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スポーツ審判員の約2割が不安や抑うつ傾向 年齢・女性であること・経験・試合スケジュールなどがリスク

スポーツの審判のメンタルヘルスの実態をシステマティックレビューとメタ解析で検討した研究の報告を紹介する。不安や抑うつ症状の有病率、およびそれらのリスク因子と保護因子が明らかにされている。

スポーツ審判員の約2割が不安・抑うつ 年齢・女性であること・経験・試合スケジュールなどがリスク

スポーツの審判員のメンタルヘルスの実態にシステマティックレビューで迫る

スポーツアスリートが多大な精神的・身体的ストレスにさらされていて、メンタルヘルスの不調を来しやすいことについては多くの研究報告がある。一方で、レフリー(referee)、アンパイア(umpire)、ジャッジ(judge)など、日本語でいわゆる審判員と呼ばれる人たちのメンタルヘルスについては触れられることは少ない。しかし実際には、審判員も競技によっては試合に参加しているアスリートと同程度の身体的負荷がかかることがあり、さらに判定に対する選手や関係スタッフからの抗議、試合を円滑に進めなくてはならないというプレッシャー、あるいは観客や世間からの批判という多くの負荷がかかる。

実際、審判員は世界的に離職が多く、平均すると1シーズンを務めた審判員の20~35%は次のシーズンの審判をしていないという報告があり、不安や抑うつ、バーンアウト(燃え尽き)などのリスクが高いという報告もある。ただし、多くの報告は断片的であり、これまでこのトピックに焦点をあてたシステマティックレビューやメタ解析は行われていない。

文献検索について

以上を背景に今回紹介する論文の研究は、審判員における不安や抑うつの有病率、およびそれらのリスク因子と保護因子を、システマティックレビューとメタ解析で明らかにすることを目的に実施された。

システマティックレビューとメタ解析の推奨報告項目(PRISMA)ガイドラインに準拠して、SCOPUS、Web of Science、SPORTDiscus、PsycINFOという4種類の文献データベースを用いた検索を実施。初回検索を2023年12月に行い、追加の報告の有無を2024年12月と2025年7月に確認した。

包括基準は、スポーツ審判員のメンタルヘルスに関する定量的なデータを報告している英語で執筆された論文とし、対象競技の種類やレベル、対象者の年齢や経験は問わなかった。質的研究、レビュー、ステートメント、英語以外の論文などは除外した。

4種類の文献データベースで計3,244報がヒットし、重複削除後の2,778報を2名の研究者が独立してタイトルと要約に基づくスクリーニングによって133報を抽出。なお、採否の意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決した。全文精査の結果、25件のデータセットを含む26報の報告を解析の対象とした。

審判員の19.1%が不安、20.6%が抑うつを抱えている

特定された研究の特徴

解析対象研究の参加者数は15~4,099人の範囲で合計1万1,618人、平均447人であり、76%が男性、10%が女性、その他は性別に関する情報が記載されていなかった。6件はエリートレベルの審判員に焦点をあてており、残りは準エリートやアマチュアレベルだった。

調査されていたスポーツの中で最も多かったのはサッカーで(研究数〈k〉=13)、次いでバスケットボールであり(k=3)、そのほかにネットボール、バレーボール、ラグビー、アイスホッケー、卓球などの審判員が調査されていた。

7件の研究では、精神疾患症状(不安症やうつ病など)の有病率が報告されていた。このうち2件は縦断的研究(前向きコホート研究など)であり、残り5件は横断的研究であった。

不安または抑うつ症状の有病率

不安と抑うつの有病率のメタ解析に利用可能なデータを報告していた研究は5件だった。いずれも同じ5件の研究であり、おもにエリートまたは準エリートレベルで活動しているサッカー審判員を調査対象としていた。サンプルサイズは合計2,797、中央値433だった。

不安レベルの上昇の有病率は5.5~26.2%の範囲であり、プール解析の結果、19.1%(95%CI;13.4~27.0)となった。抑うつレベルの上昇の有病率は5.3~36.1%の範囲であり、プール解析の結果、20.6%(2.4~32.3)となった。ただし、ともに研究間の異質性が高かった(I2が不安については94.1%、抑うつについては97.3%)。

若年、女性、経験の少なさ、試合スケジュールなどがリスクに

次に、審判員のメンタルヘルスに対するリスク因子と保護因子として報告されている因子を検討した結果、それぞれについて、個人的な要因と環境要因に大別できることがわかった。主な要因は以下のとおり。

メンタルヘルスのリスク因子

個人的要因
若年、女性、メンタルヘルス不調の既往、独身、低収入、教育歴の短さ、達成感の低さ、審判員としての活動継続の意思の低さ、パフォーマンスに関する懸念など
環境要因
試合スケジュールの密度、低いレベルの競技会での審判、高いレベルの競技会での審判、サポートの欠如など

メンタルヘルスの保護因子

個人的要因
高齢、男性、教育歴の長さ、経験年数の豊富さ、メンタルヘルスリテラシーの高さ、周囲に支援を求める姿勢など
環境要因
低いレベルの競技会での審判、高いレベルの競技会での審判、ワークロードが適切に管理されていることなど

審判員はエリートアスリートと同程度のメンタルヘルスの症状を経験している

論文の結論には、審判員はエリートアスリートと同程度のメンタルヘルスの症状を経験しており、若年、経験の浅さ、社会経済的課題などが潜在的なリスク因子であると総括されている。著者らはまた、審判員の年齢や経験レベルに応じたサポート体制の整備、メンタルヘルスを優先する組織文化の醸成が必要ではないかと述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Mental Health of Sporting Officials: A Systematic Review and Meta-analysis」。〔Sports Med. 2025 Dec;55(12):3059-3091〕
原文はこちら(Springer Nature)

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