柔道選手の96%が試合前に急速減量 脱力感や頭痛、モチベーション低下など身体・心理への影響 ポーランドの横断調査
柔道選手の96%が試合前に急速な減量を行っていて、脱力感、頭痛、めまいなどの身体症状と、易怒性(些細なことで怒りっぽくなる感情を抑えられない状態)、モチベーション低下、緊張の高まりなどの心理的症状が高頻度に認められるとするポーランドでの研究結果が報告された。著者らはエビデンスに基づいた栄養教育と個別化された体重管理が必要と述べている。

柔道選手の減量戦略の実態を探る研究
柔道を含めて大半の格闘技は体重別階級が採用されており、有利な条件で戦うために試合前に急速な減量(rapid weight loss;RWL)を行う選手が少なくない。ただし柔道は、他の格闘技に比べて計量から試合までの回復にあてられる時間が短く、また大会当日に複数の試合が組まれることが多いという点で、他の格闘技より慎重な対策が求められる。それにもかかわらず、柔道選手に特化しRWLの実態やその影響を調査した研究は多くない。
このギャップを埋めるため、本論文の著者らは、同国の柔道選手を対象とする横断研究を実施した。
70人の柔道選手を対象に横断調査
調査の対象は、ポーランド国内に居住し、競技歴1年以上、大会参加頻度が年に1回以上の16歳以上の柔道選手70人。主な特徴は、年齢20.64±2.37歳、男性75.7%、BMI23.88±2.36、競技歴13.43±3.39年。
調査には、著者らが作成したオリジナルの24項目の質問紙を用いた。24項目のうち最初の7項目は性別や身長、体重などの人口統計学的因子に関する内容で、残りの17項目でRWLについて質問した。
ほぼ全選手が急速な減量(RWL)を実践し、身体面と心理面に負の影響が生じている
集計の結果、67人とほぼ全員(95.7%)がRWLを行っており、RWLを行っていないのは3人のみだった。平均すると試合前に3.64±1.74kgの減量を行っていた。
3人に2人が13~16歳でRWLを開始
RWLを行うようになった年齢は13~16歳が65.71%と、ほぼ3人に2人を占めた。次いで多かったのは16~18歳の14.28%だった。男性2人、女性1人の計3人(4.29%)は、10歳未満でRWLを開始したと回答した。
最も多い減量幅は5~7%
RWLによる減量の幅は、5~7%が31.43%で最多を占めた。次いで3~5%が28.57%だった。男性2人(2.86%)は9%を上回る減量を行うと回答した。
最も多い減量開始のタイミングは大会の4~5日前
RWLを開始するタイミングは、大会の4~5日前が31.42%と最多であり、次いで2~3日前の25.71%、6~7日前が20.00%、大会前日が12.86%、8日以上前が10.00%だった。
最も多いRWLの方法は水分摂取制限
最もよく用いられていたRWLの方法は水分摂取制限であり、71.01%の選手が毎回実施すると回答した。次いで、高重量食品の制限(68.57%)、食事回数の制限(65.71%)、発汗ウェアの利用(57.14%)、トレーニング量増加(40.00%)、塩分制限(同)などが挙げられた。下剤・利尿薬の使用は報告されなかった。
性別で比較した場合、トレーニング量増加のみ男性に多いという有意差が観察された(p<0.05)。
RWL中の負の影響
身体的な影響
RWLによる身体的影響として、エネルギーレベルの低下が最も多く報告され、42.86%の選手が毎回経験すると回答した。次いで全身の衰弱(31.43%)であり、持続的な空腹感(28.57%)、口渇(25.71%)などが続いた。
なお、トレーニング中の嘔気を毎回経験する割合は8.57%と頻度としては少なかったが、全員が男性であり、女性との間に境界域の有意差が示された(p=0.05)。
心理的な影響
RWLによる心理的影響として、食欲コントロールの困難が最も多く報告され、37.14%の選手が毎回経験すると回答した。次いで気分の落ち込み(28.57%)であり、易怒性(25.71%)、集中力の低下(17.14%)などが続いた。
計量から試合までの回復と試合への影響
半数以上(52.86%)が、計量から試合までの間に高品質のタンパク質、複合炭水化物、および脂質からなる食事を摂取すると報告した。一方、ファーストフード製品の摂取は最も少なかった(11.43%)。
計量後の過食の影響
大多数(88.57%)の選手が、計量後に過食をした経験があると報告し、70.00%はそのために試合中に不快感を覚えたと答えた。過食に関連する最も一般的な症状として、重苦しさ(heaviness)が60.00%と多く、身体パフォーマンスの低下48.57%、腹痛34.29%と続いた。
試合中のエネルギー不足の影響
エネルギー不足による試合中の不快感は、回答者の67.14%から報告された。食事の不足による最も頻繁な影響は、脱力感であり(58.57%)、筋力低下(52.86%)、急速な疲労(51.43%)などが挙げられた。
著者らは、「柔道選手において試合前の急速な減量(RWL)は一般的であることが示された。選手の多くは目標体重に落とすための戦略のみに焦点を当てているようであり、RWLの負の側面をあまり考慮していない。RWLは身体的な負担だけでなく、モチベーションの低下などの心理的な負担も増大させる。このような影響が生じるメカニズムの理解と、そのリスクを最小化する方法の開発が求められる」と総括している。
文献情報
原題のタイトルは、「Rapid Weight Reduction in Judo: Dietary Practices and Short-Term Health Effects」。〔Nutrients. 2025 Dec 18;17(24):3964〕
原文はこちら(MDPI)







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