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国内男子大学ハンドボール選手では、食行動が心身のコンディションの主観的評価と独立して関連

ハンドボール選手の心身両面のコンディションが、食行動と独立した関連のあることが報告された。夕食の摂取時間の一貫性や栄養価の高い間食などが、Hooper Indexの有意な予測因子だという。和洋女子大学家政学部健康栄養学科の永澤貴昭氏、同大学名誉教授の湊久美子氏による研究で、「Nutrients」に論文が掲載された。

国内男子大学ハンドボール選手では、食行動が心身のコンディションの主観的評価と独立して関連

ハンドボールのパフォーマンスに重要な栄養とメンタル

ハンドボールは有酸素運動と断続的な高強度運動で構成され、激しい身体接触を伴う競技で、エネルギー需要や筋肉のダメージが大きく、適切な栄養素摂取が重要となる。また、メンタル面の変化もハンドボールのパフォーマンスに大きな影響を及ぼすことが報告されており、栄養状態がメンタルを左右することも知られている。

それにもかかわらず、推奨される栄養要件を満たしていないハンドボール選手が少なくないことも、しばしば報告されてきている。ただし、ハンドボール選手の食行動と心身のコンディションとの関連に関する知見は少ない。

一方、心身のコンディションの評価法として、生理学的な客観的指標ではなく、本人の主観的な評価が、簡便でありながら感度の高い指標として認識されるようになってきた。心身のコンディションを評価する主観的な指標の一つとして、Hooperらが提唱したHooper Indexがあり、スポーツ科学の研究でも頻用されている。

これらを背景として永澤氏らは、ハンドボール選手の食行動とHooper Indexとの関連を横断的に検討し、コンディションに影響を及ぼし得る因子の特定を試みた。

関東学生ハンドボール連盟に所属する男子学生にwebを用いて調査

この研究は、関東学生ハンドボール連盟に所属している男子学生を対象とする、web調査として実施された。同連盟所属の全大学のクラブへ回答協力を依頼し、またリーグ戦の会場で告知を行うなどして、168人から回答を得て、データ欠落のない64人を解析対象とした。

調査内容は、食事調査、Hooper Index、および食習慣などに関するアンケート調査であった。詳細は以下の通りである。

食品摂取状況

研究参加者は、連続3日間(トレーニング日2日、休息日1日)に摂取したすべての飲食物の実物および栄養成分表示、メニューの写真、補足のテキスト情報(例えばドレッシングに油脂が含まれているか否か、牛乳の脂肪含有量など)を研究者に送信し、それを基にスポーツ栄養士が栄養素摂取量を分析。米国スポーツ医学会(American College of Sports Medicine;ACSM)の推奨と比較して過不足を評価した。

Hooper Index

Hooper Indexは、睡眠の質、筋肉痛、ストレス、疲労感という4項目を、それぞれ7段階のリッカートスコアで主観的に評価するもので、合計4~28点となる。スコアが高いほど、心身の健康状態が不良であることを意味する。

その他のアンケート調査

食行動、トレーニング頻度、自覚的運動強度(rating of perceived exertion;RPE)、主観的な健康上の問題(subjective health complaints;SHC)などを把握した。

エネルギー量と複数の微量栄養素の不足が明らかに

解析対象64人で、全体の24人はディビジョン1であり、ナショナルチームの選手が含まれていた。その他、ディビジョン2は14人で、以下、5人、5人、10人、3人と続き、ディビジョン7は3人だった。全体の平均年齢は19.6±1.2歳で、BMIは同23.7±2.3だった。

エネルギー摂取量は30.1±10.7kcal/kgであり、アスリートへの推奨を下回っていた。また、微量栄養素では、カルシウム、鉄、ビタミンB1、B2、Dの摂取量が推奨を満たしていなかった。

夕食の摂取時刻の乱れ、栄養価の低い間食などが、主観的コンディション低下と関連

Hooper Indexは14.2±3.3、主観的な健康上の問題(SHC)は2.5±2.2だった。これらと栄養素摂取量との関連を偏相関分析(潜在的な交絡因子〈競技レベル、トレーニング状況、食事の調理者、栄養士の指導を受けているか否かなど〉を調整した解析)で検討した結果、多くの有意な負の相関が見いだされた。即ち、エネルギー摂取量、および、タンパク質、炭水化物、ビタミンDなどの摂取量が少ないほど、Hooper Indexが高く(主観的な心身のコンディションが不良)、SHCが多い(主観的な健康上の問題を多く抱えている)という関連があった。

次に、Hooper Indexを従属変数、栄養素摂取量およびアンケート調査で把握された食行動を独立変数とする重回帰分析を施行。その結果、以下の独立した関連因子が抽出された。

負の関連因子

Hooper Indexと独立した負の関連(主観的な心身のコンディションが良好であることと関連)のある因子として、タンパク質摂取量が多いこと(β=-0.630、p=0.001)、夕食の摂取時刻が一定していること(β=-0.340、p=0.001)、栄養価の高い間食を摂取していること(β=-0.224、p=0.047)が抽出された。

正の関連因子

Hooper Indexと独立した正の関連(主観的な心身のコンディションが不良であることと関連)のある因子として、栄養価の低い間食を摂取していること(β=0.297、p=0.003)が抽出された。

なお、エネルギー摂取量、および、食生活の良し悪しに対する主観的な評価は、独立した関連が示されなかった。

Hooper Indexに基づく食事指導の提案

著者らは本研究が横断研究のため因果関係の考察が制限されることなどを限界点として挙げたうえで、「アスリートの心身のコンディションは、個々の栄養素の過不足というよりも、食行動の全体的な質の影響を受けている可能性がある」と総括している。また、Hooper Indexは簡便に繰り返し評価できることから、「アスリートのコンディションのモニタリングに利用し、上昇(悪化)が認められた際には、トレーニング要因だけでなく、夕食の時間帯や間食の質などを把握し、指導に採り入れると良いのではないか」と提案している。

文献情報

原題のタイトルは、「Association Between Eating Behaviors and Subjective Well-Being in Japanese Male Collegiate Handball Players」。〔Nutrients. 2025 Sep 26;17(19):3072〕
原文はこちら(MDPI)

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