男子投擲選手の約半数がメタボリックシンドローム BMI・脂肪率・血圧などと相関、引退後を見据えた栄養指導の必要性
全米大学体育協会(NCAA)ディビジョンIの投擲競技選手におけるメタボリックシンドロームの有病率が報告された。男子選手では47%だという。著者らは、大学生アスリートの健康状態は生涯にわたり永続的な影響を及ぼし得るとし、心血管リスク抑制のための栄養介入の必要性に言及している。

スポーツは一般的に心血管リスクを抑制するが、競技によってはそうでない
運動の実践やスポーツへの参加は心血管代謝疾患のリスク抑制のために有益と考えられている。ただし、すべてのスポーツが有益なわけではなく、パワーと重量(体重)を必要とする競技では、メタボリックシンドローム(MetS)に該当する選手が少なくないこと、それによる心血管イベントリスクが上昇していることが報告されている。例えばナショナルフットボールリーグ(NFL)のラインマンは一般人口と比較して心血管死リスクが52%高いこと、非ラインマンとの比較でも心疾患死リスクが3倍高いこと、引退後のラインマンの約6割がMetSに該当することなどが報告されている。
投擲もパワーが重視される競技であり、持久力をあまり要さず、また体重別階級がないことから、投擲アスリートは除脂肪体重の増加を目指して体重増加を意図することが多い。しかし、投擲選手のMetS有病率はほとんど検討されておらず、本論文のイントロダクションによると、先行研究として中国から36%という数値の報告のみ認められるという。
この状況を背景として本研究では、NCAAディビジョンIの投擲選手におけるMetSの有病率とMetS構成因子の互いの相関が検討された。著者らは、大学生の健康状態は生涯続くことが多いため、大学生選手のMetS有病率を明らかにすることの意義は少なくないと述べている。
男子選手の47%がMetSで、ウエスト周囲長高値が最も高頻度にみられる
研究参加者は、選手本人と所属機関の同意が得られたNCAAディビジョンIの投擲選手(種目としては、砲丸投げ、円盤投げ、ハンマー投げ、重錘投げ)で、男子17人(19.7±1.4歳)、女子4人(19.8±1.0歳)。体重・体組成等の計測と血液検査はオフシーズンにひと晩(8時間以上)絶食後に行った。なお、女子選手については月経開始後14日以内とした。
男子選手の主な測定結果は、体重120.49±17.12kg、身長183.93±6.12cm、BMI 34±5、体脂肪率24±8%、ウエスト周囲長104±10cm、VO2max37±7mL/kg/分であり、女子選手は、89.63±9.45kg、171.88±1.65cm、BMI 30±4、体脂肪率30±4%、ウエスト周囲長85±10cm、VO2max37±4mL/kg/分であった。
MetS有病率とMetS構成因子の異常値の割合
MetSは米国の診断基準に基づき、以下の5項目のうち3項目以上に該当する場合と定義した。1)HDL-Cが男性は40mg/dL未満、女性は50mg/dL未満、2)空腹時トリグリセライド150md/dL以上、3)空腹時血糖110mg/dL以上、4)ウエスト周囲長が男性は102cm超、女性は88cm超、5)収縮期血圧130mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上。
その結果、男子選手は8人(47%)がMetSと判定された。女子選手にMetS該当者はいなかった。
男子選手において、MetS構成因子の中で最も異常値が示された頻度が高いのはウエスト周囲長であり、65%が高値だった。次いでHDL-C低値が59%、収縮期血圧高値が47%、トリグリセライド高値と拡張期血圧高値がそれぞれ25%にみられた。
女子選手では、HDL-C低値が半数(50%)にみられ、次いで、ウエスト周囲長高値と収縮期血圧高値がそれぞれ25%だった。
男子・女子ともに、空腹時血糖高値がみられた選手はいなかった。
ウエスト周囲長やBMIはインスリン抵抗性ト正の関連、VO2maxと負の関連
次に、評価した各パラメーター同士の相関が検討された。その結果、BMIやウエスト周囲長は多くの因子と有意に相関することが明らかになった。主な有意な相関は以下のとおり。
BMIと有意な関連のある因子
ウエスト周囲長(r=0.91)、体脂肪率(r=0.59)、トリグリセライド(r=0.46)、収縮期血圧(r=0.81)、拡張期血圧(r=0.80)、インターロイキン-6(r=0.50)、インスリン(r=0.56)、インスリン抵抗性(HOMA-IR;r=0.60)。
VO2maxとは有意な負の関連がみられた(r=-0.70)。
ウエスト周囲長と有意な関連のある因子
トリグリセライド(r=0.45)、収縮期血圧(r=0.77)、拡張期血圧(r=0.74)、インスリン(r=0.66)、HOMA-IR(r=0.71)。
VO2maxとは有意な負の関連がみられた(r=-0.56)。
体脂肪率と有意な関連のある因子
収縮期血圧(r=0.51)と有意な正の関連、VO2maxと有意な負の関連がみられた(r=-0.68)。
有酸素運動の重要性と、競技から引退する投擲選手への食事指導の必要性が示される
以上を基に著者らは、「本研究の結果は大学男子投擲選手におけるMetSリスクの特徴を明らかにし、トレーニングと食習慣が体組成および長期的な心血管代謝の健康リスクに、意図しない悪影響を及ぼす可能性があることを示唆している」と総括。一方、有酸素能力(VO2max)とBMI、体脂肪率、収縮期血圧、HOMA-IRとの間に強い負の相関が認められたことから、「習慣的な有酸素運動が、本研究で観察された有害な健康アウトカムに対する保護効果をもたらす可能性があることを示唆している」との考察を述べている。
また、「全体として、定期的な代謝状態のモニタリングの重要性と、とくに投擲選手が競技から離れる際に、長期的な健康適応のための食事介入の必要性を強調するものである」と付け加えている。
文献情報
原題のタイトルは、「Incidence and Risk Factors of Metabolic Syndrome in Track and Field
Throwing Athletes」。〔Int J Exerc Sci. 2025 Nov 1;18(6):1199-1211〕
原文はこちら(Western Kentucky University)







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