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スポーツ関連脳震盪の治療におけるサプリメントの役割 DHA、BCAA、クレアチンなどの最新知見を総覧

スポーツ関連脳震盪(sports-related concussion;SRC)の多くは自然に軽快するとされているが、一部は学業や職業、競技生活に支障が生じる。このSRCに対して栄養は、どの程度介入効果を発揮し得るのだろうか。米国スポーツ医学会の「Current Sports Medicine Reports」に掲載されたレビュー論文の要旨を紹介する。

スポーツ関連脳震盪の治療におけるサプリメントの役割 DHA、BCAA、クレアチンなどの最新知見を総覧

DHA+魚油

長鎖ω3多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid;DHA)は、神経細胞膜の重要な構成要素であり、灰白質に高濃度で存在する。DHAは、膜の流動性、シナプス可塑性、神経炎症の解消にかかわり、これらはいずれも脳震盪後の神経代謝カスケード中に障害される。

外傷性脳損傷(traumatic brain injury;TBI)のモデル動物を用いた研究では、DHAが神経炎症マーカーを減少させ、ミトコンドリア機能を維持し、認知機能を改善することが示されている。さらに、NCAAフットボール選手を対象とした無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)において、プラセボと比較しTBI関連バイオマーカーをDHAが用量依存的に低下させる可能性が示されるなど、ヒトでの研究でもエビデンスが得られてきている。

ヒト対象の研究に基づくと、1日2~2.5gのDHA補給は安全であり、軸索損傷マーカーを低下させ、アスリートの脳の構造的および機能的な回復をサポートする可能性がある。急性期の治療効果に関するエビデンスはまだ限られているものの、症状持続期間を短縮する可能性もある。

マグネシウム

マグネシウムは長年にわたり、神経保護作用があると考えられてきた。TBI直後に中枢神経系におけるマグネシウム濃度は低下し、その低下が頭部ダメージの重症度と相関することが示されている。

SRC後の12~18歳の未成年において、経口マグネシウム補給が脳震盪症状を軽減できるかどうかを検討した結果、鎮痛薬(アセトアミノフェン)と制吐薬(オンダンセトロン)に酸化マグネシウム200mg、1日2回経口投与を上乗せした群は、上乗せしない群よりも、48時間後の症状が統計的に有意に抑制されたことが報告されている。

分岐鎖アミノ酸(BCAA)

必須アミノ酸である分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acid;BCAA〈バリン、ロイシン、イソロイシン〉)は、脳内の窒素代謝、ミトコンドリア機能、神経伝達物質合成に関与する。TBI後には脳内のBCAA濃度が低下し、シナプスシグナル伝達と神経細胞のエネルギー代謝が損なわれる。TBIモデルマウスでは、予防的に、また損傷後にBCAAを補給することで、運動機能と認知機能の回復が顕著に改善したと報告されている。

このアプローチを評価する最初のヒト対象試験が、2024年に脳震盪と診断された42人(11~34歳)を対象に実施された。21日間の介入で主要評価項目であった処理速度は、対プラセボで有意差はみられなかったが、症状スコアの用量依存的な有意な低下や身体活動レベルとの正の相関が報告された。

予備的な臨床データではあるが、1日30~54gのBCAA補給は、脳震盪後の症状軽減と活動復帰を支援するうえで、安全かつ効果的である可能性が高い。

リボフラビン(ビタミンB2)

リボフラビン(ビタミンB2)もSRC回復の潜在的な治療法として提案されている。リボフラビンはミトコンドリアによるATP産生に必要とされ、抗酸化酵素であるグルタチオンの維持にも役立つ。動物実験では、脳浮腫、グリア機能の改善に有望であることが示されている。

エリート大学アスリートにおけるSRCからの回復時間に関するRCTでは、1日400mgのリボフラビンを摂取したアスリートは、プラセボを摂取したアスリート(平均22.2日)と比較して、平均9.9日と有意に早く回復したという。ただしこの研究は、リボフラビン群(フットボール選手は36%)とプラセボ群(同48%)とで、参加競技が異なる点で慎重な解釈を要する。

メラトニン

SRCでは睡眠障害がよく見られ、脳震盪を起こしてから最初の10日間は睡眠不足が回復時間の延長と関連していることが示されている。メラトニンは睡眠と覚醒のサイクルを調節するホルモンであり、睡眠補助剤としてよく使われている。動物実験では抗酸化作用と抗炎症作用による神経保護特性も示されている。

ヒト対象の研究ではプラセボとの有意差が認められないという報告が複数存在するが、いずれも脳震盪後、数日経過してから投与を開始しており、より早期に用いた場合には結果が異なる可能性もある。

タウリン

タウリンは、抗炎症作用、抗酸化作用、抗アポトーシス作用、浸透圧調節作用など、多くの有益な特性を有しており、細胞膜の安定化、カルシウム流入の抑制、ミトコンドリア機能の維持に有用とされる。TBIおよび脊髄損傷のモデル動物において、タウリンは組織損傷の軽減、神経学的転帰の改善、回復の促進に効果があることが示されている。

イランで最近行われたヒト対象の研究は、ICUに入院したTBI患者に対するタウリンの効果を評価する二重盲検RCTとして実施された。標準的な経腸栄養のみの群に比較して、タウリン(30mg/kg/日、最大3g/日、14日間)を追加した群は、グラスゴーコーマスケール(GCS)スコアの上昇と、APACHE IIスコアやIL-6、高感度CRPレベルの低下など、有意な臨床的改善を示したという。ただし、SOFAスコアや死亡率、ICU滞在期間などには有意差は認められなかったのことだ。著者らはサンプルサイズが小さいことなどの限界点を挙げて、より大規模な研究の必要性を指摘している。

クレアチン

クレアチンは、細胞エネルギー代謝において重要な役割を果たし、ミトコンドリア機能の安定化にもかかわる。脳損傷後、ミトコンドリア機能不全とエネルギー危機は二次的な神経損傷の一因となることから、クレアチンがそれらの抑制を介して神経細胞の生存率を向上させる可能性がある。実際、TBIおよび低酸素モデル動物において、その可能性を示唆する報告がある。それらの研究は、実験的環境において再現性のあるエネルギーおよびミトコンドリア保護効果を実証している。

ヒトでのデータは限られているが、小児TBIでの症状改善効果、外傷後健忘の症状持続期間の短縮と機能的転帰の改善などが報告されている。ただしSRCへの適用可能性は現段階では不明。若年成人の持続性脳震盪後症状に対するクレアチン一水和物を評価するパイロットRCTのプロトコルが発表されているが、結果はまだ報告されていない。

論文では上記のほかに、プロバイオティクス、ビタミンD3、ビタミンCやEなどについても、現時点のエビデンスがまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Role of Nutritional Supplements in the Treatment of Sport-Related Concussion」。〔Curr Sports Med Rep. 2026 Jan 1;25(1):4-8〕
原文はこちら(American College of Sports Medicine)

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