超耐久スポーツに潜むREDsの実態 生理面だけでなく心理面のケアが必要 文献レビュー
競技時間が数時間や数日、またはそれ以上に及ぶことのある超耐久スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)の実態を、文献レビューにより検討した論文を紹介する。著者らは、超耐久スポーツでのREDsは、エネルギーバランスの傾きといった生理学的側面にのみ注視するのでは不十分で、心理学的側面に焦点をあてる必要があるのではないかと述べている。

相対的エネルギー不足(REDs)とは
特集「REDsを知る・見つける・治す・予防する」超耐久スポーツ(UES)の特徴とREDsリスク
ウルトラマラソンなどの超耐久スポーツ(ultra endurance sport;UES)は、一般的に競技時間が6時間以上続き、生理学的および心理学的に多大な負荷がかかる。当然、エネルギー需要は高く、炭水化物を体重1kgあたり12g以上、タンパク質は2g以上が必要になることがある。消費エネルギー量はルートや気候などのレース条件により大きく異なるが、1日あたり3,000~8,000kcalの範囲という報告がある。
また、UESに参加しているアスリートはもちろんのこととして、競技会参加日だけでなく、ふだんからハイボリュームのトレーニングを行っている。そして、UESアスリートの特徴として、レクリエーションレベルとエリートレベルのトレーニング量が近接していることが挙げられる。ある報告では、レクリエーションレベルでも週13時間以上のトレーニングを行っていて、エリートアスリートのボリュームに匹敵するとしている。
このような際立った特徴のあるUESという競技に参加しているアスリートは、利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)やスポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sport;REDs)、乱れた食行動(disordered eating;DE)、摂食障害(eating disorder;ED)などのリスクが高いことが懸念される。しかし、それらに関する情報は十分でないため、この論文の著者らは文献レビューによる検討を行った。
文献検索について
文献検索には、ScopusとPubMedという2種類の文献データベースを用いた。検索キーワードは、超持久力、トライアスロン、ウルトラマラソン、ウルトラサイクリング、ウルトラスイミング、LEA、RED、DE、ED、女性アスリートの三主徴(トライアド)などを用い、1名の研究者が検索。包括基準は、超持久力競技(競技時間が6時間以上と定義)の競技会に向けてトレーニングを行っているアスリートを対象とする、定量的または定性的研究の英語論文として、症例報告も含めた。一方、エディトリアル、論説、書籍、研究対象アスリートの競技時間を明示しておらず超耐久スポーツ(UES)に該当するか否か判断不能の報告などは除外した。
重複削除後に2名の研究者がタイトルと要約に基づくスクリーニングと全文精査を実施。採否の意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決した。また、抽出された論文の参考文献についてGoogle Scholar等でのハンドサーチを行った。
最終的に16件の報告を適格と判断した。これらのうち10件(62.5%)は定量的データを報告し、6件(37.5%)は定性的解析の報告または症例報告だった。定量的研究のうち、7件(43.8%)は心理学的側面の評価を採り入れ、5件(31.3%)は生理学的側面から検討していた。定性的研究では、半構造化面接を用いた研究が3件、症例報告が1件、ケースシリーズが1件、ナラティブレビューが1件だった。
UES選手のDE、ED、LEA、EXD等の実態
本研究では定量的解析は行われておらず、ナラティブレビューのかたちをとっている。その一部を抜粋して紹介する。
女性超持久力アスリートの65%が利用可能エネルギー不足(LEA)
まず、女性のみを対象とした研究からは、306人の女性ウルトラマラソン選手を対象とした調査では26.8%が摂食障害(ED)の潜在的なリスクが認められ、5.2%はEDに該当する可能性があると報告されていた。また別の研究では、202人の女性超持久力アスリートを対象とする調査により、65%が利用可能エネルギー不足(LEA)のリスクを有しており、23%が運動依存(exercise dependence;EXD)のリスク状態で、21%に乱れた食行動(DE)のリスクが認められたという。
男性も含む研究からは、1,899人の男性と女性のトレイルランナーとウルトラランナーを対象とする調査で、43%にLEAのリスクがあり、同じく43%にDEのリスクが認められ、87.3%がEXD関連症状を示していたと報告されている。別の研究では、マスターズトレイルランナーとウルトラランナー1,021人において、女性の46%、男性の32%にDEのリスクがあり、またEXDに関しては女性の80%と男性の79%にリスクがみられるとしていた。
ほかにも、53人の男性サイクリスト対象の研究からEXDとEDリスクは正の相関関係にあること、123人のウルトラマラソンランナーを対象とした研究から女性の61.1%と男性の29.2%が三主徴(トライアド)のリスク状態にあることなどが報告されていた。また、24人の男性オープンウォータースイマー12人を対象とした研究では、エネルギー収支がマイナス(-435.4~-458.1kcal)であり、マクロ・ミクロ双方の栄養素が推奨量を下回っていることが示されていた。
心理的苦痛と葛藤
定性的研究からは、UESアスリートは全体的に、パフォーマンスや外見へのプレッシャー、失敗への恐怖、アスリートとしてのアイデンティティーの管理、REDsの症状や対処上の懸念から、心理的苦痛を感じていることが報告されていた。アスリートたちは、自分たちの健康や幸福に有害な行動をしていると知りながら、REDsを改善するために何もしていないという心理的苦痛も示していた。
これらの考察を基に論文の結論には、「UESにおけるREDに関する既存の研究は、アスリートのエネルギー利用およびその補給の複雑さを理解するために、多くの知見を提供してきている。しかし、UESアスリートを十分にサポートするにはケアの範囲を広げ、心と体の相互関係を認識することが必要ではないか」と述べられている。
文献情報
原題のタイトルは、「Exploring the presentation of REDs in ultra endurance sport: a review」。〔J Eat Disord. 2025 Sep 26;13(1):210〕
原文はこちら(Springer Nature)







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