアセチル化:β=0.03mmol/L、SE=0.004)が上昇するという関連が認められた(いずれもQ<0.01)。
また、リポ蛋白プロファイルに関しては、アポリポタンパク質B(ApoB:β=0.02g/L、SE=0.006)および超低比重リポタンパク質コレステロール(VLDL-C:β=0.03mmol/L、SE=0.007)が上昇するという、催動脈硬化性変化が認められた(いずれもQ<0.01)。高比重リポタンパク質コレステロール(HDL-C)およびトリグリセライド(TG)の変化と血漿BCAAレベルの変化との関連は、バリン、ロイシン、イソロイシンで異なっていた。
全体として介入期間中に血漿BCAAが上昇していることは心血管代謝にとって好ましくない変化、血漿BCAAが低下していることは心血管代謝にとって好ましい変化と関連していた。なお、空腹時血糖値および血圧の変化との関連は、有意でなかった。
今後の研究ではBCAAを個々に検討すべき
以上より論文の結論は、「PREMIER研究に参加した米国成人において、血漿中BCAAの減少が、炎症(糖タンパク質のアセチル化)、インスリン感受性(HOMA-IR)、脂質プロファイル(VLDL-CおよびApoB)を含む心血管疾患バイオマーカーの改善と関連していることを示唆している」と総括されている。
また、脂質関連プロファイルに関しては、バリン、イソロイシン、ロイシンがそれぞれ異なる影響をもたらす可能性が示唆されたことから、「今後の研究では、総BCAAとともに個々のBCAAを考慮する必要がある」と提言。加えて、「本研究は、BCAAが心血管疾患および2型糖尿病の予防における治療標的となる可能性を強調するものだ」としたうえで、「BCAAの低下と代謝改善を結びつける生物学的メカニズムの解明のため、さらなる研究が必要とされる」と付け加えられている。
文献情報
原題のタイトルは、「Plasma Branched-Chain Amino Acid and Cardiovascular Disease Risk Factors: A Longitudinal Analysis of a Lifestyle Trial」。〔J Clin Endocrinol Metab. 2025 Sep 16:dgaf509〕
原文はこちら(Oxford University Press)







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