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プロサッカー選手の栄養摂取、体組成、ホルモン分泌のシーズン前とシーズン中の変化

ヨルダンのプロサッカー選手を対象に行われた研究から、シーズン中はタンパク質の摂取量が減って脂質が増えるという有意な変化があることが報告された。炭水化物摂取量は有意な変化がないという。そのほか、体組成やパフォーマンス指標、ホルモン分泌の変化も検討されている。

プロサッカー選手の栄養摂取、体組成、ホルモン分泌のシーズン前とシーズン中の変化

プロサッカー選手の栄養素摂取量等は、シーズン前とシーズン中でどう変わる?

サッカー選手の栄養素摂取量や体組成等に関する研究はこれまでにも報告されてきているが、競技サイクル全体でそれらがどのように変化しているのかという研究は多くない。そこで今回紹介する論文の研究では、ヨルダンのプロサッカー選手の栄養素摂取量と体組成、パフォーマンス指標、ホルモン分泌がシーズン前とシーズン中での変化が検討された。

研究参加者は同国の国家代表メンバーから抽出された15人。年齢は25.15±3.78歳(範囲19~35)で、全員男性(女性は月経周期による影響のため結果解釈が困難になることから除外された)。また、喫煙者、心血管代謝疾患・呼吸器疾患を有する選手、整形外科的課題のある選手、結果に影響を及ぼし得るサプリメント(クレアチン、β-アラニン)を摂取している選手なども除外された。なお、研究期間中に2名が怪我のため脱落した。

シーズン前の評価は7月の第4週に行い、シーズン中の評価はシーズン中盤にあたる12月の第4週に行った。評価項目は以下のとおり。

食事評価のため、参加者には7日間にわたる食事記録の提出を求めた。体組成は生体電気インピーダンス法により計測した。ホルモン分泌量を評価するのための採血検査は12時間の絶食と激しい運動を中止した後に行った。パフォーマンスの指標として、Yo-Yoテストにより持久力、30m走によりスピード、カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)により筋力を測定したほか、Yo-Yoテストのデータを利用して計算式に基づきVO2maxの推算値を求めた。

栄養素摂取量が有意に変化する一方で、体組成やパフォーマンス指標は変化しない

栄養素摂取量:摂取エネルギー量はシーズン中にはタンパク質が減り脂質が増加

主要栄養素

摂取エネルギー量は、シーズン前が2889.87±815.33kcalで、シーズン中は3,239.88±792.78kcalと後者のほうが多かったが有意差はなかった(p=0.14)。また炭水化物摂取量については同順に349.55±138.13g、392.01±123.29gと、やはり後者のほうが多かったが有意差はなかった(p=0.27)。

一方、脂質については98.26±23.32g、131.04±42.74gとシーズン中のほうが多く、有意差が認められた(p=0.01)。またタンパク質については逆に168.79±42.03g、140.86±34.86とシーズン前のほうが多く、有意差が認められた(p=0.02)。

微量栄養素

ビタミンB1(1.98±0.87 vs 5.35±4.76mg)、B2(2.32±1.69 vs 5.72±5.18mg)はシーズン前よりもシーズン中のほうが多く摂取されていた(いずれもp=0.02)。

それに対して、パントテン酸(10.51±8.11 vs 5.87±1.38mg、p=0.04)、カルシウム(843.68±501.63 vs 549.90±190.20mg、p=0.03)、ナトリウム(3,173.78±733.99 vs 2,698±714.99mg、p=0.04)、亜鉛(19.12±14.93 vs 9.25±2.25mg、p=0.02)については、シーズン前のほうが多く摂取されていた。

その他のビタミン、ミネラルの摂取量は、シーズン前とシーズン中とで有意差がなかった。

体組成とパフォーマンス指標:シーズン前とシーズン中で有意差なし

体重および体組成(体脂肪率、筋肉量)については、シーズン前とシーズン中とで有意な変化が観察されなかった。また、パフォーマンス指標(Yo-Yoテスト、30m走、CMJ、推算VO2max)に関しても、シーズン前とシーズン中とで有意な変化が観察されなかった。

ホルモン分泌:シーズン中のほうが成長ホルモンの分泌量が多い

インスリン、インスリン様成長因子1(IGF-1)、総テストステロン、コルチゾールに関しては、シーズン前とシーズン中とで有意な変化が観察されなかった。一方、成長ホルモンに関しては、シーズン前が0.19±0.22ng/mL、シーズン中は0.49±0.51ng/mLとシーズン中のほうが高く、有意差が認められた(p=0.03)。

競技サイクルを通した栄養評価の必要性を強調する結果

著者らは本研究のサンプルサイズが小さいこと、自己申告の食事記録に基づき栄養素摂取量を評価していることなどの限界点を挙げている。

そのうえで、「ヨルダンのトップレベルのサッカー選手がシーズン前およびシーズン中を通して、安定した体組成と身体パフォーマンス特性を維持していることを実証した。成長ホルモンレベルにおいてのみ、顕著な季節変動が見られ、これは競技要求への内分泌適応を反映しており、他のホルモンマーカーは変化していなかった。栄養素摂取量については、エネルギー、炭水化物、微量栄養素の摂取量が不足傾向にある一方で、タンパク質の過剰摂取と脂質の摂取量が適切からやや過剰という状況がみられた」と総括している。また、「これらの結果は、シーズンを通して的を絞った栄養モニタリングを行うことの必要性を浮き彫りにしている」と付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Pre-season and in-season body composition assessment by bioimpedance in professional football athletes: implications for sports nutrition, physical performance, and hormonal health」。〔Front Nutr. 2025 Aug 1:12:1657855〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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