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クレアチン摂取で血清クレアチニンはわずかに上昇するが、腎機能には影響しない メタ解析

クレアチン摂取による腎機能への影響を、システマティックレビューとメタ解析で検討した結果が報告された。クレアチン摂取は血清クレアチニンのわずかながら有意な上昇と関連が認められた。しかし、腎機能(GFR)に関しては有意な影響は認められないという。

クレアチン摂取で血清クレアチニンはわずかに上昇するが、腎機能には影響しない メタ解析

クレアチンは腎臓に良くないのか?

クレアチン一水和物(クレアチン)は、スポーツパフォーマンス向上などのエビデンスが豊富で多くのアスリートが利用している。また、リウマチ性疾患や神経変性疾患への臨床応用の可能性も検討されている。

その一方、依然として腎機能に対する懸念が語られることがある。ただし、その懸念が語られるとき、動物実験の研究報告、またはヒトを対象とした研究でも腎機能のマーカーである血清クレアチニンの変化を評価した研究報告が根拠として挙げられることが多い。実際、クレアチンの継続的な摂取によって体内のクレアチンレベル上昇に伴い、血清クレアチニンが上昇することがある。ただし血清クレアチニンの上昇は必ずしも腎機能の低下を意味するものでない。クレアチンの摂取は腎機能へ影響を及ぼさないと結論づけた複数の研究報告もみられる。

これらを背景として、今回紹介する論文の著者らは、クレアチン摂取と血清クレアチニン、および腎機能(糸球体濾過量〈glomerular filtration rate;GFR〉)との関連を検討した研究を対象とするシステマティックレビューとメタ解析を実施した。

文献検索の手法について

PRISMA(システマティックレビューとメタ解析のための優先報告項目)のガイダンスに準拠し、PubMed、Scopus、Web of Science、Google Scholarという文献データベースに、2001年~2025年3月に掲載された論文を対象とする検索を実施した。

包括基準は、ヒトを対象にクレアチン摂取の腎機能への影響を検討した研究であり、対象者の健康状態は問わなかった(健常者、腎疾患患者、アスリートのいずれも可とした)。また、クレアチンの投与方法は経口とし、投与量や期間は制限しなかった。一方、除外基準は、2000年以前に発表された研究、ヒト以外での研究、症例報告、論説やレビュー、学会発表などとした。

クレアチン一水和物、クレアチンサプリメント、腎機能、GFR、シスタチンC、BUN、腎毒性などのキーワードで検索し、705報がヒット。重複削除後の312報を2名の研究者が独立して、タイトルと要約によるスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は3人目の研究者を含めた討議により解決した。27報を全文精査の対象とし、最終的に14件の研究報告を適格と判断した。

血清クレアチニンは上昇するが、GFRは低下しない

血清クレアチニンへの影響を報告している14件の研究のメタ解析と、GFRへの影響を報告している5件の研究のメタ解析が行われた。

血清クレアチニンは摂取直後、および、12週以上継続摂取でわずかに上昇する

血清クレアチニンへの影響を検討した14件の研究では、クレアチン摂取群が177人、対照群が263人だった。14件中5件の研究はクレアチン摂取により血清クレアチニンが有意に上昇することを報告していた。7件の研究は有意な変化はないことを報告していた。

メタ解析の結果、平均差(MD)0.07(95%CI;0.01~0.12)と、クレアチン摂取により血清クレアチニンが有意に上昇するという関連がみられた。研究間の異質性がやや高かった(I2=69.73%)。

サブグループ解析として、介入期間で層別化した解析が行われ、1週間未満という短期介入、および、12週間超と比較的介入期間の長い研究で有意な影響が観察され、2~12週間の研究では有意な影響はみられなかった。ただし、2~12週間の研究では高い異質性がみられ、12週間超の研究では異質性がみられなかった。詳細は次のとおり。

介入期間が1週間未満の研究は、MD0.12(0.03~0.21)、研究数(k)=4、I2=11.83%。2~12週間の研究は、MD0.04(-0.09~0.17)、k=6、I2=85.09%。12週間超の研究は、MD0.05(0.01~0.09)、k=4、I2=0.00%。

GFRは変化せず、効果量のばらつきも少ない

腎機能(GFR)への影響を検討した5件の研究では、クレアチン摂取群が69人、対照群が74人だった。5件中1件の研究はクレアチン摂取によりGFRが有意に上昇することを報告していた。4件の研究は有意な変化はないことを報告していた。

メタ解析の結果はMD3.15(-4.97~11.26)であり、クレアチン摂取はGFRに有意な影響を及ぼさないことが示された。またI2統計量は33.17%であった。論文では、血清クレアチニンとの関連のメタ解析ではI2統計量が約70%と高かったことに比べて、GFRとの関連のメタ解析は効果量のばらつきが少ないと述べている。

クレアチンは腎機能に関して安全である可能性が高い

著者らは本研究について、介入期間が長いものでも月単位であり、年単位で摂取した場合の安全性のデータは限られていたこと、研究参加者のトレーニング状態が不明であることなどを限界点として挙げている。そのうえで論文の結論は以下のように総括されている。

「われわれの研究結果は、クレアチンサプリメントの摂取は血清クレアチニン値の若干の上昇を伴うものの、糸球体濾過量(GFR)には悪影響を与えないことを実証している。クレアチンは標準的な投与プロトコルに従って使用された場合、健康な個人、および、さまざまな臨床集団において、腎機能に対して安全である可能性が高い。しかしながら、研究者および臨床医は、サプリメント摂取における血清クレアチニン値の上昇を慎重に解釈し、正確な評価のために、より精緻な腎機能マーカーでの評価を考慮する必要がある」。

なお、本論文の著者らは、開示すべき利益相反(COI)に関する情報はないとしている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of creatine supplementation on kidney function: a systematic review and meta-analysis」。〔BMC Nephrol. 2025 Nov 6;26(1):622〕
原文はこちら(Springer Nature)

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