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女性ボディビルダーの死亡率を初検証 男性より低いが他競技より高水準、薬物乱用の可能性も示唆

女性ボディビルダーの死亡率に関するデータが報告された。男性ボディビルダーとの比較では死亡率が低いものの、他の競技アスリートより高く、剖検データの得られた2名については、いずれもパフォーマンス向上薬の乱用を示唆する所見が示されたという。

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女性ボディビルダーの死亡率に関する初の研究

近年、ボディビル競技への女性の参加が増加している。男性ボディビルダーの死亡率に関しては、既にこの論文を報告した研究者らにより、顕著に高いことが明らかにされているが(DOI: 10.1093/eurheartj/ehaf285)、女性ボディビルダーの死亡率についてはデータがない。そこで研究グループでは、男性ボディビルダーの死亡率を検討した時と同様の研究手法により、女性ボディビルダーの死亡率を検討した。

2005~20年のボディビル競技会、700大会の参加者データを解析

2005~20年の16年間で、国際フィットネス・ボディビルディング連盟(International Fitness and Bodybuilding Federation)主催の700件の競技会に参加した9,447人の女性選手のうち、32人(平均年齢42.7±9.8歳)の死亡が記録されていた。このうち24例(75%)について、死因が特定されていた。

5例は非突然死で、19例は突然死に分類されていた。突然死のうち7例は外傷性突然死であり、12例は非外傷性突然死であって、10例は心臓突然死であったことが確認された(全死亡例の31%)。心臓突然死例の死亡年齢は平均42.2±10.9歳だった。

剖検報告書が入手できたプロ選手は2例のみであり、うち1例には明らかな心臓異常はみられなかったが、もう1例は心筋炎と一致する組織病理学的所見が認められた。さらに、両選手の毒物学的分析から、パフォーマンス向上薬の乱用が明らかにされた。

女性ボディビルダーの10万人年あたりの死亡率

女性ボディビルダーの10万人年あたりの死亡率は33.51(95%CI;22.92~47.30)だった。これを年齢層や競技タイプ、プロ/アマチュア別にみると以下のとおり。

年齢層についてはジュニアが26.3、オープンは31.4、マスターは41.6、競技タイプについてはボディビルが52.6、フィジークおよびフィギュアは29.9であり、アマチュアは14.9、プロは135だった。

なお、10万人年あたり135という値は同世代の一般人口の死亡率より高いものの、男性のプロのボディビルダーの死亡率は317.6であることに比べれば、有意に低値だった。

女性ボディビルダーの10万人年あたりの心臓突然死発生率

女性ボディビルダーの10万人年あたりの心臓突然死発生率は10.47(5.02~19.26)だった。これを年齢層や競技タイプ、プロ/アマチュア別にみると以下のとおり。

年齢層についてはジュニアが0.0、オープンは13.9、マスターも13.9、競技タイプについてはボディビルが26.3、フィジークおよびフィギュアは7.5であり、アマチュアは2.5、プロは54だった。

なお、男性プロボディビルダーの10万人年あたり心臓突然死発生率については、著者らの先行研究で193.6と報告されている。

女性ボディビルダーでもとくにプロレベルは死亡リスクが高い

これらの結果について著者らは、死亡原因については心臓突然死が最も多く、その点については男性ボディビルダーと一致していること、ただし死亡率そのものは男性ボディビルダーより低いこと(男性ボディビルダーは10万人年あたり63.6)、心臓突然死も男性より少ないこと(同24.2)を性別による違いとして挙げている。

また、「興味で深いこと」として、入手可能だった2例の剖検例の報告で、いずれも心拡大や左室肥大などは認められず、男性ボディビルダーでは心臓の構造的異常が多く報告されていたこととは対照的であると述べている。なお、詳細なデータは記されていないが、女性ボディビルダーの自殺・殺人による死亡が全症例の約13%を占め、これは男性ボディビルダーの4倍以上だという。

著者らは本研究について、症例の25%は死因を特定できていないことや、共変量を調整していないという方法論上の限界点を挙げたうえで、「女性ボディビルダーの死亡率は男性よりも低かったものの、ボディビルに関連する健康リスクは男性選手に限るものではないという仮説を裏付ける結果が得られた。過酷なトレーニング、断食を含む食行動、脱水、そして制御不能な薬物の乱用は、とくにプロレベルの女性において、死亡リスクの上昇に寄与している可能性がある」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Mortality in female bodybuilding athletes」。〔Eur Heart J. 2025 Oct 20:ehaf789〕
原文はこちら(Oxford University Press)

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