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子どもの脚の速さを決定する要因は、成長期の途中で「身体の大きさ」から「筋力」へ劇的に変化する 岩手大学

子どもの「脚の速さ」を決める要因が、成長の過程で劇的に変化することが明らかになった。成長過程の前半は脚の長さ、後半は筋力や筋肉の厚さが要因になるという。岩手大学や中京大学の研究グループの研究によるものであり、「European Journal of Sport Science」に論文が掲載された。

過去58年間にわたる小学生の体力・運動能力の変化と、それに影響を及ぼした因子の推測

研究の概要:子どもの脚の速さを決める要因が成長とともに変化

本研究グループは、7~18歳の男子サッカー選手を対象に、走能力の発達と身体的成熟の関係を調査し、成熟のピークを過ぎた特定の時期を境に、いわゆる「脚の速さ」を決める要因が劇的に変化することを明らかにした。

研究では、身長が最も伸びる年齢(PHV)※1からの経過年数を用いて解析を行った。その結果、PHVの約1.1年後(PHV+1.1年)に発達の「転換点(ブレークポイント)※2」が存在し、それ以前は主に脚の長さ(身体形態)が走能力を決定する主要因であり、転換点以降は筋力や筋肉の厚さ(神経筋機能)が主要因であることが判明した。

これは、成長期の前半は身体の大きさがパフォーマンス向上に直結するのに対し、後半では神経系や筋機能の向上がより重要になるという、発育段階に応じた決定要因の「シフト」が起きていることを示唆している。

本成果により、子どもの発育段階を見極めたうえでのトレーニング処方や、将来性を見据えたタレント発掘への応用が見込まれ、科学的根拠に基づいた長期的なアスリート育成システムの構築に向けて重要な知見といえる。

※1 PHV(Peak Height Velocity):成長期において、身長の伸び(発育速度)がピークに達する年齢のこと。いわゆる「成長スパート」の頂点を指し、発育発達研究において、子どもが成熟のどの段階にいるかを判断する重要な基準点となる。
※2 ブレークポイント(Breakpoint / BP):データの傾向が不連続に変化する「転換点」のこと。本研究では、走速度の発達傾向を統計的に解析し、MOが「PHV+1.1年」の時期に、速度向上のメカニズムが切り替わる明確な転換点が存在することを突き止めた。

研究の背景:子どもの走能力の成長の決定要因はどのように変化するのか?

子どもの走能力は、発育発達に伴い著しく向上するが、思春期周辺でその向上が停滞する現象が知られている。これまで、走る速さを決定する要因として「脚の長さ(ストライド)」や「脚の回転数(ピッチ)」の重要性が議論されてきたが、これらが身体の成熟(生物学的年齢)に伴いどのように変化し、どの時期に決定要因が切り替わるのかについては十分な科学的知見が得られていなかった。とくに、身長が急激に伸びる時期(成長スパート)の前と後で、身体的特徴や筋力が走能力に与える影響がどう変化するのかは未解明だった。

研究内容:男子サッカー選手98名の成熟度と走能力を調査

7~18歳の男子サッカー選手98名を対象に、身体的成熟度と走能力の関係を横断的に調査した。

実験では、30m走のタイム計測および高速度カメラを用いた動作解析に加え、超音波画像診断装置による大腿部(外側広筋・中間広筋)の筋厚測定、および膝伸展筋力の測定を行った。解析にあたっては、暦年齢ではなく、身長が最も伸びる年齢(PHV)からの経過年数(Maturity Offset)※3を算出し、発達の傾向が変化する「転換点(ブレークポイント)」を統計学的に探索した。

※3 Maturity Offset(MO):暦年齢(生まれた時からの年齢)から、「身長が最も伸びる年齢(PHV)」を引いた値のこと。例えば、PHVが13.0歳の子どもが現在14.1歳であれば、MOは「+1.1年」となる。単なる年齢よりも、個人の身体的な成熟度(生物学的年齢)を正確に評価できる指標として用いられる。

研究成果:PHV+1.1年を境に決定要因が劇的に変化する

解析の結果、走速度の発達における転換点(ブレークポイント)が、PHVの約1.1年後(PHV+1.1年)に存在することが明らかになった。この時期を境に、脚の速さを決定する要因が劇的に変化していた(図1)。

図1 身体の成熟に伴う走速度の発達過程を示すグラフ

身体の成熟に伴う走速度の発達過程を示すグラフ

黒の破線は成長スパートから+1.1年の成熟度を示しており、この前後で走能力の発達傾向や、決定要因が変化している。(Okudaira et al., European Journal of Sport Science, 2026より転載)
(出典:岩手大学)

ブレークポイント以前(PHV+1.1年未満)では、主に「脚の長さ」が長いことでストライドが伸び、それによって速度を高めていた。一方、ブレークポイント以降(PHV+1.1年以降)では、脚の長さによる影響が低下し、代わりに「筋力」や「筋厚」といった神経筋機能の高さが、ピッチを高めることで速度を決定づける主要因になることが判明した。

今後の展開:子どもの成熟段階に合わせた最適な育成プログラム構築へ

本研究により、成長期の子どもの走能力は、ある時期を境に「身体の大きさ依存」から「筋機能依存」へと決定要因がシフトすることが示された。この知見は、タレント発掘において早熟な子どもの身体的有利さを過大評価しないための指標となるほか、トレーニング処方への応用が期待される。

具体的には、転換点以前は身体操作や動作スキルの習得を優先し、転換点以降に本格的な筋力トレーニングを導入するなど、個々の成熟段階に合わせた最適かつ効果的な長期育成プログラムの構築に貢献する。

関連情報

子どもの「脚の速さ」を決定する要因が、成長期の途中で大きく転換することを解明(岩手大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Determinants of Sprint Ability Change During Maturation in Developing Children」。〔Eur J Sport Sci. 2026 Feb;26(2):e70133〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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