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ヒップホップダンスは思春期女子の「運動ぎらい」を変える? 運動能力、運動習慣、運動の楽しさが向上

中学校の体育の教育にヒップホップダンスを採用することで、女子生徒の運動能力が向上し、身体活動習慣が身に付き、身体活動を楽しいと感じるようになるとする研究結果が報告された。トルコからの報告。

ヒップホップダンスは思春期女子の「運動ぎらい」を変える? 運動能力、運動習慣、運動の楽しさが向上

思春期に運動ぎらいになりがちな子どもたちを、ヒップホップで運動好きにできるか

学校で行われる体育の授業は構造化された内容であり、子どもたちの運動能力を高め身体活動を増やすうえで、中心的な役割を果たしている。しかし、一般的なカリキュラムにおいて体育の時間は身体活動の推奨量を満たすのに十分でない。また、構造化された教育内容は、授業を受ける時点での運動能力が低い子どもたちを運動ぎらいにしてしまう可能性が指摘されている。とくに思春期の女子生徒は、ホルモン分泌の変化、ボディーイメージの形成などの影響もあり、この時期にスポーツから離れていく生徒が多い。

それに対して近年、からだを動かす楽しさを実感させるために、従来の授業の代替的な手法として、文化を取り入れた体育授業が模索され始めている。その一つの候補としてヒップホップダンスを採り入れる動きもある。ヒップホップダンスは競争的な要素が少ないという点で従来の競技スポーツ型の体育と異なり、気軽に参加しやすいという特徴がある。

ただ、これまでのところ、体育の授業にヒップホップダンスを採用することにより、生徒の身体活動量や運動能力にプラスの変化が生まれるかを検証する研究はほとんど行われていない。これを背景としてこの研究では、14週間のヒップホップダンストレーニングにより、思春期女子にそのような変化が生じるのかを検討した。

14週間にわたってヒップホップダンスを教える学校と教えない学校で比較

この研究は、トルコ国内の同地域にあり、保護者の社会経済的地位や教育歴が同等の公立学校2校の7年生(日本の中学1年生に相当)を対象に行われた。カリキュラムを変更するという研究デザインのため、無作為化は不可能であることから、2校のうち1校を介入校、他の1校を対照校とした。両校ともに、5年以上の経験をもつ体育とダンスの教師が雇用されていた。

介入校と対象校からそれぞれ96人の女子生徒が参加。介入期間中は両校とも通常の体育授業(45分を週2回)が行われ、介入校ではそれ以外に90分、週3回のヒップホップダンスの授業が行われた。

ヒップホップダンスの授業は指導効果を高めるために、約25人ずつの4グループに分かれ交替で行われ、同一のインストラクターが指導した。ダンスの振り付けには人気ミュージシャンやテレビタレントの動きを採り入れつつ、年齢に応じたアレンジを加えて生徒のスキルによらず参加しやすいものとした。また音楽は人気のヒップホップミュージックを教育用にアレンジして使った。

介入期間は14週間だった。

運動能力、身体活動習慣、身体活動の楽しさの評価方法

運動能力の評価には、学齢期の子どもの微細運動と粗大運動の能力を評価する標準化された指標である「運動熟練度検査 第2版(Bruininks-Oseretsky Motor Proficiency Test, Second Edition;BOT-2)」の短縮版を用いた。BOT-2短縮版では手先の器用さ、バランス能力などの8項目を評価する。

身体活動習慣の評価には歩数計を用い、介入前後の7日間計測。1日10時間以上記録のある日のデータのみを解析に利用した。

身体活動の楽しさの評価には、「身体活動の楽しみの尺度(Physical Activity Enjoyment Scale;PAES)」を用いた。PAESは8項目の質問に7段階のリッカートスコアで回答してもらい、スコア範囲は8~56点で、高スコアは身体活動の楽しみを強く感じていることを表す。

ヒップホップダンスの授業は思春期女子生徒の身体活動にプラスに働く

介入前の段階の比較で、手先の器用さ、走行速度・敏捷性にわずかな有意差が認められたが効果量は小~中であり、実際的な意義は限定的と考えられた。

14週間の介入後、両校の生徒の間に、いくつかの有意な違いが観察された。詳細は以下のとおり。

運動能力

運動能力は、両校ともに有意な時間効果が確認され、14週後には運動能力が向上していた(p<0.001)。さらに群効果も有意であり、介入校の生徒のほうが、運動能力がより大きく向上していた(p<0.001)。

運動熟練度検査 第2版(BOT-2)で評価された8項目のスコアの前後比較では、微細運動統合、両側協調運動、バランス、走行速度・敏捷性、上肢協調運動について、介入校のほうがより大きく向上していた。

身体活動習慣

1日の歩数は、介入群では介入前が7,183.68±1,974.45歩、介入後は7,745.13±2,135.72歩であり、対照群は同期間に7,324.15±1,622.44歩、7,488.78±1,655.92歩となっていた。介入群における歩数の増加幅は対照群より有意に大きかった(p=0.001)。

身体活動の楽しさ

身体活動の楽しみの尺度(PAES)のスコアは、介入群では介入前が28.92±8.32点、介入後は32.25±10.28点であり、対照群は同期間に28.17±9.21点、29.17±8.53点となっていた。介入群におけるスコアの増加幅は対照群より有意に大きかった(p=0.023)。

著者らは、「体系的なヒップホップダンス介入が、思春期女子の身体能力、身体活動レベル、そして身体活動の楽しさを有意に向上させることが実証された。本研究結果は、ダンスが従来の体育教育に代わる包括的、かつ意欲を高める選択肢となる可能性を浮き彫りにしている」と総括するとともに、「プログラムの効果を持続させるためには、文化的妥当性、プログラムの質、そして自己決定理論に基づいた教師の研修が重要と考えられる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「The effect of hip-hop dance training on motor competence, physical activity, and enjoyment in early adolescent girls」。〔BMC Public Health. 2025 Oct 21;25(1):3556〕
原文はこちら(Springer Nature)

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