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高校生アスリートのパフォーマンスを支える栄養・睡眠・ストレスなど6つの生活習慣 系統的レビュー

高校生アスリートのパフォーマンスに必要なライフスタイル関連の6項目に焦点をあて、現時点のエビデンスをシステマティックレビューで総括した論文を紹介する。著者らは、女子高校生アスリートの52.1%に利用可能エネルギー不足(LEA)のリスクがあること、79%以上の高校生アスリートの睡眠時間が8時間未満であることなどの問題を強調するとともに、高校生アスリートに合わせた栄養教育プログラムの開発など、的を絞った介入が喫緊の課題だとしている。

高校生アスリートのパフォーマンスを支える栄養・睡眠・ストレスなど6つの生活習慣 系統的レビュー

高校生アスリートのライフスタイルとパフォーマンスとの関連は?

高校生アスリートは、学業とスポーツという二重の要求に応える必要があり、また大学生や成人のアスリートとの比較では、まだ心身の形成期にあるという点で異なる。大学生や成人に比べ、不健康なライフスタイルを選択した場合の影響がより大きくなりやすいという特徴もある。

アスリートのパフォーマンスを支えるうえで、栄養や睡眠などが重要であることに関して、近年ますますエビデンスが蓄積されてきている。例えば適切な栄養摂取は回復の促進に、十分な睡眠は回復および競技に要求される認知機能の維持に不可欠である。

しかし、それらのエビデンスの多くは大学生や成人アスリートを対象とする研究で得られたものであり、高校生アスリートにおいて、栄養や睡眠、ストレスなどがどの程度パフォーマンスに影響を及ぼしているのかは十分研究されていない。そこで今回取り上げる論文の研究では、システマティックレビューによりこのトピックに関するエビデンスを包括的に把握することを試みている。

14~18歳のアスリート対象研究を包括的に検討

文献検索には、PubMed、Scopus、Embaseなどのデータベースを用い、キーワードは、「高校生アスリート」「ライフスタイル医学」「栄養」「睡眠」「ストレス管理」「身体活動」「薬物回避」「社会的つながり」などを用いて、ライフスタイル関連の6要素(栄養、睡眠、ストレス管理、身体活動、薬物回避、社会的つながり)に関連する論文を検索した。包括基準は、研究対象が14~18歳のアスリートであり、無作為化比較試験、コホート研究などの堅牢な研究デザインで行われていて、英語で発表されている論文とした。除外基準は、非アスリート集団や前記の年齢範囲以外のアスリート対象の研究、および、アウトカムの評価が曖昧など研究デザインが堅牢と言えない報告、英語以外の論文などとした。

一次検索で1,423報がヒットし、重複削除後の1,100報を2名の研究者が独立してタイトルに基づくスクリーニングを行い300報を抽出し、さらに要約に基づくスクリーニングにより110報に絞り込んだ。なお、採否の意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決した。110報を全文精査し、最終的に31件の研究報告を適格と判断した。

栄養、身体活動、睡眠などについて、的を絞った指導が必要

抽出された31件の研究のうち、栄養は6件、睡眠とストレス管理および社会的つながりは各5件、身体活動は3件、薬物回避は7件で検討されていた。以下、一部の要旨のみを紹介する。

栄養:女子のLEAと男子のタンパク質過剰が課題

この世代の若いアスリートの多くが利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)のリスクに直面しており、とくに女子アスリートではその割合が高く、52%以上が該当すると報告されている。このような状態は、パフォーマンスの低下、怪我のリスク増加、回復の遅れなど、広範囲にわたる影響を及ぼす可能性がある。さらに、炭水化物やタンパク質などの必須栄養素の摂取不足は、とくに持久系アスリートにとって懸念材料であり、またカルシウムや鉄の不足も多く、それらは疲労骨折や骨の健康障害などの問題につながる。また、女子アスリートはスポーツ栄養に関する知識が不足しているとする研究もみられた。

一方、男子アスリートの場合、タンパク質摂取がもう一つの重要なトピックのようである。この世代の男子アスリートのタンパク質必要量は、推奨摂取量(recommended dietary allowance;RDA)に比較し大幅に多い。

身体活動:学業や精神的健康との関連という視点も重要

高校生アスリートはトレーニング中に相当量の中・高強度身体活動(moderate to vigorous physical activity;MVPA)を行っているが、競技や状況によってばらつきがみられる。また、身体活動を学業成績と関連付けた研究が複数みられ、エリートレベルではそのバランスの確保が困難とされる傾向がある。

このほか、とくにコンタクトスポーツへの参加が脳震盪のリスクを高め、自殺リスクの上昇を含む精神的健康障害に関連するとする報告もみられた。これらの結果は、高校生アスリートの身体的ニーズと学業的ニーズの双方に対応し、精神的健康を維持し学力向上を続けながらスポーツで卓越性を追求できるように、包括的なサポートシステムを作り出す必要性を強調するものと言える。

睡眠:睡眠不足や質の低下でパフォーマンスが低下する

高校生アスリートは総じて良質な睡眠が不足しているようだ。睡眠不足はアスリートの精神的および身体的健康に負の影響を及ぼすことが実証されている。例えば、疲労を報告する割合、および、うつ症状や疼痛の発症や程度が高まるとされている。さらに睡眠時間の用量反応効果も観察されており、睡眠時間が5時間未満のアスリートは9時間以上のアスリートと比べて、神経認知パフォーマンスが低下し、反応時間のスコアが有意に低いと報告されている。

薬物回避:喫煙やオピオイド過剰使用を防ぐ教育が必要

高校生のスポーツ参加は、身体的、心理社会的に大きなメリットがあるが、薬物使用や危険な行動に関して潜在的なリスクを伴う。アスリートは非アスリートに比べて違法薬物の使用は少ない傾向がある一方で、アルコール消費と性行為に関しては懸念される傾向がある。

アスリートでない男子高校生で性交経験がないと回答したのは50%であるのに対して、男子アスリートは45.5%だったという。また、性交経験のある生徒において13~15歳に最初の経験をした割合は、非アスリートは67.8%であるのに対して、アスリートは81.9%だったという。

さらに、校内スポーツへの参加はタバコや大麻の使用を防ぐ効果がある一方で、エリートレベルの場合は過度の飲酒や電子タバコの使用のオッズが高いことが報告されている。また、オピオイドの使用はアスリートにとってもう一つの懸念事項であり、コンタクトスポーツの選手でより懸念される。

これらの結果は、高校生アスリートが直面する特有のリスクに対処するために、とくにエリート選手やコンタクトスポーツの選手を対象に、焦点を絞った薬物使用防止活動の必要性を示している。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of the Six Pillars of Lifestyle Medicine on the Performance of High School Athletes: A Systematic Review」。〔Am J Lifestyle Med. 2025 Oct 14:15598276251388632〕
原文はこちら(SAGE Publications)

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