栄養・メンタル・社会的支援が鍵? エリートアスリートのパフォーマンスの「伸び悩み」を6類型で可視化
エリートレベルのアスリートのパフォーマンスの伸び悩みの関連因子を、クラスター分析で検討した結果が報告された。ドイツのナショナルチームトレーニングに参加するレベルのアスリート対象の解析の結果、パフォーマンス停滞の六つのパターンが特定されたという。

アスリートはどのようにしてパフォーマンスの伸びが停滞するのか
アスリートがトップレベルで活躍するには、常にパフォーマンスの向上を目指し、かつ達成する必要がある。しかし当然のこととして、すべてのアスリートが順調にパフォーマンスを向上し続けられるわけではなく、その競争に後れをとることで、やがて選手としての限界が見え始めることになる。
アスリートのパフォーマンスの停滞の原因は多因子であることは広く認められている。具体的には、生物学的、心理学的、社会学的な要因や個人的な環境要因などが関係していると考えられている。生物学的要因を左右する大きな因子の一つが栄養素の不足であり、スポーツ栄養はその点を補完することでアスリートのパフォーマンスをサポートする。
これらの因子はそれぞれが単独でパフォーマンスに影響を及ぼすこともあるが、実際には複雑に絡み合って複合的な影響を及ぼしていると考えられる。しかしこれまで、そのような視点で行われた研究は少なく、アスリートがどのように伸び悩みというフェーズに陥っていくのかはほとんど明らかにされていない。
これらを背景として、この論文の著者らは、アスリートのパフォーマンス成長を左右し得る、さまざまな要因を網羅的に評価する研究を行った。
ドイツのエリートアスリート300人の中から伸び悩みアスリートを抽出
この研究は、ドイツで行われているエリートアスリート育成のための学際的研究(individualized performance development in elite sports through holistic and transdisciplinary process optimization)の一環として実施された。同国ナショナルチームのトレーニングキャンプに参加中のアスリートを対象に、人口統計学、人体計測学、社会心理学、生化学、生理学、栄養学、睡眠などの専門家が関与し、それぞれの学問領域での検討に必要なパラメーターが収集された。
この研究に参加したアスリートは296人だった。各アスリートのコーチに対して、当該アスリートの過去1年間のパフォーマンスの成長を、7段階のリッカート尺度で質問。1点は成長なし、または低下とし、7点は著しい成長とした。このコーチの評価をもとに、アスリートのパフォーマンスの成長/停滞を判断した。著者によると、このようなコーチによる評価は、アスリートの予後予測手段として妥当と考えられるとしている。
コーチへの質問から得られたリッカートスコアの平均値から0.5標準偏差低い値(4.07点)をカットオフポイントとして、それを下回ったアスリートをパフォーマンスが伸び悩んでいると定義した。その結果、110人がそれに該当した。この110人から、クラスター分析に必要なデータが欠落している選手、および、極端な外れ値があり分析結果を歪める可能性のある選手を除外し、62人を抽出してクラスター分析を行った。
この62人は男性19人、女性43人で、競技はバレーボールが19人、体操11人、アイスホッケー10人、近代五種6人など。年齢は男性20.43±4.79歳、女性18.66±5.42歳、競技歴は同順に12.25±5.74年、12.90±5.34年だった。また、コーチによるパフォーマンス成長に関する評価のリッカートスコアは、3.89±0.46点、3.16±0.84点であった。
特定された6群のクラスターの特徴とは
クラスター分析の結果、この63人は6群のクラスターに分類された。
その6群の中でも最もパフォーマンス成長のリッカートスコアが低いクラスターは、全員が女性であり、BMIが最低であって、ビタミンB12とビタミンDの摂取量が最も少なかった。その他の特徴として、代謝・炎症関連パラメーター(fT3、インスリン、IFN-γ)のzスコアが有意に低く、社会的支援やメンタルヘルスのzスコアも有意に低くて、月経に伴う自覚症状が多彩だった。
別のクラスターは、急性外傷の既往が最多で(80%)、下半身のパフォーマンス(ジャンプやスプリントなど)とメンタルヘルスのzスコアが有意に低かった。また、重大なライフイベント(critical life events;CLE)の報告数が最多だった。
下半身のパフォーマンス、メンタルヘルス、社会的支援の不足/不良が成長を妨げている?
全体として、特定された六つのクラスターのうち、メンタルヘルス関連パラメーターのzスコアが有意に低いクラスターが三つあり、社会的支援関連のパラメーターのzスコアが有意に低いクラスターも三つだった。また、下半身のパフォーマンスのzスコアが有意に低いクラスターは二つで、代謝関連のzスコアが有意に低いクラスターは一つ特定された。
論文の結論は、「パフォーマンスが伸び悩んでいるアスリートは、生理学的、社会心理的、およびパフォーマンス関連要因の類似した基本的パターンに基づいて、クラスター化できることが示唆された。この研究結果は、パフォーマンスが停滞しているアスリートに対する個別化されたアプローチの重要性を、改めて強調するものだ。本研究結果を因果関係として解釈すべきではないが、このような学際的かつ多因子的なデザインでの研究は、エリートアスリートのパフォーマンス成長のサポートにおける新たな視座を示しており、将来の研究のための重要な基盤となり得る」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Multifactorial Patterns of Low Performance Development in German Elite Athletes」。〔Transl Sports Med. 2025 Oct 5:2025:8421509〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)







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